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4079号 2025年4月26日

「強みの介入」のレビュー論文 ー8つの研究からわかったことー

(本日のお話 2775字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は3件のアポイント。
また夜は、大学の授業について学生アシスタントとの打ち合わせでした。



さて、本日のお話です。
本日は強みについての論文をご紹介いたします。

この論文は、約10年前の2012年の論文です。それから研究は進んでおり、新たなこともわかってきています。

とはいえ、当時の「強みの介入」について、どのような種類があり、どのような結果になっているのかをまとめたもので、「強みの介入の基本」が示されていると感じました。やはり効果的なものは、以前から変わらないということなのでしょう…!

ということで、早速中身を見ていきたいと思います。それではどうぞ!

■今回の論文
タイトル:Character Strengths Interventions: Building on What We Know for Improved Outcomes(キャラクター・ストレングス介入:既知の知見を基に成果を向上させるための構築)
著者:First Author: Denise Quinlan/Last Author: Dianne A. Vella-Brodrick
ジャーナル:Journal of Happiness Studies
所属:Department of Psychological Medicine, Dunedin School of Medicine, Otago University, Dunedin, New Zealand

■30秒でわかる論文のポイント

本論文は、性格の強み(Character Strengths)を活用した介入研究について、効果や限界を整理したレビュー論文です。

強みに関する8件の研究を精査し、強みの使用促進や心理的ニーズの充足がウェルビーイング向上に寄与する可能性が示されました。

今後は、介入環境やファシリテーターの態度など文脈要因にも注目すべきであると提案されています。

■研究の概要

さて、では具体的にどのような研究を行ったのでしょうか?

まず、本論文は2012年に発表されましたが、2000年に入ってから、教育、社会福祉、青少年育成領域でストレングス・アプローチへの関心が急速に高まりました。

これまで使用されてきた分類(例:VIA、StrengthsFinder)ごとの違いも踏まえながら、強みを活用した介入の効果とメカニズムを整理することを目的とした研究です。

■方法

そして、研究の進め方ですが、平たく言えば、以下の2点に該当する論文を、ピックアップしたレビュー論文となります。

1,ウェルビーイングを高めるため強みの分類等を明示的に伝えている論文
2,介入前後の測定と比較群を用いている論文

より専門的には、以下のような方法を用いました。

・デザイン:レビュー研究
・対象研究:強み分類を用いたウェルビーイング向上介入(事前・事後測定、比較群あり、効果サイズ提示)
・データ収集:EBSCOhost, Web of Science, PsycINFO
・使用キーワード:strengths, intervention, character strengths, well-being 等

その結果、「8つの論文が該当した」ことがわかったのです。

■「強み介入研究」のまとめ

そして、介入前後の比較を行い、効果サイズや比較データが示されているものが紹介されていました。例えば、このような研究内容と結果です。

――――
Seligman et al. (2005):
・介入戦略:「自分の強みを新しい方法で活かす」
・介入対象:一般成人 577名
・介入期間:1週間
・介入結果:「1週間、強みを新しい方法で活かした人」は、幸福感において6ヶ月間有意な改善を示した。ただし「より頻繁に使っただけの参加者」は一過性の効果のみだった。
――――

――――
Mitchell et al. (2009):
・介入戦略:「さらに伸ばしたい強みトップ10の中から3つを選ぶ」
・介入対象:一般成人 160名
・介入期間:3週間
・介入結果:主観的幸福を評価する尺度において、対照群よりも有意に幸福感を向上させた。ただし、肯定的・否定的感情や生活満足度の尺度は向上しなかった。
――――

――――
Rust et al. (2009):
・介入戦略:「強みと弱みorまたは2つの強み」を伸ばし、週ごとに強みの記録と振り返りを行う」
・介入対象:大学生 131名
・介入期間:12週間
・介入結果:介入群のほうが有意に幸福感が高まった。男性はトップの強みへの介入の方が効果が高かった。
――――

――――
Proctor et al. (2011b):
・介入戦略:「新しい強みを学び、他人の強みを認識する」
・介入対象:高校生 258名
・介入期間:6週間
・介入結果:人生満足度が向上した
――――

――――
Govindji and Linley (2008):
・介入戦略:「強みの活用と幸福を支援するためのストーリーテリングと集会」
・介入対象:小学校 全体
・介入期間:6ヶ月間
・介入結果:生徒の自信、達成意欲、行動、教師との関係、レジリエンス、学校風土の改善に繋がった。
――――

■主な結果

トップ5強みを新しい方法で使う介入(Seligman et al., 2005)が、6ヶ月後も幸福度向上を維持していました。

トップ強みの開発(Mitchell et al., 2009)や、他者の強みに気づく介入(Proctor et al., 2011b)も有効でした。

強み使用促進と心理的ニーズ充足(自律性・有能感・関係性)が幸福度を高めるメカニズムが示唆されました。

効果サイズは小〜中程度(例:Rust et al., 2009ではg²=0.07)でした。

■結論:研究からわかったこと

12~30時間以上の介入と、ポジティブフィードバックを伴う設計が効果的であることが示唆されました。

継続的なフォローアップや、学校全体を巻き込むアプローチが持続効果に寄与することがわかりました。

「強みの認知」から「強みの積極的使用と文脈要因」へと研究視点が進化していることも明らかになりました。

■まとめと感想

強みの介入だけでいくと効果サイズは「小~中程度」ということで、正直なところ「強みアプローチ1本に絞る」ことは、介入施策としては効果的ではないのだろうと思われます。

また、介入が6ヶ月など長いほうが良いということも、たしかにそのとおりなのでしょうが、そうすると現場での使い勝手が難しいとも言えます。

この論文から10年以上経ち、研究も進んでいると思います。より短い時間でインパクトをもたらすための方法も開発されていると思うので、そのあたりも改めて見直してみたいと思った次第です。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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