面白い人になりたい!「7つのユーモア習慣プログラム」の驚くべき効果 ーチューリッヒ大学の研究ー
(本日のお話 3504字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は強み診断のアプリ開発の打ち合わせ、
ならびに午後からは外部人事パートナーとして関わらせていただいている会社様へのコーチング&コンサルティングの実施でした。
*
さて、本日のお話です。今日は論文のご紹介でございます。
突然かつ皆さまにとっては、本当にどうでもよい話かと思いますが、私は小学生のときの将来の夢に「お笑い芸人」と書いていたことがあります。
理由は、小6のときに「クラスの面白い人ランキング4位」に輝いたためです(微妙すぎ)。
しかしその後、自分の芸風には「変顔」しかないことに気づき、さらには面白かったのは私ではなく「一緒にいた友達」であったことを後になって知りました。
その夢は、夏のセミのように短命でしたが、今なおちょっとした胸の痛みと共に、ユーモアへの憧れが残っています。
さて、そんな魅惑的な「ユーモア」ですが、学術的にも、実はとても有名な概念なのです。
ここ20~30年で数々の研究が行われてきており、その論文数は少なくとも2000本以上となります(広く見れば1万以上)。
さて、その膨大なる研究結果によると、ユーモアがあると対人関係が向上する、心血管疾患の死亡リスクが低減する、職場のストレス緩和にも寄与する。
さらには仕事のパフォーマンスが高まり、周囲から有能にも見られる、そして何より、幸福度が高まるという、至れり尽くせりの効果・効能です。
今回は、そんな「ユーモア」が後天的にトレーニングできることを示した、非常に興味深い論文をご紹介します。さて、自分はユーモアある人になれるのか…。
それでは、早速まいりましょう!
■今回の論文
===================
・『Training the sense of humor with the 7 Humor Habits Program and satisfaction with life(7つのユーモア習慣プログラムによるユーモア感覚の訓練と人生満足度)』
・著者:Willibald F. Ruch / Heidi Stolz
・ジャーナル:HUMOR: International Journal of Humor Research、2018年
・所属:チューリッヒ大学(University of Zurich)
===================
■30秒でわかる論文のポイント
・ユーモアは単なる才能ではなく、8週間の体系的なトレーニングで後天的に高めることが可能である。
・トレーニングによって「陽気さ」が高まり、「深刻さ(真面目すぎる状態)」が低下する。
・なおかつ、自分だけでなく、周囲の友人から見たユーモア度の評価も向上する(つまり、「あの人、最近ユーモアが増したね」と認識されるレベルまで変化する)
・ユーモアの習慣を身につけることで、人生全般の満足度(生活満足度)も向上する 。
というなんとも驚くべき効果です。特に「周囲から見たユーモア度が高まる」というのは、なかなかのものです。
■研究の背景と目的
かつてユーモアは「生まれ持った性格」で、一生変わらない安定したものだと考えられてきました。
しかし、1990年代にMcGhee氏が「ユーモアは習得可能な習慣の集まりである」という画期的な見解を示しました。
今回の研究の目的は、McGhee氏が開発した「7つのユーモア習慣プログラム(7HHP)」が、成人のユーモア感覚や生活満足度を本当に向上させるのかを科学的に実証することです。
特に、ユーモアがもともと低い「終末的な深刻さ(ガチガチに真面目すぎて遊び心がない状態)(※)」に陥っている人たちに、この訓練が救いとなるのかを検証しています 。
※「終末的な深刻さ(Terminal Seriousness)」とは 人生の課題やストレスに圧倒され、遊び心やユーモアを見出す余裕を完全に失ってしまった精神状態のこと 。
本研究の参加者は、ベースライン時点でこの傾向が強く、生活満足度も平均より低い傾向にありました 。
■研究の方法
・デザイン:無作為化比較試験(実験群と対照群をランダムに分ける精度の高い手法)
・参加者:ドイツ語圏の成人110名(平均年齢約47.5歳) 。
・尺度:ユーモア感覚尺度(SHS)、状態・特性陽気性尺度(STCI)、生活満足度尺度(SWLS)などを使用 。
・分析手法:反復測定分散分析(ANOVA)、共分散分析(ANCOVA)など
※ユーモア感覚尺度については、こちらの記事をご参考ください
◯【実験のグループ分け】
・介入1(トレーニング+ホームプレイ):8週間のトレーニングを受け、さらに自宅での「遊び(課題)」を実践する群 。
・介入2(トレーニングのみ):8週間のトレーニングのみを受け、自宅課題は課されない群 。
・比較条件1(プラセボ群):体系的な訓練はせず、単にユーモアのある動画を見たり、雑談したりする群 。
・比較条件2(待機群):何もせず、測定だけを行う群 。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:ユーモア感覚は「可塑的」であり、トレーニングで高められる
8週間の訓練を受けたグループは、自己評価だけでなく、親しい友人による「ピア評価」でもユーモア感覚が有意に向上しました 。
単にユーモアに触れるだけのプラセボ群ではこの向上は見られず、体系的な「訓練」が必要であることが示されました。
◯わかったこと2:ユーモアトレーニングは「陽気さ」を高め、「深刻さ」を減らす
毎回のトレーニング前後で気分を測定したところ、最初の6回のセッションで陽気な気分がグンと高まり、深刻さが低下しました。
ただし、最後の「自分を笑う」「ストレス下でのユーモア」は難易度が高く、陽気さを出すのが難しかったことも判明しています。
(ちなみに、最後のセッションは、この楽しいユーモアトレーニングが終わってしまう寂しさもあったのでは、と考察されていました)
◯わかったこと3:生活満足度が向上し、その効果は2か月後も持続する
訓練を受けた群は、受けなかった群に比べて生活満足度が向上しました。
特に「訓練のみ(介入2)」のグループは、参加者同士が自発的に集まって楽しむなどの二次的効果も重なり、非常に高い満足度を示しました。
■7つのユーモア習慣プログラムの内容
この研究が教えてくれるのは、ユーモアは「筋肉」のように鍛えられるということです。
本論文で引用された「7つのユーモア習慣トレーニング(7 humor habits Program)」のポイントは、以下の通りです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ステップ1:ユーモアに囲まれる
お気に入りのコメディ番組を見たり、ユーモアのあるメディアに積極的に触れる時間を増やす。
・ステップ2:遊び心のある態度を育む
「真面目」と「深刻」を分ける。ふざけた小道具(おかしな鼻など)を身近に置き、思考を柔軟にする。
・ステップ3:もっと頻繁に、心から笑う
普段より長く、大きく笑ってみる。社会的に笑いが起こる場所に身を置く。
・ステップ4:独自の言葉によるユーモアを創出する
ダジャレや比喩、言葉遊びを楽しむ。日常会話の中にある曖昧さを面白がる。
・ステップ5:日常生活の中のユーモアを探す
「面白いことが起きない」のではなく、見逃しているだけの可能性あり。日常の滑稽な出来事を書き留める(ユーモア日記) 。
・ステップ6:自分を軽く見る(自分を笑う)
自分の失敗や弱点をネタにする。自己卑下的なジョークを練習し、深刻さを手放す。
・ステップ7:ストレスの中でもユーモアを見つける
イライラする場面で「これをどう面白く捉えられるか?」と意図的に考える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■まとめと感想
また、上記のステップは「ステップ1→7」に向けて難しくなっていきます。
最初のレベル1~3は「お笑いを見る」など受動的なユーモアの楽しみ方ですが、レベル4~7は、ユーモアを仕掛けにいくような積極的な内容です。
特に注目したいのが「レベル5:ユーモア日記をつける」です。
これは、特に幸福感を高めるための代表的なワークとして、その効果が示されています。
ちなみに「レベル7:ストレスの中でもユーモアを見つける」について、有名なエピソードで、1981年3月30日、共和党のロナルド・レーガン大統領が狙撃されたときのお話があります。
狙撃後、レーガン大統領が大学病院に緊急搬送され、執刀医たちに囲まれたとき、酸素マスクを外してこう言ったとされています。「皆さん全員が共和党員だといいんだがね」(=レーガンは共和党の大統領)。対して、執刀医のチーフが、「大統領、本日は我々全員が共和党員です」(=本当は、執刀医は民主党支持だったらしい)と返したとか。
なんという高度なユーモア合戦……!
当時、その話に感激して、仕事の先輩とピリついた空気のときにボケてみたら「そういうのマジいらない」と、普通に怒られて終わりました。道のりは長そうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。
<noteの記事はこちら>
