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4087号 2025年5月4日

おすすめの一冊『羊と鋼の森』

(本日のお話 1663字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、再来週にある野辺山ウルトラマラソンに向けて、
沖縄にて60kmのランニングでした。

朝5時からスタートして、12時に終了。
おにぎり&サンドイッチを1つずつ朝食べて、
あとはポカリ500ml4本、水500ml、プロテインドリンク400mlを
コンビニで補給しながらでしたが、とにかく暑かった(汗)
しかし、良いトレーニングになりました。

また夜は、学生スタッフと大学の授業の打ち合わせでした。



さて本日のお話です。

毎週日曜日は、最近読んだ本の中から一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。

本日のご紹介の本は、第13回本屋大賞、第4回ブランチブックアワード大賞2015、第13回キノベス!2016 第1位、という「伝説の三冠を達成した」と評される一冊です。

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『羊と鋼の森』

宮下 奈都 (著)
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本の内容は「高校生のときに、ふと、ピアノの調律師に出会ったことから、調律の世界に魅せられていく青年の物語」です。

「文字から、こんなにも豊かな音を表現することができるのだ…」という驚きと、言葉の可能性を見せてくれた、素晴らしい作品でした。

ということで、もう少し内容について語ってみたいと思います。

それでは、どうぞ!

■本書のあらすじ

舞台は、北海道の田舎。そこに暮らす、普通の高校生・外村。

ある放課後に、学校のピアノを調律しにきた調律師が、ピアノの音を少しずつ洗練させるようすを見て、否応にもなく、心がざわつくのを感じます。

ピアノも弾けないし、音楽の経験もない。
それでも、彼の気持ちを揺り動かし、調律学校に進み、そして、自分の転機となった憧れの調律師のいる楽器店に就職します。

そして、その楽器店には、さまざまな先輩調律師がいて、調律に対しても違った哲学を持っている。また調律を依頼するお客さんにも、そのピアノにもそれぞれの物語があることが、本を読み進める中で色鮮やかに浮かび上がってきます。

才能も経験もあるわけではない主人公・外村が、調律という世界で、自分の心が反応した道を探求する中での多くの出会いと、それらが彼を静かに成熟させていく過程が美しいお話でした。

私の語彙が不足していて、うまく表現できないのですが、本書の紹介文にある「ピアノを愛する姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、成長していく青年の姿を、温かく静謐な筆致で綴った感動作」というシンプルな一節が、この本を表していると感じました。

■「調律師」の世界を教えてくれる一冊

ピアノは、とてもポピュラーな習い事です。

2014年の調査では、4世帯に1台、つまり25%の家庭にピアノがあるという結果もあります(電子ピアノ含む)。

生のアコースティックピアノに絞っても、2009年での普及率は約20%(=5世帯に1台)保有しているという結果もあるとのことです(伊藤, 2019)。

そして生のピアノは、本小説にもあるように「調律が必要」です。
日本中に存在しているピアノ、でも、その調律とは何をしているのか?に光を当てた物語は、これまで存在してなかったのでは、と思います。

それは、表舞台で「ピアノを弾く人」に光があたりやすく、裏方で「ピアノを整える人」は陰となっているからかもしれません。

こんなにも、どこかしこに存在している調律師。
その存在に光を当てて、彼/彼女らが何を考え、そして音を作っているのか…。その感覚に、少しだけでも触れることで、世界の見え方が、少しだけ変わるようにも思えたのです。

特に、ピアノを持っている人にとっては、
大いなる「世界の見え方の変化」になるはず。

■おわりに

先日、ピアノの発表会がありました。

そこはイタリアの高級ピアノである「ファツィオリ」が置かれている非常に素晴らしい会場でした。年間140~150台しか作られないという、世界の中でも極めて少量生産の希少なピアノ。(それをアマチュアの発表会で演奏できるというだけでも、超レアです)

そして、ファツィオリのスポットライトを浴びて、キラキラ輝くグランドピアノは、足のホイールの向きが外側に開かれていました。

小説の中で、「ピアノの足のホイールを外側に向けることで、重心が僅かに変わり、音が開いていく」というような説明がありましたが、小学生から大人まで、多くの人の練習の成果発表の場を、今ここにはいない調律師が支えているのだと思うと、なおさらありがたい機会に思ったことを覚えています。

ピアノの奥深さを理解し、
音をつくる人たちへの敬意を覚え、
そしてピアノへの愛情を育んでくれる素晴らしい一冊でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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