メールマガジン バックナンバー

2627号 2021年4月30日

変革のパラドックス(後編)~人が変わるための「学びの3つの基本原理」~

(本日のお話 3094字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

今日から皆さまはGWでしょうか。

なかなか世の中は不安もある中で
色々と予定も変わっている方も多いかと思いますが、

いずれにせよ、良き休暇になりますように!

私はしっかり読書進めたいと思います。
(寝ないようにがんばります)



さて、本日のお話です。

昨日のメルマガでは、

『変革のパラドックス(前編)~「これをやったら”人は変わらない”」アプローチから学ぶこと~』
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/3833649/

というお話をいたしました。

教育の世界において、

「人を変えよう」とすると
「人は変わらない」という、

ことがしばしば起こる。

そんな、"変革のパラドックス"。

では、どのようにすれば、
人は変わりうるのか?

今日はこのことをテーマに、
お伝えさせていただければと思います。

それでは早速参りましょう。

タイトルは、

【変革のパラドックス(後編)~人が変わるための「学びの3つの基本原理」~】

それではどうぞ。

■人を変える。

まず、そもそも前提として
”人を変える”ことはできません。

(あ、最初から言ってしまった…)

というより

”人が変わる"には、

「本人が、自分が変わること」を
望まなければ、始まることはない。

人は機械ではありません。

ゆえにどこかのパーツを取り替えて、
違う思考方法を変えました、

なんてことは
起こりうるはずもないし、

もし行えたとしたら
だいぶ危険な方法っぽいです。。。

■特に大人はそうですね。

それぞれが持っている考え方は
”そうなった理由”があるものです。

例えば

”あるべき上司像”

も人によって
意見はバラバラです。

・「的確な指示ができる上司」であるべき

・「部下の話をきちんと聞く上司」であるべき

・「社内の交渉を丁寧に行える上司」であるべき

もちろん全部大事。

でも、自分は特に
どこに軸足をおいているのか。

何を特に重要と感じているのか。

大事にしているウェイトは
人により違っているもの。

そしてその”配合比率”は

新卒から経験した出来事
その時の上司のナイスな対応
逆に不満だった対応、、、

など

「その考えを構築した経験」があるのです。

そしてその経験には「感情」が紐付いていて、
ゆえに、価値観が形成され、結果として

「上司はこうあるべき」という「意見」が、
ストーリーとして合理的に生まれてくる。

■ゆえに、

その人のこれまでの
歩んできた轍の中で出てきた考え方があると、

尊重し、その歩みを認めた上で

「新たな考えを”上乗せ”する」

ということが

変革のプロセスのイメージである、

ということです。

今の自分を変えろ=自分の過去を否定すること

に繋がることもあるので、
当然、人は嫌がりますよね。

■では、そのために

「新たな考えを”上乗せ”する」

ことで本人の変革を促す上で
どのような工夫ができるのでしょうか。

そこで、以下の考え方が考になりそうです。

(以下、「先生を教育するための本」である
『教師教育学』からの引用です。

我々職業人としての大人にも
同じ学びの原理が当てはまるかと思います)

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【「学び」の3つの原理】

<1,「学習者のニーズ」の発見をサポートする>

”専門家としての学びは、
「学習者の内的な必要性」を伴うとより効果的になる”
(Fullan 1991; Maslow 1968)

例えば、

「好きだった上司・尊敬する上司ってどんな人?
今のあなたと、どのようなところに違いがあるのだろうか?」

を問うてみる、などですね。

自分はどこを目指しているのか、
そしてどうなりたいのかを省察することで、
”学習の必要性"に気づくことがあります。

<2,「学習者の経験」から学ぶことをサポートする>

”専門家としての学びは、
「学習者の経験」に根ざすとより効果的になる”
(Piaget 1970; Rogers 1969)

例えば、「コーチング研修」等でも

理論を中心にするのではなく、
実際にロープレをやったり
部下と対話をして上手く言ったor失敗した経験を
題材に話をするとうまくいく…

ことですね。

<3、「学習者が経験を省察する」ことをサポートする>

"専門家としての学びは、
学習者が自身の「経験を詳細に省察する」とより効果的になる

例えば、先生の場合
「教育実習」等の経験をした後、

・どんな風に授業内容を説明したのか
・生徒からどんな質問をされたのか
・自分がどう回答したのか
・その中で何を感じていたのか

などは覚えていないことがあるのです。
(ストレスがかかっている、などで)

しかし、経験を詳しく振り返り、

出来たこと、出来なかったこと、
予想通りだったこと、予想通りにいかなかったこと等を

「詳細に省察する」ことによって、
次に向けて自分の考えや行動変えられるのです。

※参考:『教師教育学 理論と実践を繋ぐリアリスティックアプローチ』
F・コルトハーヘン(編著)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

、、、さて、いかがでしょうか?

■上記、
当たり前のような話ですが、

「自分を変革する」上で、
めちゃくちゃ大事だと思うのです。

特に3つ目の、

「省察すること」

がものすごーく大事です。



例えば、私(紀藤)には
こんなエピソードがあります。

仕事で「研修」を行うのですが、

だいたい研修後は、
サポートに入ってくれた仲間の一人と、

フィードバックとともに、

「研修の振り返り(省察)」

を行います。

そのときに、

・良かったこと
・更に改善できること

を語り合います。

すると、必ず
「気づき」があります。

■まず仲間からの
フィードバックをもらいます。

例えば、私(紀藤)の研修で

・ちょっと元気がないように見えた

・右の口が歪んでいて気になった

・説明の時間が長かったような気がする

などなど(アイタタタ…)。

そして自分自身を
振り返り(省察し)ます。

「何を変えたら良いのだろうか?」

「どうしたら、もっと良くなるのだろうか?」

「なぜ、そのような行動をしたのか?」

そうやって経験を振り返る
機会と時間を設けてみる。

すると、自分の中の考えと

行動をした理由に自覚的になり
次は別の選択肢を選ぶことができたりする。

この

「フィードバック」×「省察」

のループで上向きの螺旋階段を上がり、
自らを成長・変革させられている、

と感じます。

■ただ、、、です。

ぶっちゃけて言うと、

「省察は気が乗らない(こともある)」

のです。。。

というのも、
振り返ること自身
ちょっと面倒くさいです

(早く休みたい、とかね)

加えて、
上手く言ったところばかりではなく
必ず反省点は見つかるし、

全力でやったけど
上手くいかなかったと感じたときは、
それを見つめることは、純粋に凹みます。

だから、一人で「省察」しましょう、

といっても、なかなかできない。

■だからこそ、

「人を変える(成長させる)」と
もし言うのであれば、

外部の人が出来ることとは、

”「省察をサポートする」”

ことを始めとした
”サポート”なのでしょう。

■一人で向き合えない、
自分のことは自分で見えない。

そんな時に、

・本人自身が経験したことを題材に(=学習者の経験)

・本人自身がどうなりたいのか考える機会を与え(=学習者のニーズ)

・本人が振り返ることを助ける(=学習者の省察)

こと。

そうすることで、

本人が、本人自身の力で成長し続ける、
自らを変革することを

結果として後押しできるのでしょう。

■「人を変えよう」とするのではない。

あくまでも、

「変わる」ことに繋がる機会、
ネタ、手法を提供すること。

私達にできることは、
環境を整えることです。

人はゆくゆく誰かを育て
伝えていくステージがやってくるもの。

ゆえにこのことを忘れず、
「支援者」でいたいものだ…

私自身、教育に関わるものとして

「学習者主体」のスタンスを
改めて大切にしたい、

そんなことを思った次第です。

ご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

改革は内部から成るもので、
外部からもたらされるものではない。

エドワード・ギボン(イギリスの歴史学者/1729-1796)

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