今週の一冊『イン・ザ・メガチャーチ』
(本日のお話 1,900字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
先日土曜日は、読書、来週からの高校の授業の準備また昼からは、子どもとダンゴムシ拾い(?)でした。夜は組織開発の勉強会など。
年を重ねるにつれ、時間がどんどん加速していく感覚を覚えます。だからこそ、1日1日何をしたのか記録しながら、しっかりと踏みしめていきたい、そんなことを思った次第。
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ本の中から一冊をご紹介するコーナー。今週の一冊は、ちょうど先日「2026年本屋大賞」の受賞が決まった、朝井リョウさんのこちらの作品です。
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『イン・ザ・メガチャーチ』
朝井リョウ(著)
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これはですね、なんとも「揺さぶられる本」です。書籍を読んで、大きなインパクトを受けると「何と表現したらよいかわからない」という気持ちになることが多いのですが、そんな気持ちにさせられる本でした。
ということで、読んだ感想について、ネタバレしない範囲内でお伝えしたいと思います。それでは、どうぞ!(⋯とは言いつつ、どうしても中身を推察できることもあるため、気になる方は読み進めないでいただきますよう、よろしくお願いいたします)
■本書のストーリー
本書のテーマは「推し活」です。早速ですが、本書の紹介文を以下引用します。
沈みゆく列島で、"界隈"は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす"物語"の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、"物語"を使うのが一番いいんですよ」
朝井リョウさんは「現代社会の闇」を群像小説(複数の人物の視点やエピソードが絡み合いながら進行し、最後に一つの大きな流れやテーマに収束していくタイプの小説)のような描き方を、ドラマチックに仕立て上げるのが上手です。
今回の書籍では「推し活にのめり込む人、仕掛ける人」の様子を、その心の変化を鮮やかに、時に極端に描きながら、一つの方向性に濁流のように物語が加速していきます。
人はなぜ"推す"のか?、背景にある感情とは?、推すことによる副産物(副作用)とは?⋯そうしたことを読みながら考えずにはいられない作品です。
とにかく、めちゃくちゃ考えさせられるし、感情が揺さぶられる名著です。本屋大賞に輝いたのも、頷けます。
■読んで、個人的に思ったこと
本書を読んでみた、私の個人的な感想は2つです。
1つが、「推し活の全体像」がわかった(気がした)こと。
正直、私は「推し」がさほどいません。昔から好きなアーティストは「ファン」だし、多分いわゆる「推し活」のような行動はしていません。
いつからか「推し」という言葉が、当たり前のように使われるようになりました。「オタク」というとなんとなくネガティブな印象が漂うのに、「推し」というと応援や爽やかさすら漂います。
では、「ファン」「オタク」「推し活」が意味するものは、どのように違うのか? 推し活に没頭する人の典型的な行動とは何か?そうしたことを、フィクションの小説を通じて、(おそらく少し極端に)描くことでその全体像が見えたような気がしました。
たとえば、「サバ番(オーディション番組)」の特徴や仕掛ける側の心理、「グッズ」を買ったり、「投げ銭」をしたり、「推しのアクリルパネル」に食事を用意したり、推しを勝たせるためにYouTubeの再生回数を高める活動をしたりなどなど⋯。ファンダム経済って、こんな風になっているんだなと、驚くばかりでした。
おそらく、界隈の人からすると、1mmくらいしかわかっていないと思いますが、全体像の輪郭が少しはっきりした気がしました。
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そして2つ目に思ったのが、「推し活と社会問題のつながり」を考えさせられたことです。
この本を読んで、頭に浮かんだキーワードは、「孤独」「寂しさ」「視野を狭めることによる安心」「救いと没頭」「熱狂」「自己の発見」⋯そんな言葉達でした。
これらの一見矛盾する言葉を並べたときに浮かんだものが(個人的な印象としての)「宗教」でした。(まさに「メガチャーチ」ですね⋯!)
本書の中には、様々な「痛み」を抱えた人物が登場します。派遣社員として頑張っているのにお金は毎月カツカツで、未来への希望が持てない人。あるいは、中年に差し掛かり時間はあるけれど、孤独と限界を感じ、これからの人生に明るさを見いだせない人。
でも人は、「つながりたい」「意義を見つけたい」「まだ見ぬ自分を見出したい」と願います。(こういう感情を「ユーダイモニア的幸福」という視点で切り取ることもできます)
そのエネルギーが渦巻く場が「現代の推し活のコミュニティ(界隈)」なのかもしれない、あくまでも私の解釈ですが、そんなことを思わされる物語でした。
ということで、気になった方はぜひ、本書を読んでみてください!
かならず、何かしらの「余韻」が胸に刻まれるはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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