今週の一冊『野の医者は笑う 心の治療とは何か』
(本日のお話 1858字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は10kmのランニング。
坂道ダッシュ200m✕6本を行いました。
10本やる予定だったのが、昼間に食べた「エグチ(byマクドナルド)」が逆流しそうになり、やむなく断念。
まだまだ心肺も弱いな、と思います。
東京マラソンに、実は当たっていたことに先日気づいたので、
そこまでにきっちり心肺を強化したいと思った次第です。
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ本の中から、おすすめの一冊をご紹介する、今週の一冊のコーナーです。
今回ご紹介する書籍は、こちらです。
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『野の医者は笑う 心の治療とは何か? 』
東畑 開人 (著)
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私が大好きな著者さん・臨床心理士の東畑開人さんの著作です。
これまで読んできた『居るのはつらいよ』『カウンセリングとは何か』をはじめ、読み始めたら止まらないくらい面白い。
それでいて深く、心の世界について、考えたことがない視点を与えてくれます。
そんな著作を生み出し続ける東畑さんが、今から10年ほど前に沖縄で行ったフィールドワークをもとに書いたノンフィクションの著作がこちらです。
400ページという大作なのに、引き込まれるようにして、貪るように読んでしまいました。
ということで、本日はこの著書について、その魅力をお伝えしてみたいと思います。
それでは、どうぞ!
■沖縄にいるスピリーダーたちを調べ尽くした話
東畑さんは、ある研究プロジェクトで、「野の医者のフィールドワーク研究」を行うこととなります。
「野の医者」とは、臨床心理士などの学問を習得し、そうした理論や技術を通じて”心の癒やし”を提供するのとは別のアプローチで人を癒やす人たちです。
たとえば、オーラを見たり、前世を見たり、スピリチュアルなアプローチを用いる人もいれば、ユタ(霊媒師、シャーマン)のようなアプローチもあります。そして、沖縄には、そうした人たちが多い。
臨床心理士は、傷ついた心を受け止め、消化し、そして生きていくことを支援するアプロ―チです。(精神分析や認知療法など、いくつかの学派があり、その中でも対立があるようですが…)
ただ、実際に人が集まり、そうした「癒やし」を提供しているという事実がある。そこではどんなことが行われており、どんな理由で人が集まるのか。そして、それらによってもたらされる癒やしとは何なのか…?
そうしたことを、沖縄の様々な”野の医者”に出会い、そのルーツを遡り、そして実際に「マインドブロックバスター」なるあからさまに怪しい民間の資格を取得してみたりする中で、臨床心理士と何が違うのかを解き明かそうとするノンフィクションの物語です。
■スピリチュアルの癒やしの場とは?
その物語の軌跡が、超絶、おもしろい…。
そんなこと、ある?というような、ネタのような数々が、大真面目に繰り広げられ、そこに著者自身もツッコミを入れつつも、一方、冷静に学問的、歴史的に分析をしようとするその落差が、読者を興奮と熱狂の物語に引き込んでいきます。
たとえば、「ミルミル一点集中!」と唱えて、「はい治った!」とする野の医者。(病院もやっているが、そういうアプローチもできる)
オーラが見えるというマスターセラピスト。そしてそれに呼応するように、周りに集まってくるヒーラの候補者たち。外から見れば、異様な雰囲気ですが、それでも人が集まり、そして一つのコミュニティを形成している様子が、リアルにイメージができます。
そして、そうした現状を、「ニューソート(New Thought)」というポジティブ・シンキング(積極思考)、思考は現実化するという教えなどの系譜と、それが沖縄に本などを通じて広がり、あるターニングポイントとなる仕掛け人のような人物の影響で一気にビジネスとしても拡大していくようすなども、冷静に分析されています。
■個人的な感想
私も、ニューソート的な考えが好きな人でありますが、言葉を選ばずに言えば、ある種の軽さや無知さが漂うその世界の意味を、臨床心理士という心の癒やしの学問的な専門家が、その価値を認めつつも、冷静に切っていくような、そんな印象を受けました。
「学問」とは、自分たちが行っていることの意味を、無批判に受け入れることではなく、それらを批判的に、客観的に見て、理論として探求していくことが求められます。一方、野の医者のアプローチは、その点がやや足りていない、とも言える。
…かといって、それらを「笑う」ことをするのは、臨床心理士の中でも、精神分析と認知行動療法の間で溝があるように、「心の癒やしとは何か」をそれぞれのイデオロギーをぶつけ合って歩み寄らないことと同義である、と述べ、それぞれの価値を認めることの重要性が語られているように思いました。
人が癒やす、癒やされるというのは、一つの方法論で閉じ込められるものでもない。そんなことを、本書を読みながら感じた次第です。
失礼な言い方かもしれませんが、エンターテイメント的にも本当に面白いので、ぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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