今週の一冊『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
(本日のお話 2159字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、終日大学院。
また3キロのランニングと、
打ち合わせ1件でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、オススメの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は
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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ (著)
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です。
■この作品、
ブレイディみかこさん(日本人=イエロー)と
英国人のお父さん(英国人=ホワイト)の
当時中学生のぼく(著者の息子)が
英国の元底辺中学校に通い始め
そこで起こる数々の日常の出来事を
描いたノンフィクションの作品です。
そして、登場人物の「ぼく」が何気なく
教科書の隅に走り書きをしてた言葉、
「ぼくはイエロー、ホワイトで、ちょっとブルー」
がタイトルになった、とのこと。
■内容はエッセイ風ですが、
その内容が、深い。
例えば、
・英国におけるエスタブリッシュメント
(王室貴族、生まれながら裕福)と
労働者階級の格差。
・人種差別丸出しの友達、
そしてその背景にある移民の親の影響、
・人種の違いや発言による
中学校内でのいじめ、
・LGBTQの考え方
その背景にある教育観、
・または子供の柔軟性から考えさせられる
我々の「当たり前」の定義について…
、、、
そんな「世界の社会問題」を
どの世界でもある学校生活、
(しかし多様性を考えさせられる
日本とは違う環境)、
そして、母と息子の会話等の日常を通じて、
(これもブレイディみかこさんの関わりで
中学生の息子さんとのやり取りが深い!)
誰かの生活、そしてその中での
思考や感情の揺れ動きを、
覗き見させてくれる気持ちになりました。
まさに、本の魅力である
”誰かの人生をちょっとだけ
追体験させていただく”
ような感覚をもたせてくれるのです。
■ちなみに本作品、
”Yahoo!ニュース|本屋大賞
ノンフィクション本大賞受賞作品”
として評価されています。
他にも調べてみると
本屋大賞ノンフィクション本大賞
毎日出版文化賞
八重洲本大賞
キノベス!
ブクログ大賞
読者が選ぶビジネス書グランプリ
中高生におすすめする司書のイチオシ本
神奈川学校図書館員大賞
埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本
書店新風賞
君に贈る本大賞
、、、等の受賞を得ており、
実に注目されている一冊。
■しかし、その理由もわかる気がしました。
同一民族の割合が95%を占める国家を
「単一民族国家」と呼びますが、
その1つでもあるのが「日本」。
特に独自の歴史や
文化的背景を持つ国で生活をしていると
「移民問題」「人種問題」
「ダイバーシティ」
などが、縦も横も
なんとなく小さくまとまってしまい、
それが切実な問題と言うよりも
どこかで起こっている話と身近なものに考えづらい、とか
アンテナを立てられずに通り過ぎてしまう、
ということも、あるのかもしれません。
(、、、と恥ずかしながら
本作品を通じて、私は自分を振り返り
私自身に対してそう思いました)
■その中で、とはいっても、
そのような問題を温度感を感じられる、
日常のものになる手段があるとしたら、
それこそ、
”物語として感情を伴って感じること”
に他ならないのかもしれない。
そしてそれが物語としての
ノンフィクションの価値でもあるし、
今回の
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
の魅力なのかもしれない、
と私は感じました。
■そして、それを可能にしたのは、
ブレイディみかこさんという
著者の歩まれた半生があるからだと思われます。
イギリス・ロンドン在住のライター、
翻訳者等が表面上の役割。
しかし、ブレイディみかこさんの経歴は
・福岡県福岡市生まれ 貧困家庭出身
・パンクミュージックに系統する
・ロンドンを転々として無一文になる
・英国にて保育士の資格を取る
・ロンドンの日系企業で勤務
・失業者や低所得者向けの無料託児所で働く
と書かれています。
(Wikipediaより)
■自身が貧困家庭出身であり
そして低所得者の子供の世話をする中で
貧富、人種、教育等の
縦と横の多様性の渦の中で
生きてきたからこそ見える視点。
それを、彼女の文筆家としての表現力が
かけ合わさって、このようなリアルな物語になったのだろう
と思わされました。
軽やかで親しみやすい文章から
スラスラ読めます。
しかし、内容は、深く、
じっくり考えさせられる一冊。
私達がこれから向き合うべき問いが
たくさん散りばめられています。
、、、ということで以下、
本のご紹介です。
(ここから)
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人種も貧富の差もごちゃまぜの元底辺中学校に通い始めたぼく。
人種差別丸出しの移民の子、
アフリカからきたばかりの少女やジェンダーに悩むサッカー小僧……。
まるで世界の縮図のようなこの学校では、いろいろあって当たり前、
でも、みんなぼくの大切な友だちなんだ――。
優等生のぼくとパンクな母ちゃんは、
ともに考え、ともに悩み、毎日を乗り越えていく。
最後はホロリと涙のこぼれる感動のリアルストーリー。
<目次>
はじめに
1 元底辺中学校への道
2 「glee/グリー」みたいな新学期
3 バッドでラップなクリスマス
4 スクール・ポリティクス
5 誰かの靴を履いてみること
6 プールサイドのあちら側とこちら側
7 ユニフォーム・ブギ
8 クールなのかジャパン
9 地雷だらけの多様性ワールド
10 母ちゃんの国にて
11 未来は君らの手の中
12 フォスター・チルドレンズ・ストーリー
13 いじめと皆勤賞のはざま
14 アイデンティティ熱のゆくえ
15 存在の耐えられない格差
16 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン
解説 日野剛広(ときわ書房志津ステーションビル店)
※Amazon本の紹介より
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(ここまで)
ご興味がある方は、ぜひ。
じんわりと視点の広がりを
感じるのではないかと思います。
素敵な読了感とともに読めて
とってもおすすめです。
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<今週の一冊>
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ (著)
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