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3548号 2023年11月11日

説得力がすごい…!「強みに基づくジョブ・クラフティング」が従業員の創造性に与える影響についての研究論文

(本日のお話 2154字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日金曜日は1件のアポイント。
その他、研修企画・作成など。



さて、本日のお話です。

今日も「強み」に関する論文のご紹介です。
テーマは「強みとジョブ・クラフティング」です。

この論文は、

”「従業員の創造性」に対して
 「強みを活かしたジョブ・クラフティング」が
 どのような影響を与えるのか?”

を定量調査で研究した論文です。

「強みって、おいしいの?」
(=仕事でどう役立つの?)

と疑問に思われる方も少なくないであろう中、
この論文は定量調査に基づいており、

かつ「創造性」という一つの成果に対する影響を見ており
説得力ある結果は、大変興味深いものです。

ということで、早速まいりましょう!

タイトルは、



【説得力がすごい…!「強みに基づくジョブ・クラフティング」が従業員の創造性に与える影響についての研究論文】



それでは、どうぞ。



■さて、本日のご紹介する論文は


『強みに基づくジョブ・クラフティングと従業員の創造性:
 職務自己効力感と職場の地位の役割』
(Yang et al, 2021)

原題: "Strength-based Job Crafting and Employee Creativity: The Roles of Job Self-Efficacy and Workplace Status"


というものです。

中国における論文となりますが、
定量調査をされており、わかりやすい構成に
大変説得力を感じさせられた内容でした。

以下、論文のポイントをまとめてみます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【論文まとめ『強みに基づくジョブ・クラフティングと従業員の創造性:職務自己効力感と職場の地位の役割』

<はじめに>

・現代の働き方では、「創造性」がますます重要になっている。
 その中で「従業員の創造性」は、組織が競争力を維持するために不可欠とされる。

・その「創造性」を生み出す要因の一つが「ジョブ・クラフティング」である。
 ジョブ・クラフティングには、主に3つの次元がある:
 - タスク・クラフティング: 職務内容の変更や調整。
 - 関係・クラフティング: 職場の人間関係の変更や調整。
 - 認知・クラフティング: 職務に対する認識や考え方の変更。
 
・さらに、ジョブ・クラフティングでは、「役割」と「資源」への適応が
 重要な要素とされており、「役割」(上記の3つの次元)へ適応するに当たって
 「自身の強み」を活かして、これらの要素を最適化すると、
 職務の充実感や満足度を高めることができるとする。
 
・その理由は「個人の強み」を組み込むことにより、
 自己効力感に影響があるとされるからである。
 

<仮説>
仮説1:「強みに基づくジョブ・クラフティング」は、「従業員の創造性」と正の相関がある

仮説2:「職務自己効力感」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」と「従業員の創造性」の関係を媒介する

仮説3:「職場の地位」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」が「職務自己効力感」に与える影響を正に緩和する。また職場の地位が低いよりも高いほうが、自己効力感に対して強い正の効果を持つ

仮説4:「職場の地位」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」と「従業員の創造性」の間の「職務自己効力感」を介した間接的な関係を、正に緩和し、職場の地位が低いよりも高いほうが影響が強い


<調査の方法と尺度>

◯参加者:
・中国の技術会社95社から105名のミドル・ジュニアマネージャーを参加者とした。
 また調査対象は、参加者本人と、その部下である。
 
◯調査尺度:
・「強みに基づいたジョブ・クラフティング」(9項目)(koojiら2017)
・「職務自己効力感」(4項目)(Wilk and Moynihan,2005)
・「従業員の創造性」(7項目)(Gong,2009)
・「職場の状況(職場の地位)」(5項目)(Djurdjevicら, 2017)
・「コントロール変数」(性別、年齢、学歴、勤続年数)

◯調査の進め方
・参加者105名に、彼/彼女らの部下5名を選んでもらった。
・上記の調査項目に関するアンケート用紙を配り、参加者である上司・部下それぞれに記入をしてもらった。
・そして、上司の部下に対する評価と、部下の自己評価をそれぞれ収集し、手作業で突き合わせて、それぞれの評価を比較した。


<研究の結果とまとめ>

◯研究結果
・仮説1~4まで、全て支持された。


◯まとめ
本論文のポイントは以下の3つです。

1,「強みに基づくジョブ・クラフティング」が、「従業員の創造性」の先行変数となっていることに注目したこと
2,「強みに基づくジョブ・クラフティング」と、「従業員の創造性」の間の「自己効力感」のプロセスを明らかにしたこと。
3,「強みに基づくジョブ・クラフティング」が、「従業員の創造性」に及ぼす効果を伝達する影響メカニズムを明らかにしたこと。(自己効力感や職場の地位など)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)


■とのことでした。


上記の内容が明らかになることで、

「強みに基づくジョブ・クラフティング」、
すなわち強みを活用して仕事を再設計する時に、
自己効力感や職場の地位の影響を考慮して関わることができるようになるのでは、

と論文でもまとめていますが、
たしかにな、と納得いたしました。


また、本論文の中で「
強みに基づくジョブ・クラフティングの尺度」(Kooji, 2017)が紹介されていましたが、
「なるほど、そういう尺度の作り方もあるのか…!」と個人的に勉強になりました。

実際に、日本の文脈で
ぜひ調査をしてみたいな、、、と思います。

これまではワークエンゲージメント、自尊心などの成果への影響が多かったのですが、
「従業員の創造性」への影響という観点もあるのだ!と発見になった論文でございました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

「好奇心を挑発するような問題と出会い、 創意工夫にあふれる状態となり、自力で解こうとする過程で、 発見をもたらす精神の緊張を経験し、成功の喜びを味わう」

─感受性に富む年頃にこのような感情を経験すると、それは知的な仕事を愛する気持ちを呼び覚まし、一生の間、そのしるしを精神と性格にとどめることだろう。

ジョージ・ポリア
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