メールマガジン バックナンバー

3141号 2022年9月27日

組織における「協力行動」を考える(後編) ーメンター制度を成功させるための2つの要因ー

(本日のお話 2548字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は大学院のコーチングに於ける
介入施策の実施でした。

想定していた内容と、
実際にやってみたリアクションの違いなどから
「なるほど、こう感じられるのか、、、」と
毎度のことながら私が学ばせられます。

短時間で、できる限り気づきが多いプログラムを
バージョンアップで練り上げていきたい、と思います。



さて、本日のお話です。

先日のメルマガでは、

”組織における「協力行動」”

というテーマでお届けいたしました。

内容としては

・組織における支援には
短期支援(効率化など)と、
長期支援(キャリアや成長など)があります

・そして長期の支援の中に、
「メンタリング」という行動があります

というお話でございました。

※詳細はこちら↓↓
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4304056/

本日はこの長期支援

「メンタリング」

を組織の中でどのように浸透させていくか、について
学びをお伝えできればと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは

【組織における「協力行動」を考える(後編) ーメンター制度を成功させるための2つの要因ー】

それでは、どうぞ。

■「メンター制度」なるものがあります。

新入社員や若手社員が入った時に、

仕事のこと、キャリアのこと、
あるいは仕事で関わる他の部門に繋いだりする、
先輩社員をつけて、サポートをしていく、

というような制度です。

私も若かりし頃、
メンタリングをされる側
(プロテジェ、といいます)にもなりましたし、

メンタリングをする側(メンター)
にもなりました。

■ちなみにそれは、

会社で割り当てられた形でしたので、

自分がやる側で受ける側でも
相手を選ぶことは基本できません。

もちろん相性は選んでくれていたと思いますが、
自分に似ていて距離が近く感じる人もいれば

一方、考え方がだいぶ違っていて
やはりうーん、難しい、、、と
思い悩む人もいました。

■ゆえに

「メンター制度を導入しました」

だけでは、なかなか機能しない
というのも現実問題としてあり、

それを機能するためには
機能する/しないをわける

”いくつかの「要因」”

を考慮しておくことが必要かと思われます。



そんな”メンタリングを促す要因”を始めとした内容について
論文にてまとめられておりましたので、

以下はその内容について、
ご共有させていただければと思います。

以下、まとめでございます。

(ここから)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【組織における「メンタリングのマネジメント」_まとめ】

<(1)メンター制度とは>

・制度に個人のメンタリング行動を落とし込むことによって、
行動を促そうという試みが「メンター制度」である。

・自発性に任せるとメンタリングを受けられる人と受けられない人が出てしまうため、
平等にメンタリングを受ける機会を提供することを意図して作られた。



<(2)非公式メンタリングと公式メンタリングの違い>

・非公式メンタリングは自主的に行われているものである。
公式メンタリングは組織のメンター制度から割り当てられたものになる。

・2つのメンタリングの違いを分析した結果、影響はわずかであるが
「非公式の関係の方が、よりキャリア的支援と心理・社会的支援を受けていること」が示されている。
(Sosik,Lee,&Bouzuillon,2005)

・そして、影響としても非公式メンタリングを受けている個人の方が
公式メンタリングを受けている側に比べて、給与が高いことが示されている。
(Chao et al,1992;Ragins &Cotton,1999)



<(3)公式メンタリングと非公式メンタリングに差が生まれる理由>

◯理由1)非公式メンターはプロテジェを自らの裁量で選択できるから
:非公式ではメンターがプロテジェを選べる。
すると、類似性がある人を選びやすく、「一体化(自分のことのように思うこと)」が起こりやすい。
よってポジティブな影響を与えていることが想定される。

◯理由2)公式メンターは非公式メンターに比べてメンタリングに対する意欲が低い可能性があるから
:非公式メンターは他者への成長、発達に関心が高い傾向。公式メンターは必ずしもそうとは限らない。

◯理由3)自己決定理論の視点があるため
・非公式メンターによる”自発的なメンタリング行動”は、
内発的モチベーションに動機づけられた行動であり、ポジティブな結果をもたらすことが示されている(Gegne&Deci,2005)



<(4)メンタリングを促す要因>

{状況的要因}

◯1)人事育成が評価されるような報酬システム
・人は報酬の獲得や罰の回避のために新しい行動を学習するという「強化理論」という考えがある。(Aryee et al,1996)
・メンタリングが人事評価に関連するとすれば、報酬の獲得等のため、外発的動機づけにより、メンタリング行動が起きやすくなる

◯2)仕事における相互依存性
・「チームメンバー個々が自分の職務を達成するために他のチームメンバーから情報、資源、支援を必要とする度合い」(Van Der Vegt, Van De Vliert, & Oosterhof, 2003,)
・仕事の相互依存性が高まると、責任感の知覚や親密度が増す。そのため、メンタリング行動が起きやすくなる、とした。(鈴木,2013)

◯3)役割曖昧性

・「仕事の情報が欠如している認識を表す概念」のこと(Rizoo,House&Lirtz-man,1970)
つまり、個人が期待されている成果、目標、職権、責任、義務などが曖昧であること。
・そして「役割曖昧性が低い」ほうがメンタリング行動が促されることがわかった。
※理由は、自分の役割曖昧性が高い場合、他の人も何をやっているからわからないと認識する傾向になり、よって支援できないと考える、と考えられている

{個人的要因}

◯1)利他主義(向社会特性)
・自己の利益よりも他者の利益を優先する人はメンターになる意欲を持ちやすい(Aryee,1996)

◯2,情緒的コミットメント
・組織に愛着を抱いている個人は,組織市民行動を 始め役割外行動をとる傾向があることから,メンタリング行動に影響を与えると考えられた(鈴木・麓.2009)

※参考:麓仁美(2019)“組織における協力行動のマネジメント:
仕事の設計がメンタリング行動と向社会的モチベーションに与える影響.”
組織科学 53 (2): 43–56.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■さて、以上、論文のまとめを記してみました。

興味深いと思ったのが、

「皆に平等にメンター制度を行いたくとも
それはそれでデメリットもある」

ということ。

非公式メンター、公式メンターのそれぞれで
どのような違いがあるのかを分析すると、

なんでも制度でまとめることのリスクも
見えてくるようです。

おそらく、この構造は
上司部下の1on1なども「支援行動」という文脈では同じであり
同様の影響があるのではなかろうか、

と思います。

■そうすると、

・状況的な要因
・個人的な要因

それぞれ組織や組織のメンバーによって
影響を与えられるところ、
与えられないところがもちろんありますが、

例えば、

公式のメンター制度を入れるのではなく、
「人事制度上で評価の対象にする」として
非公式のメンタリングを促してみたり

あるいは
公式のメンター制度を設けるに当たっても、
メンター/プロテジェの相性を考慮して
組み合わせを選べるようにしたり

という工夫はできるようにも思います。

■と、いうことで、

「メンタリング行動を促進させる要因」

について本日はお伝えさせていただきました。

こうしてわけてみると、
自社内での展開に障害となっていることなど
分析しやすくなる気もします。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

==========================
<本日の名言>

善に協力するのは義務である。
と同時に、悪への協力を拒否するのも義務なのである。

マハトマ・ガンディー

==========================

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す