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177キロマラソン体験記 ~ 超ウルトラマラソンを走ると、どんな感情が生まれるのか? 中編〜

1974号 2019年7月17日

(本日のお話 2443字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

今日も昨晩に引き続き、
超ウルトラ177キロマラソンに参加した体験談について、
皆様に感想と気づきをご共有させていただきたいと思います。

昨日は途中で力尽きてしまいましたので、
中盤戦(100キロ地点:7月15日深夜1時頃から)の、
体験共有でございます。

タイトルは、

【超ウルトラマラソンを走ると、どんな感情が生まれるのか? 〜177キロマラソン体験記 中編〜】

それでは、どうぞ。

■7月15日(月)深夜1時。
漆黒の闇の中で走っていると、
突然、ヘッドライドが切れました。

当たり一面真っ暗です。

そして真横には深く生い茂る森があります。
もし元気な時に来たら、すぐにでも立ち去りたいほど、
なにか出そうな雰囲気が漂っています。

しかし、そんなことはどうでもよい。
早く、終わらせたい。
早く、休みたい。

その事ばかりが頭に浮かびます。

手探りで調整すると、
接触不良になっていたようで、なんとか復活をし、
走るのを再開します。

そして、なんとか「総合文化センターパルナス」に到着。
走る中で感覚が麻痺したのか、寒気はなくなっていました。

しかし、咳と痰が喉に絡みます。
ですが、もはやそんなことすらどうでもよい。

この時、7月15日(月)深夜3時。
あと1時間で夜明けです。

■私が想像していなかった、
150キロ以上の、夜を越えて走る超ウルトラマラソンの恐ろしさは、
「走る」以外の、また違う要素が絡んでいました。

疲れている。かと言って、
しっかり睡眠をとったりしたら、タイムアウト。

走るのをやめても、ゴールに辿り着かず、アウト。

食事補給を失敗して、
胃袋がやられて食べられなくなっても、
エネルギー不足でアウト。

なんとか、栄養を補給しておこうと
スタッフさんが出してくれるチキンラーメンを食べて、
床にひかれているビニールシートに目をやります。

軽く、休んでおこう。
そう思って身体を横たわらせると、
吸い込まれるように眠りに入ります。

しかし、熟睡などできるはずもありません。
熟睡しても、どっちみち走らないといけないし、
誰かが助けてくれるわけでもない。

胸に携帯を抱えて、
タイマーを30分にセットして目を閉じます。

あっという間に30分。
もう少し寝たい、、、。

横にいるほかのランナーもきっとそう思っているはず。

ポツポツとしかばねのように起きはじめて、
外が明るみだした頃、それぞれのペースでトボトボと会場を後にします。
笑顔はありません。ただ、疲労だけが見えます。

■起きてすぐ、走ることはできません。
足が固まっているからです。

30分や1時間寝ても、足は回復しないのです。
だから皆、歩いている。

ここからは、263キロの部の人たちと合流です。

この”長い方”に出た方は、もうすでに45時間近く、
ほぼ不眠不休で走っています。
その「先輩」が私を抜き去っていきました。

おそらく多くの人にとっては、
177キロも263キロもよくわからない世界かと思いますが、
この時、私は心から尊敬しました。

ありえない、、、
この状態を追加で14時間経てきて、
なぜ走れるのか、、、不思議でなりませんでした。

現在118キロ。
あと60キロです。

■心とは裏腹に、明け方の太陽が近くの湖を照らし、
美しく荘厳な景色が広がっています。

暗闇が終わったのは喜ばしかったのですが、
本当に辛いのはここからでした。

7/15(月)朝4時。

空が明るくなりはじめても、
変わらないものがあります。

それが、人間の本能の

『睡眠』欲求。

寝ることを奪われた動物は、
何もできなくなります。

走り続けよう、その気力を根こそぎ奪われるのです。

食べないと体がもたない。
しかし、先食べたチキンラーメンを消化しようと、
少しでも血液が胃に集まると、途端に暴力的なほどの眠気が襲います。

道をふらふらと走りながら、
右へ左へとよろめきます。
それが、ずーっとつづくのです。

「太陽が出たら、体内時計がリセットされるよ」

そんな話をどこかで聞いたことがあり、
期待しながら太陽を見つめましたが、
リセットの気配は、まるでありません。

ただただ、眠い。

気づいたら一人走りながら、

「眠い眠い眠い眠い!」
「あーー!」
「うう―!」
「なんでだよ!」(意味がわからない)

などと声を出して呻きながら走っていました。

レースが終了した後、友人と話をしていると、
友人も、他のランナーも全く同じようにうめいたり、
叫んだりしていたそう。

でも、気持ちがわかるから、
他のランナーもそっとしているのです。

■肉体的に迫ってくる「睡魔」は
意志の力ではどうしようもできないほど、強烈なものです。

ブロック塀の影で、体育ずわりをして、
5分だけ、、、と目を閉じます。

そうすると、不思議なことに、
少しだけ回復します。

そしてまた2キロほど走ると、
強烈な睡魔が襲ってくる。
そうして、ひたすら耐えながら走るのでした。

ここからしばらくは、
「眠い」意外の記憶がありません。

次の記憶は、7月15日(月)昼12:00時頃。

146キロ地点。
あと30キロほどまでやってきたとき。

空が明るいと、いくぶんか気持ちも和らぎます。
他のランナーとコンビニで偶然会い、
プリンを食べながら話します。

「あと30キロですね。
ただ、猛烈に眠いですね。
ここまでツライとは思いませんでした」

すると、ランナーの方はこう返します。

「幻覚は、見ましたか?」

、、、一瞬「?」がよぎります。

「いや、このレースに出ていると、
脳が疲れすぎて幻覚を見ることあるんですよ。

私は夜中、花火が上がったのを見ました。
あと、太ももに耳なし芳一みたいに呪文が書かれているのが見えました」

とのこと。

「、、、そうでしたか」

としかいえず走っていると、
確かに私の身にも妙な現象が起こりました。

止まっている白い乗用車が、
急に横に移動したように見えました。

そして、この話は一緒に走った仲間にも聞くと、
同じように「幻覚のようなもの」が見えた、と言っていました。

7月15日(月)昼12:00時。
146キロ地点。
ゴールまで、あと30キロ。

(続く)

長くなりましたので明日に続けます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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<本日の名言>

健康で、借金がなくて、しっかりした意識があるという幸福以外に
いったい何が必要だというのだ。

アダム・スミス(スコットランドの経済学者/1723~1790)
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