夜に運動すると眠れなくなる? 朝と夜の運動を比較したメタ分析
(本日のお話:3705字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日日曜日は、読書と家族との時間、
研修資料の準備などでした。
また、私事ではございますが、
1週間前にスイス・イタリアの旅から戻って以来、
時差ボケがなかなか戻らず、苦戦しております…。
一旦治ったと思いきや、
やはり夜に目覚めてしまったり、眠れなかったり。
これまでは、
「朝5〜6時には起床→ランニング→メルマガ→仕事」みたいな、
比較的健康的な、早寝早起きの生活だったのが、
その習慣が崩れてしまいました…(涙)
朝起きれなくなってしまったので、
それに連動して、ここ数日は「夜ランニング」になりました。
たとえば、この土曜日は夜7時半から
「30km走」のロング走をしました。
そんな中で、ふと気になることがありました。
「夜に運動すること」と「朝に運動すること」。
果たして、”研究としてどちらのほうがよいか?”
の答えはあるのか?ということ。
睡眠への影響はどうか、
身体の健康状態を保つうえでは、
朝と夜で違いがあるのか…。
気になって調べてみたところ、
2023年3月までの研究をまとめ、
「朝の運動」と「夜の運動」を比較したメタ分析がありました。
ということで、
早速中身をみてまいりましょう! それでは、どうぞ。
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<本日の論文>
タイトル:Effects of evening exercise on anthropometric indices, metabolic profiles, and sleep health: a systematic review and meta-analysis(夜間の運動が身体測定指標・代謝プロファイル・睡眠の健康に与える影響:システマティックレビューおよびメタアナリシス)掲載誌:Sleep and Breathing, Volume 29, Issue 5, Article 304出版年:2025年
著者:Patavee Pajareya, Noppachai Siranart, Nithi Tokavanich, Ponthakorn Keawkanhaほか
所属:チュラロンコン大学、ミシガン大学ヘルス、
メイヨークリニック、インターマウンテン・ヘルスほか
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■30秒でわかる本論文のポイント
・朝と夜の運動を比較した14研究、
合計716名を対象としたシステマティックレビュー&メタ分析をした。
・結論として、朝と夜のどちらに運動しても、
今回検討された健康指標に明確な差は確認されなかった。
・体重やBMIについて、
朝に運動する場合と夜に運動する場合で、
統計的に有意な差はみられなかった。
・入眠までの時間やLDL・HDLコレステロールなどについても、
朝と夜で明確な差は確認されなかった。
・ただし、研究間のばらつき(異質性)が極めて大きく、
「朝でも夜でもまったく同じ」とまでは言えない点に
注意が必要である。
という内容でした。
研究的には、「朝も夜もあまりかわらない」、
でも「研究間のばらつきが極めて大きい」ので
過度な一般化は注意が必要。となりそうです。
■研究の背景と目的
運動する「時間帯」が、
私たちの身体にどのような影響を与えるのかについては、
以前から議論があります。
たとえば、夜に運動すると、体温が上がったり、
交感神経が活性化したりして、身体が覚醒してしまう。
その結果、眠りづらくなるのではないか、
と考えられてきました。
一方で、夕方から夜にかけての運動が、
血糖コントロールや脂質代謝に好ましい影響を与える可能性を
示した研究もあります。
では、結局のところ、
「朝の運動」と「夜の運動」は、
どちらがよいのでしょうか?
そこで今回の研究では、
これまで行われてきた研究を集めて、
朝と夜の運動による「身体測定指標」「代謝」「睡眠」への
影響を比較しました。
■研究の方法
研究チームは、MEDLINE、EMBASE、Cochraneという
主要な文献データベースを使い、
2023年3月までに発表された研究を検索しました。
対象となったのは、中強度以上の運動を朝または夜に行い、
その後の身体や睡眠への影響を調べた研究です。
最終的に分析対象となったのは14研究、合計716名でした。
内訳としては、身体測定指標が11研究、
代謝プロファイルが8研究、
睡眠パラメータが5研究となっています。
これらのデータを統合し、
「朝に運動した場合」と「夜に運動した場合」で
違いがあるのかを比較しました。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:体重やBMIに明確な差はなかった
まず、体重についてです。
朝と夜の運動を比較したところ、
体重はMD=-0.12kg、BMIはMD=-0.07kg/m²となり、
いずれも統計的に有意な差はありませんでした。
つまり、今回の研究を見る限り、
「朝に運動したほうが痩せる」
「夜に運動したほうが痩せる」とは言えなかった、
ということです。
◯わかったこと2:睡眠にも明確な差はなかった
次に、個人的にもっとも気になっていた「睡眠」です。
入眠潜時、つまり
「布団に入ってから眠りにつくまでの時間」を比較すると、
MD=-2.24分となり、
こちらも朝と夜で統計的に有意な差は確認されませんでした。
つまり、
「夜に運動したら、必ず眠れなくなる」
というわけではなさそうです。
少なくとも、今回集められた研究を全体として見た場合には、
夜の運動が朝の運動よりも睡眠を明確に悪化させる、
という結果にはなりませんでした。
◯わかったこと3:コレステロールなどの代謝指標にも差はなかった
そして、LDLコレステロールやHDLコレステロールといった
代謝指標についても調べています。
LDLコレステロールはMD=0.11mmol/L、
HDLコレステロールはMD=0.09mmol/Lとなり、
こちらも朝と夜で明確な差は確認されませんでした。
以上をまとめると、
「朝か夜か」という運動時間帯そのものについて、
今回検討された健康指標では、
一方が明確に優れているとはいえなかった。
これが今回の研究の大きな結論となります。
■考察
この結果から研究者らは、
「夜の運動は睡眠に悪いので避けるべき」と
一律に考える必要はないのではないか、と述べています。
これは、忙しい現代人にとっては、
なかなか朗報かもしれません。
仕事や育児などをしていると、
「朝に運動したほうが健康によい」と言われても、
できないものはできません。
それよりも、自分の生活リズムに合わせて、
「続けられる時間に運動する」という選択肢を持てるほうが、
結果として運動習慣を維持しやすくなるとも考えられます。
ただし、今回の結果を読むうえでは、
かなり重要な注意点があります。
■この研究の限界
今回の研究で、個人的にもっとも気になったのが
「異質性」です。
体重やBMI、睡眠、コレステロールなどの分析で、
研究間のばらつきを示す指標(=I²)が
99〜100%となっていました。
これは、「かなり大きなばらつき」とされています。
そしてもう一つ重要なのが、
「朝」と「夕方」の定義です。
今回の研究では、大きく分けると
「朝」は起床後から正午まで、
「夕方」は”正午から就寝”まで、とかなり幅広く捉えられていました。
しかし、私たちが日常生活でイメージする
「夕方の運動」とは、おそらく
「仕事を終える頃の、17~18時以降」というものかと思われます。
「13時に運動すること」と「21時に運動すること」を、
どちらも同じ「夜側の運動」としてまとめてよいのか。
ここには、まだ検討の余地がありそうです。
加えて、対象となったのは14研究・716名で、
睡眠を扱ったものは5研究に限られています。
そのため、
「夜遅い時間の高強度運動でも問題ない」とまで、
この研究から結論づけることはできません。
■まとめと感想
今回のメタ分析では、
「朝の運動も、夕方・夜の運動も、全体としては大きく変わらない」
という結果になっていました。
体重やBMI、代謝指標、
そして入眠までの時間などについても、
明確な差はありませんでした。
ただ、気になるところとしては、
やはり異質性が99~100%と、
研究間のばらつきが極めて大きいことです。
つまり、
「朝と夜で差がなかった。だからいつ運動しても同じです」と、
単純には言えないのだろうと思います。
個人的な感覚としても、
昼の12〜15時くらいまでの間に30kmほどのロング走をしたときには、
それほど睡眠に問題はありません。
しかし今回のように、
19時半を過ぎてから30kmを走った場合には、
さすがに足がほてったりして、
夜は眠れなくなってしまいました(そりゃそうだ)。
「夜の運動でも影響はない」という研究結果を見たとしても、
やはり19時半からの30km走は、
私にはちょっと遅すぎたようです……。
*
改めて考えると、結局こうした研究は、
「正解を教えてくれるもの」というよりも、
「自分を知るための参考材料」なのかもしれません。
研究から大きな傾向を知る。
そして、その知識を持ちながら、
自分の身体で試してみる。
「何時に走ると、気持ちよく眠れるのか」
「どれくらいの強度なら、夜でも大丈夫なのか」、
そんなことを観察して、
自分に合った方法を見つけていく。
結局のところ、それが大事なのだろうな。
そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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