メールマガジン バックナンバー

4459号 2026年5月11日

「正直であること」は、思った以上に受け止めてもらえる ー論文からの示唆ー

(本日のお話 1758字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日日曜日は、大学院の仲間とのランニングでした。

野辺山ウルトラマラソンが今週に控えています。
今年で8回目の挑戦。今年は自己ベストを目指して、頑張ります。

何事も、コツコツと。



さて、本日も論文のご紹介です。
今日は「性格の強み」の概念の一つである「誠実さ」についての論文をご紹介します。

人は、相手のことを気遣って「悪いニュースを伝えない」という選択をときにしてしまいがち。でも実際には、率直に、偽りなく伝えることは、さほど悪い結果を生まない。
それどころか、想像以上にポジティブな結果をもたらすことが明らかになったという研究です。

改めて「誠実である(嘘偽りがない)」ことの大切さを感じる論文でございました。

ということで、早速中身をみてまいりましょう!

■今回の論文

・タイトル:You Can Handle the Truth: Mispredicting the Consequences of Honest Communication(真実を受け止められる:正直なコミュニケーションの結果を誤って予測すること)
・掲載誌:Journal of Experimental Psychology: General(2018年)
・著者:Emma Levine(エマ・レヴィーン)、Taya R. Cohen(ターヤ・R・コーエン)
・所属:シカゴ大学(Levine)、カーネギーメロン大学(Cohen)

■30秒でわかる論文のポイント

・人は正直なコミュニケーションのコスト(楽しさの低下・関係性への悪影響)を、実際よりも大きく見積もる傾向がある。

・フィールド実験・実験室実験を通じて、誠実に行動した人は予測よりもはるかに大きな「楽しさ」「意味」「社会的つながり」を経験していた。

・誤予測の主な原因は「相手がひどく傷つくだろう」という思い込み。実際には、相手の否定的反応はそこまで大きくなかった。

・誠実さを「避ける」選択は楽しさの予測に基づくが、体験後の満足度は「意味の深さ」によって決まるという乖離がある。

■研究のデザイン

この研究では、「正直に話すことで起きると思っていること」と「実際に起きること」を比較するという、シンプルな設計です。

フィールド実験では、成人154名を「誠実に行動する」「親切に行動する」「コミュニケーションを意識する(対照群)」の3グループに無作為に振り分け、3日間にわたって毎晩の体験を追跡しました。
そして別グループの223名には、それぞれの条件を「想像した場合」の体験を予測してもらいました。

実験室実験では、2人1組のペアが実際に誠実な会話(自己開示や批判的フィードバックなど)を行い、その前後で「予測していたこと」と「実際に感じたこと」を比較しています。

測定されたのは主に3つの指標です。

・楽しさ(快楽的幸福感)
・意味のある感覚(ユーダイモニック幸福感)
・社会的つながり

そして「人間関係への悪影響」についても、予測と実際が比較されました。

■結果(わかったこと)

・予測者は、誠実条件における「楽しさ」と「社会的つながり」を、体験者の実際値よりも有意に低く見積もっていた(楽しさの効果量 d=1.15、社会的つながり d=0.97)

・実際には、誠実条件の参加者は対照条件よりも大きな「意味」と「社会的つながり」を経験していた

・2週間後の追跡調査でも、誠実行動したグループのほうが人間関係の改善を報告していた

・関係性への悪影響については、予測者が実際よりも大きな損害を見込んでいた(d=1.01)

つまり、「正直に話すと、関係が悪くなる」という予測は、かなりの部分で外れていた、ということです。

■まとめと感想

「これを言ったら、傷つけてしまうかもしれない」 「今さら指摘しても、関係がこじれるだけかもしれない」 「わざわざ言わなくてもいい」みたいに、つい、相手のことを気遣っているつもりで、ちょっとした「部分的な正直さ」を選んでしまうことがあります。

嘘ではないけれど、全部は言わない。伝えたいことがあるけれど、今日じゃなくていいかと先送りにする、みたい話です。

でも今回の研究は、そうした回避の多くが「誤った予測」に基づいていることを示しています。実は、相手はそこまで傷つかない。関係はそこまで壊れない。
むしろ正直に話したほうが、意外なほど豊かなつながりが生まれるようです。

「相手が傷つくから」という理由で、誠実さ(正直さ)を手放すことのほうが、実は失っている事が多いのかもしれない、そんなことを感じさせられる論文でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。

<noteの記事はこちら>

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す