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3442号 2023年7月27日

「人材開発の武器」は、まずはこの理論を抑えよう! ~『人材開発・組織開発コンサルティング』 第三章 人材開発の理論と実践を読んで~

(本日のお話 4624字/読了時間6分)

■おはようございます。紀藤です。

先日より引き続き、宮崎に祖父のお見舞い、
そしてワーケーションに来ております。



さて、本日のお話です。

今日も引き続き、
人材開発・組織開発の「日本初の教科書」である、

『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』
(中原淳/著)


を題材に、まとめと感想を
記述していきたいと思います。

本日は”第3章 人材開発の理論と実践”です。
それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「人材開発の武器」は、まずはこの理論を抑えよう!

~『人材開発・組織開発コンサルティング』
第3章 人材開発の理論と実践~】

それでは、どうぞ。

■冒頭から、
私(紀藤)の思い出話で恐縮です。

3年前の10月。

立教大学大学院 経営学研究科リーダーシップ開発コース(LDC)を
目指そう!と決めた頃。

受験に必要な書籍(16冊もある!)を読むために
一人では勉強できないから・・・と、

人を巻き込んで
勉強会を開催させていただいたことがありました。

(読んだ内容を私が一方的に話す、という
今思えば、実に乱暴な会でしたが・・・(汗)
参加いただいた皆様には、今なお感謝です!)

■その勉強会の中で、

不思議なご縁が繋がるもので
現役のLDCに通っている大学院生が、
ゲストとしてお話をいただける機会があったのでした。

私の洗練されていない
マシンガントークに比べ、

それはそれは大変わかりやすく
まとまった理論の解説が繰り広げられ、

聴衆の皆様が5割増しで
惹きつけられていました。

そのお話頂いた内容が

『組織社会化』
(=組織に人が新規に参入するプロセスのこと)

というものでしたが

その話を聞いた後、
参加者からこんな感想があったのを
今でも覚えています。

「人が入社して、
組織に馴染むまでのプロセスが
こんなにも理論として研究されているなんて
知らなかった・・・!」

と。

そして、その驚きは、

「組織社会化」以外にも
「職場学習」「OJT」「研修転移」などを始め、
実に膨大な事があると、その後の大学院で知ります。

普段から
人材開発として語っていることには、
多くの研究や理論がある。

そのことを、私は
ただ知らなかっただけなのです。

■「そんな世界、
研究・理論があるなんて
まったく知らなかった・・・!」

これまで知らなかったことに
悔しさすら感じてしまうほどに、

広大な科学知の世界に触れ、
興奮と驚きを感じていたのでした。

■さて、そんな前置きを踏まえて、

今日ご紹介させていただく

「第3章 人材開発の理論と実践」

のお話です。

この章では

これらの人材開発にまつわる主要な理論を
その概要と全体像がわかるような形で
簡潔にまとめられています。

「人材開発の現在地の地図」を
大まかに示していただくようなお話です。

、、、ということで、
以下、本章のまとめを記載してみたいと思います。

かなり色々な概念がありますので、
割愛しながらのまとめとなります

(詳しくはぜひ、本書をお読み下さいませ!)

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【第3章 人材開発の理論と実践】

<1,人材開発とは何か>

- 1)人材開発の定義と位置づけ
- 人材開発とは、単なる学習を促すことではない。人材開発にとって、学習はあくまでも「手段」であって「目的」ではない。目的は、組織や現場にインパクトを与えることである。
- 「学び」と「インパクト」を考えた時に、大事なことは「人が学び、変われた✕経営・現場にインパクトがあった」これのみである。
学んでもインパクトがなければ人材開発とは呼べない。(そうでなければ、「学び温泉」「ワークショップ温泉」と揶揄されてしまう)

- 2)日本企業における人材開発
- 日本企業においては、人材開発はとりわけ重要な意味を持つ。なぜならば日本企業は『内部労働市場』を発達させた人事管理を維持させてきているから。
- 内部労働市場とは、人材を組織の内部に囲い、社内のジョブローテーション・異動で経験を積ませ、必要な人材を「内部から調達」し、「人材を長期にわたって育成する」ことが特徴である。
その場合、企業が事業や戦略を変えた場合、社内の別の人に「学び直し、変わってもらう」必要が生まれる。
- 一方、外部労働市場は、外部に労働市場があるとするため、企業が事業や戦略を変えた時、「組織がリストラをし、人の入れ替えを行う」を行う。
こうしたことからも、日本は『内部労働市場型』であることがわかり、人に変わってもらう必要があるため、人材開発が重要である、といえる。



<2,人材開発の基礎概念>
人材開発・組織開発の実践を行うには、人間が学ぶこと、変化することにまつわる多種多様な理論や概念を、なるべく多く持っている事が重要である。

- 1)組織社会化
- 「組織に人が新規参入するプロセス」を説明する概念。
「組織に新しく加わったメンバーに対して、必要な知識や信念や態度などを獲得できるようにし、その組織の一員にすること・一人前にすること」である。
- 関連する概念:予期的社会化、社会化エージェント、能動的社会化、プロアクティブ行動

- 2)組織再社会化
- 組織社会化の下位カテゴリーであり、別の組織に入っており、中途入社で入ってくる人に対して「前職の組織の色を抜いて、新たな組織の色に染め直す」ような組織社会化のこと
- 関連する概念:フィードバックシーキング、アンラーニング

- 3)経験学習
- 人材開発の中で最も基礎的かつ普及している理論の一つであり、「経験を積み重ね、そこで起こった出来事を内省することを通じて、自分の能力・スキルを高めることができる」とするもの。
- 具体的経験(経験する)→内省的観察(振り返る)→抽象的概念化(マイノウハウづくり)→能動的実験(やってみる・試してみる)の4つのプロセスで示される。

- 4)職場学習
- 職場学習とは「人の学習は、職場における経験と意図的な内省、それらを支える人々との関わりにある」と考える一連の理論のこと。
人は社会的なもので、個人だけでは学べない。他者に支えられたり、公式以外の非公式の機会で学んでいくものである。
- 主に「業務支援」「内省支援」「精神支援」などがある。

- 5)越境学習
- 組織内に馴染むと、自動的に仕事が行えるようになるが、同時に「過剰適応」や「能動的惰性」などを獲得してしまう。
そこで、「組織の外」にいき慣れ親しんだ場を離れ、「組織の内と外を往還することで、組織の外で学んだ内容を組織内の業務に還元する」ことが越境学習である。

- 6)研修転移
- 研修は「仕事の現場を離れて、仕事にまつわる内容を学ぶこと」である。研修転移は「研修で学んだ内容が現場で実践され、成果を上げること」である。
- そのための研修を効果的・効率的・魅力的に設計するための理論が「教授設計理論」などがある。

- 7)オンライン学習
- オンライン学習は「対面学習と同等か、それよりも学習効果は高い」とされているのが研究者の間の緩やかな合意とされている。決して、オンライン学習は対面学習の劣化版ではない。
- 今後、オンライン研修や、オンラインと対面の融合(ハイフレックス型)は更に進むだろう。

- 8)リーダーシップ開発
- リーダーシップ開発研究は「リーダーシップを発揮する人材をいかに育てるか」に注力をする
- 最も実践されているものが「経験学習型リーダーシップ(人をリードする経験✕その経験の振り返り)」である。
具体的には、異種混合で個人を集め、タフな課題をチームに迫り、チームで成果を創出させる、という経験を行う。
そしてそれをフィードバックや、そのプロセスをメタ(俯瞰して)振り返りすることで経験学習と積む、という形である。



<3,企業における代表的な人材開発の実践>

- 1)キャリアステージに応じて行われる人材開発
- 1,新人研修
- 新たな組織に加わった「まっさらな新人」が組織の目標を達成するために必要な知識、マナー、価値観などを獲得し、組織の人になることを支援するために行われる。
- 2,内定者教育
- 入社後すぐに戦力化できるよう、入社前から必要な知識やマインドセットの獲得を目指し、組織社会化の時期を早めることで内定辞退を防止し、人材を引き止める。
- 3,管理職教育
- 課長/部長といったリーダー層を対象とする研修。メンバーの多様化や仕事の複雑化でマネジメントはますます難しくなっている。
1on1研修、フィードバック研修、コーチングなどが2000年代からは増えている。本来なら管理職になる前にこれらの研修は行ったほうがよいとされる。
- 4,リーダーシップ開発教育
- 部長層や本部長層を対象に、経営幹部育成を目的として実施されることも多い。先述の経験学習型リーダーシップ開発の考えを取り入れた「アクションラーニング型研修」などがある。
リーダーシップを開発する最大の機会は「タフな仕事のアサイン」である。
- 5,オンボーディング施策
- オンボーディングとは、オンボード(乗り物にのる)ように「ビジネスパーソンが現場で実践できる、新規参入者の”迎え入れ”と”定着”のための施策」のこと。
Klein&Polin(2012)によってオンボーディングのガイドラインが設けられている。

- 2)OJT:管理職によって現場で行われる人材開発
- OJTはかつてブラックボックスだった。OJTの意味もそれぞれ違い、営業同行すること、ダメ出しすること、など、それが何を指しているかは異なっていた。
- しかし、経験学習や職場学習などの概念により、人の能力がどのように形成されるのかが可視化されるようになり、「1on1ミーティング」などの施策が展開されるようになってきたとも言える。

- 3)社会課題・経営課題解決のための人材開発
- ビジネス環境、社会情勢の変化に応じて政府や社会から「要請」されるものがある。たとえば、「女性活躍推進」や「働き方改革」などである。
- 近年では「人的資本経営」などのコンセプトも打ち出されている。人材開発の仕事も、ますます複雑化し、高度化しているといえる。

※参考・引用:
『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』(中原淳/著)
P77~P133
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■文章量が多く、失礼しました。

ただ、こちら上記のまとめは
文字が凝縮されていますが

本書を読みすすめると、いやはや、
なんとわかりやすいことか

私が上記の概念について
一通り大学院でも学んでいたことあるかもしれませんが、

広範な内容のポイントが整理されており、
まとめをしながら私自身、

「近年の人材開発の全体像」

を見直すような感覚になっておりました。
(はい、今日も独り言です)

■ちなみに、

海外では、人事(HR)の領域が
より高度化・専門家されていると聞きます。

記で記載されたような理論も、
より大学・大学院などの教育機関で学べるし、
それらの知識を持った専門人材が、
人事の仕事に従事している、

なんて話も耳にしたことがあります。

こうした人材開発に関する研究の多くが
米国で行われているから、

これらの理論が
人口に膾炙しているのかも知れません。

■しかし、本書で示されるように

日本は「内部労働市場」として、
組織にいながら「学び直すこと、変わること」が求められ、
かつ、生産性にもインパクトを与えるものです。

、、、であるならば、
もっと上記のような
「人材開発・組織開発」に関する知識が
多くの人の共通言語となるほうが望ましいと思えます。

これらの知識が、もっと多くの人
(人事だけでなく、現場のマネジャーなど)に伝わることで

より説得力がある現場の巻き込みもできるし、
本書で言われる「KKD(勘・経験・度胸」に頼らない、
複製可能で、再現性がある教育施策が
もっと皆のものになっていくと思えます。

■本章で書かれている

「第3章 人材開発の理論と実践」

は人材開発に関わる人が
人が学ぶことを通じて、
経営・現場にインパクトを与えるための
”入り口”を示しています。

そこからより深く知りたい方は
巻末の推薦図書から深めることも可能です。

ということで改めて、
贅沢すぎる著書だな、、、と感じました。

大学院で学んだ内容が、この本を読めば、
ある程度学べてしまうのですから・・・。

とうことで、まだ購入されていない方はぜひ!
大変おすすめでございます。

明日は、

「第4章 組織開発の理論と実践」

に続けたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>

偉大な発見や改革には、
常に多くの人の知性による協力が不可欠である

グラハム・ベル
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