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『謙虚なコンサルティング ― クライアントにとって「本当の支援」とは何か』

今週の一冊『謙虚なコンサルティング — クライアントにとって「本当の支援」とは何か』

2432号 2020年10月18日

(本日のお話 2333字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、朝から、
某企業の役員の方をお招きしての
シークレット勉強会の開催。

その他、読書などでした。



さて、早速ですが本日のお話です。

毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『謙虚なコンサルティング — クライアントにとって「本当の支援」とは何か』
(著:エドガー・H・シャイン)



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です。



■謙虚なコンサルティング。

元々のタイトルは、

Humble Consultingとのことで、

”Humble=謙虚、つつましい”

コンサルティング。


・クライアントに寄り添う

・”問い”を投げかける

・個人として関係性を築く

・本当の課題を見据えつつも、
今ある痛みに寄り添いながら変化を促す

、、、そのような、

伴走者のようなあり方が、
今、支援者としてのコンサルタントに
求められている、と語ります。



■それは、これまでの
「コンサルタント」のあり方とは違うもの。


専門的知見と、
論理に基づいた調査、
そしてそれらのものを分析し、

現場では気づけない複雑な、
物事の事実や構造を明らかにして、
問題をズバリ指摘する。

そして、クライアントに
理想の姿や、課題の戦略を示し、
変化変容を迫る。


そのような、

”診断し、ついで助言する”

という型通りのアプローチによる
コンサルティングは、実はあまり効果がない、

この本では、そのことを強調して
終始語り続けます。



■クライアントへの「真の支援」とは、


”コンサルタント(自分)の手助けによって
クライアント(相手)が、

(1)問題の複雑さと厄介さを理解し、

(2)その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて、

(3)本当の現実に対処すること

が本当の支援なのである。”


といい、


”注目すべきは、主語が「クライアント」である点だ。

コンサルタントは自分で答えを出すのではなく、
クライアントが自ら道を見いだせるように
支援しなければならない。”


というのでした。



■ちなみに、この本の著者の、
エドガー・シャインという方。


人材開発・組織開発に
関わっている方であれば聞いたことが
あるかもしれませんが、

『キャリア・アンカー』

などの、キャリアを選択する上での
自己分析手法を確立した、

組織心理学や組織開発の
世界的な超有名人です。


その方が、わざわざ


”コンサルタントは自分で答えを出すのではなく、
クライアントが道を見出だせるように
支援しなければいけない”


という「謙虚さ」を問うているところが、
実に興味深いのです。



■おそらく、ですが、

「クライアントが答えを見出だせるように支援する」

などというと、

特にコーチングなど学んだことがある方にとっては、

まあ、そりゃ、そうですよね。
クライアントが答えを持っていますよね、

それを支援するコーチング的な立場が、
大事ということですよね、

とまとめて、はい、終わり!

としたくなる方も、
いるかもしれません。


、、、しかし、このことは、
著者自身も重々、認識しています。

ただその上で、このように語ります。


(ここから)

”このことは注目するほどのことではないと
思われるかもしれない。

だが、実現するのは用意ではなく、

つい介入してしまったり、
答えを押し付けてしまったり、
あるいは自分の答えを受け入れようとしない
相手の態度を不満に思ったりしてしまう。

コンサルティングや支援の場において、
折に触れて立ち返る視点だと言えるだろう”

(ここまで)


というのでした。



■では、内容は、
どのようなことが書かれているのか。


語られることとしては、


・ 謙虚なコンサルティングでは、
クライアントとのあいだに
”個人的な関係を構築”することが必要

・ 謙虚なコンサルティングでは、
”謙虚な姿勢”と、”支援したいという積極的な気持ち”、
そして”好奇心”が必要である

・ 謙虚なコンサルティングでは、
”新しいタイプの聴くスキル(共感力を持って聴く)”が
必要である


等のことが中心です。

その一見当たり前のことが、

実際にエドガー・シャイン氏が携わった
合計25種類のケーススタディを元に、


「なぜ、個人的関係を結ぶことが大事なのか?」

「なぜ、共感を持って聴く事が大事なのか?

「好奇心とは、どの瞬間の、どの行為をさして、
それがどんな効果を示したのか?」


などが書き記されています。



■正直なところ、
コーチングを学んでいる自分としては、


「これ、すごい!
考えたこともなかった
目からウロコ…」


みたいな話は、

”実はほぼなかった”、

のです。


しかし、それでもなお
実に興味深い、と思ったのが、


「その道のあらゆる知見を持っている
先生と呼ばれる立場の人」



「専門技術と分析的視点をもって、
問題を鋭く切り込むアプローチ」

をしても、

「クライアントにとっては
あんまり効果的ではなかった」

という、この視点なのです。


つまり、乱暴な言い方をすれば、

”知識や賢い分析手法など、
本当にただの一要素にしかすぎない”

ということを痛感させられること。



ここに、あらゆる支援者、

すなわち、

コンサルタントであれ、
上司であれ、
先輩であれ、
親であれ、

が持つべき、重要なスタンスを
学術的な観点から教えてくれている…

そんな感覚を覚えるのでした。



■この話では25のケースの中で、

世界的な著名人の
エドガー・シャイン氏が、

「関係を築かずにクライアントと関わって失敗した例」とか、

「こんな何気なさそうに見える、でも計算された”問い”を
投げたことで、こんなメカニズムで組織が動いた」

というような体験談を、
詳細に語っているところが面白いです。


すでに名が通っている先生の

ある意味、泥臭い体験記
(というと言いすぎかもですが)

とも言えるかもしれません。



■ということで、この本は、

・賢く、知識もある専門家
・つい答えを教えたくなってしまう方

などには、特に読んでいただきたいな、
と思う一冊でございました。

よろしければ、ぜひ。

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<今週の一冊>

『謙虚なコンサルティング — クライアントにとって「本当の支援」とは何か』
(著:エドガー・H・シャイン)



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