今週の一冊『アドバンスト・マラソン・トレーニング 第3版』
(本日のお話 2936字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、6kmのランニング。
また友人のご家族との食事会などでした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ本の中から一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。
今回ご紹介する本はこちらです。
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『アドバンスト・マラソントレーニング 第3版』
ピート・フィッツィンジャー、スコット・ダグラス(著)
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だいぶマニアックなようですが、「マラソントレーニングの真髄が詰まっている珠玉の一冊」であり、感動すら覚える一冊です。
おそらく、一般向けに誰もにとって必要な本というわけではないかもしれません。
しかしながら、本当にマラソントレーニングに向き合いたい人にとっては、ここまで走ることを科学されている本は、類を見ません。
「第三版」とあるように、多くのシリアスランナーがこの本を支持しているからこそ、何度も改訂され、出版が続いてきたのでは、と思える本です。
昨年の8月から、フルマラソンの自己ベスト更新を本気で目指してトレーニングを開始しました。
それから8ヶ月。ランニング中の失神、ケガ、急激な失速、色々な出来事がありました。そのすべてについて、「なぜこうなったのか?」という科学という知見を持って、疑問に答えてくれたのが、まさにこの本でした。
個人的な体験談も交えながら、本書の魅力をお伝えできればと思います。
それでは、どうぞ!
■本書の概要
本書は、「より賢く、ケガをせずにトレーニングしたい」「次のレースで、今までにないほど強く、速く、フィニッシュラインを駆け抜けたい」——
そんな向上心あふれるランナーのために書かれた、マラソントレーニングの決定版です。
週間走行距離別に5つのレベルに分けた、18週間・12週間のトレーニングプログラムが掲載されており、自分の走力とレース計画に合ったメニューを選べるのが最大の特徴です。
プログラムの内容は、エリウド・キプチョゲや川内優輝ら世界のトップランナーの実踐例も取り上げながら、科学的根拠に基づいて構成されています。
さらに、栄養摂取・水分補給・回復・テーパリング・レース当日の戦略・シニア向けトレーニングまで、フルマラソンに必要な知識がほぼすべて網羅されています。
「速くなること」だけでなく、「長く走り続けられること」を重視した一冊と言えます。
以下、本書の目次を引用いたします。
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【目次】
第1部 マラソントレーニングとは何か
第1章 マラソンに必要な条件とトレーニング
第2章 栄養摂取と水分補給
第3章 トレーニングと回復のバランス
第4章 補助的トレーニング
第5章 年齢(と分別)を重ねたランナーのトレーニング
第6章 ベストパフォーマンスのためのテーパリング
第7章 レース当日の戦略
第2部 マラソントレーニングプログラム
第8章 プログラムの実施
第9章 週間走行距離89kmまでのマラソントレーニング
第10章 週間走行距離89~113kmのマラソントレーニング
第11章 週間走行距離113~137kmのマラソントレーニング
第12章 週間走行距離137km以上のマラソントレーニング
第13章 マラソンの連戦について
※Amazon本のレビューより紹介
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■本書のポイント
目次を見ていただいて分かる通り、かなり本格的な著書です。
そもそも第9章から「週間走行距離89kmまで」から始まるわけですが、つまり「月間380kmまで」が一つのカテゴリになっているところに、玄人感がにじみ出ます。
そんな本書については、個人的に実践に活かせると感じたことをいくつかピックアップしてみたいと思います。
◯⑴ 心拍数ベースのトレーニング設計
本書では、練習メニューを最大心拍数に対する割合で細かく区分しています。
私の場合、最大心拍数を173bpmと想定し、次のように整理しています。
・回復走は131bpm以下
・有酸素走は124〜140bpm
・マラソンペース走は141〜152bpm
・乳酸閾値走(LT走)は141〜157bpm
・VO2MAX走は160〜164bpm
これを知るまでは「練習は追い込んでなんぼ」と思っていました。
しかし実際には、負荷の「微妙な差」を意識して管理することが、トレーニングの質を高める鍵でした。
LT走でも、8kmに抑えてアップ・ダウンを丁寧に行うだけで、翌日の疲労残りが明らかに変わる。
そういう発見が積み重なることで、練習の解像度が上がっていくのだと実感しています。
◯⑵ 栄養と鉄分管理の重要性
本書は栄養についても丁寧に解説しています。
たんぱく質は体重1kgあたり1.2〜1.7gが目安。体重60kgなら72〜102gを1日で摂ることが推奨されており、プロテインを過剰に摂る必要はないとも述べています。
(これまで過剰に取りすぎていたため、よくお腹を壊していた)
また、ランナーが見落としがちな「鉄分」についても詳しく言及されています。
足着地の衝撃によって赤血球が壊れる「溶血」が繰り返されるため、長距離ランナーは鉄分不足に陥りやすい。
私自身、ランニング中に失神するという経験をしましたが、まさにこの鉄分不足が原因でした。
本書を読んで「あのとき体の中でこういうことが起きていたのか⋯!」と、ようやく腑に落ちました。
◯⑶ 回復こそがトレーニングである
本書で繰り返し強調されているのが「回復」の重要性です。
ハードなポイント練習やレース後は、免疫が一時的に抑制される「オープンウィンドウ」の状態が3〜72時間続き、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
私もフルマラソン直後にポイント練習を入れてケガをした経験があります。
「まだ走れる」という感覚は往々にして体の声を上書きしてしまいます。
回復を軽視した代償は、後で必ず払うことになる——この本はそれを科学的に教えてくれます。
◯⑷ テーパリングとカーボローディングの科学
レースに向けて練習量を段階的に落としていく「テーパリング」は、2〜3週間かけて行うのが理想とされています。
具体的には、MAXの走行距離から、レース3週間前に距離を20〜30%減らし、2週間前に40%、レース週は60%削減するという流れです。
また、カーボローディングについては興味深い知識が記されています。
1gのグリコーゲンを蓄えるのに2.6gの水分が一緒に貯蔵されるため、直前に1kg前後の体重増加が起こる。
これを「増えすぎた」と焦るのではなく、エネルギー蓄積の証として受け止めることが大切です。
適切なカーボローディングにより、2000〜2500kcal分のエネルギーを蓄えてスタートラインに立てます。
■まとめと感想
振り返ると、私がこの8ヶ月で犯した失敗のほぼすべては、本書に答えが書かれていました。
しかし、読んだだけでは「頭でわかる」にと思います。
自分の体で実際に失敗し、「なぜこうなったのか?」という問いを持って初めて、本に書かれていることが血肉になる。
これは、マラソンに限った話ではないと思います。
仕事でも、人間関係でも、「経験してから学ぶ」と「学んでから経験する」では、同じ情報がまったく違う解像度で入ってきます。
おそらく、今日お伝えした心拍数や鉄分・テーパリングの話も、真剣に走っているランナーには「手触り感のある話」として響くはずです。
そしてそれこそが、レベルアップしているということの証なのだと、私は思います。
マラソンに本気で取り組んでいる方、これから自己ベストを目指したい方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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