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3407号 2023年6月22日

「組織における強みの活用」の、8つの重要テーマはこれだ

(本日のお話 3072字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

しばらく論文から離れておりましたが
最近改めて「強みの活用」に関するものを
読み進めております。

時間はそれなりにかかりますが、
やはり論理的に書かれている内容は、
とても説得力があり、勉強になりますね、、!

ということで、今日は
ある論文をご紹介したいと思います。

論文タイトルは

『組織における強みの活用:
職業上の健康のためのポジティブ・アプローチ』

Bakker, A. B., and M. van Woerkom.(2018).
“Strengths Use in Organizations: A Positive Approach of Occupational Health.”
Canadian Psychology/psychologie.

でございます。

こちらを題材に、皆様に
学びの共有をさせていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「組織における強みの活用」の、8つの重要テーマはこれだ】

それでは、どうぞ。

■「強みの活用」について、

個人的に
興味を持たれている人は
少なくないかと思います。

ちなみに強みの活用とは、
正式名称(?)では

「強みを活かす実践」
(Strength Based Program/SBP)

と呼ばれていますが、

先行研究によると、
「SBP」により

・社会的スキル
・ストレス耐性
・精神・身体的健康
・生活の質
・教育 などなど

様々な結果に好ましい影響を与えることが
示されてるとのこと。

うん、実に素晴らしいことですね。

「強みの活用」を通じて
得られることも多そうですし、
ますます推進していきたいところ。

■、、、といいつつも
もちろん課題もあります。

その一つが

『”組織の文脈”における強みの活用』は、
まだよくわからん問題

です。

組織は人が集まっています。

そこには、
個人とは違う難しさもあります。

・違う強みを持った人同士が
いかに相互に理解し合うか

・お互いの強みをどのように補完し合うか

などの
チームワーキングとしての
テーマもあります。

あるいは、

組織から任された仕事、
自分がアサインされた仕事の文脈が
自分の強みと合わない、、、

という事象も存在します。

やりたいことだけやれるわけではないのが
組織の常ではあります。

そうしたときに

・自分の強みと、求められている強みに
どのように折り合いとをつけるのか

なども難しさの一端です。

■たしかに私も、
ストレングス・ファインダーなどの研修をやっていて

例えば「戦略的思考力」が
全般的に低い(興味がない)マネージャーから

「課のビジョンや戦略を描く事を求められているが
全く興味が湧かないんですけど、どうすればよいか?」

というような相談を頂くことは
結構多いな、、と思います。

そして、

一般的な回答をするものの、
(=他の強みを活用する、他者の力を借りる、
ツールなどを活用するなど)

少しもやっとする感は
否めないというのが現状でした。

■、、、というように、

組織の文脈では
まだまだ探求すべきところが
たくさんあるようです。

そんな中、
今回ご紹介する論文では、これらの

「組織における文脈における
強み活用の理論と研究をレビューする」

ことを行っております。

そしてその中で、

「これからの強み活用において
研究を深めるべき8つのテーマ」

を定義しているところが、

現在の立ち位置と、
これからやるべきことを明確にする上で
役に立つなあ、と感じたのでした。

■、、、、ということで、
早速以下にまとめてみたいと思います。

ちょっとマニアックな内容ですので
私の解釈もいれつつ、
簡単な言い方にしてみました。

(違っていたらゴメンナサイ)

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<強みの活用に関する8つの重要な研究テーマ ~組織の文脈において~>

(1)「強みの定義」を終えましょう

・強みの定義について意見が分かれているため、合意を取ることが必要。
・強みの活用とその結果の関連性を説明する理論的な枠組みが不足している。
・「強み活用支援」が新たな職務資源として、社員の幸福度を向上させる可能性があるが、まだ道半ばである。

(2)「強みの活用は成果に因果があるのか」問題

・強みの活用と成果の間には相関関係はあるものの、因果関係が不明確である。
・エビデンスに基づく強みの活用を推進するための研究が遅れている

(3)「強みの使い方が分かりづらい」問題
(=弱みになることもあるよね)

・強みの「使い過ぎ」または「不適切に使われた」際に、弱みに転化することへの対処はどうすればいいのか。
・自分の強みがわかっても、職場で求められたことに役立たないと無気力になる。
(例:「好奇心」が高くても、それを職場で使いようがないと途方にくれる)

(4)「(高齢者や障害を持つ従業員など)多様な個人の強み」をもっと活かしましょう

・例えば、高齢者は将来の時間的展望が限られているため、
本物である(自分らしい)と感じたり、感情的に意味のある目標を優先する。
その際に、「強みの活用」がそれらに役立つと思われる。
・また障害を持つ人の、ユニークな資質に注目することで障害者のステレオタイプ化を打ち消す手段になり得る。

(5)「強みをチームレベルでどう活用するか」問題

・特に組織においては、自分の強みは単独で活用する人はほとんどいない。
個人の強みが他の人に気づかれ、利用され、評価されるかどうかは、チームの状況に影響される。
・トランザクティブ・メモリーシステムによる研究(グループ内で誰が何を知っているかの共有認識)
などを展開して、チームの相互理解を成果に繋げる研究なども必要。

(6)「強みを活用✕リーダーシップ論」への展開、もっとできそう

・変革型リーダーシップ理論では、「個人の配慮」が必要であるという。
・リーダーはフォロワーに対して、”自分の強みを使うように刺激し、仕事に活用する”
ことを促すと、個人の職務資源が拡張し、エンゲージメントにプラスの影響がある可能性がある。
ここも探求していきたい。

(7)「強みは不足を対処するために使えるのか」問題

・たとえば、「ユーモア」という強みがある。
これは「仕事のストレス」という不足点を対処することや、
創造性の欠如を補うことができる可能性がある。
・このような使われ方にはどのような幅があるのか、具体的に探求したいところ。

(8)「強みの発動する条件を調べること」が大事

・「リーダーシップ、優しさ」のような外向性を持つ性格特性は
職務遂行能力に正の影響があるとされている。
・しかし、厳しい現実の状況に対応するのは、
「人前で話す」「会話を始める」など具体的な行動にかかっている。
・とすると、この強みを発揮するため予測因子はなにかも探求したい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

■なるほど、、、。

こう見てみると、私(紀藤)も
ストレングス・ファインダーの研修を実施していて

「よく参加者の方から
質問を頂く内容ばかりだなあ」

と妙に納得をしてしまいました。

同時に、これらのことは、
そんなに昔ではない
2018年の論文が書かれたときです。

とすると、今なお
研究レベルでは道半ばであることがわかります。

■「強みの活用」といっても、

シャバ(現場)では、

「仕事の役に立つ」

ことが求められます。

役に立てばよし!と
言うことかと思いますが、

こうしたまだ未完の8つのテーマが
もし更に探求され、
再現性のある形で明確になると、

”「組織における強みの活用」は
もっともっと市民権を得ることができる”

とも読みながら思いました。

私も「強みの活用」を促し、
関わっているものの一員として、
こうした研究も探求してみたいな、

そんなことも思った次第です。

わからないこともたくさなりますが
工夫をしながら、実践に活かしていきたいものですね。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

好きなことにだけ、のめり込みすぎないように。
そうすると、他の分野への冒険ができなくなってしまう。
自分の好きなもの以外、見えないようにすることは愚かなことだ。

ウォルト・ディズニー
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