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2771号 2021年9月22日

「フィード・フォワード面談」~部下の強みを引き出し、ポジティブな行動を導く手法~

(本日のお話 2853字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は5件のコーチング。
また3件のアポイント。
夜は大学院の打ち合わせでした。



さて、本日のお話です。

今日は、マネジメントに関わる、
一つの情報をお伝えさせていただければと思います。

”部下が持つ強みや能力を意識させ、
ポジティブな行動変容を導く”

とも言われる面談手法を、
論文からご紹介させていただきます。

それでは、早速まいりましょう!

タイトルは、

【「フィードフォワード面談」~部下の強みを引き出し、ポジティブな行動を導く手法~】

それでは、どうぞ。

■ヘブライ大学の
エイブラハム・クルーガーと
ディナ・ニールが、

『フィードフォワード面談』

なる面談手法を提唱しました。

この手法は、

1)上司と部下の双方にとって
新しい情報をもたらし、

2)従業員のニーズと組織の実践の整合性を高め

3)自分と相手に対して、より肯定的な気持ちになり
人間関係が改善される

ことを目的としている手法だそう。

そして、これらの活動は実際に

・業績評価面談
・選考面接

等に、プラスの影響を
与えていることがわかりました。

■では、この

『フィードフォワード面談』、

一体どのようなものでしょうか?

この手法を理解するためには、1つ、

”アプリシエイティブ・インクワイアリー(価値を認める探求)”
(以下、「AI」)

という考え方を知る必要があります。

「AI」の基本的な考え方は、

”悪いところを直すことに集中するのではなく、
うまくいっていることを中心に組織を構築すること”

です。

ポジティブな視点を持って
同僚にも、部下にも、上司にも向き合うことで、
組織の能力を引き出すという、

「ポジティブ心理学」の考え方をベースとしている
組織開発の手法でもあります。

※ちなみに、AIについて
より詳しく知りたい方はこちら
↓↓
『米国人エグゼクティブから学んだポジティブ・リーダーシップ -やる気を引き出すAI-』
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9237/

■そして今回のご紹介の

『フィードフォワード面談』

はこの「AI」を、
基本的な考えとした手法なのです。

■では、具体的に、

フィードフォワード面談では
何を、どのように行うのでしょうか?

まとめると、
以下のステップとなります。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<フィードフォワード面談の進め方>

【ステップ1 - 成功体験を思い出させる】

質問1)

「仕事での経験で、最高に充実していて、流れに乗っていて、
自分の行動の結果が明らかになる前から満足していたという話を聞かせてもらえませんか?」

※{ポイント}出来事の要約や一般論(「普段から~を楽しんでいる」など)ではなく、
具体的なストーリー(時間、空間、行動などの具体的な内容)を聞き出すようにします。

質問2)

「同じようなプロセスをもう一度体験したいと思いますか?」

※{ポイント}インタビュー対象者が「YES」と答えた場合、次の質問に進みます。
そのストーリーには、価値のある情報が含まれている可能性が高く、
探求する価値があるためです。

質問3)

「この話の最高の瞬間は何でしたか?その時、あなたは何を考えましたか?」
また、その時、あなたはどう感じましたか? (あなたの感情的、生理的な反応を含めて)」

※{ポイント}インタビュイーがポジティブな感情を述べた場合は、
その感情を反映させて次に進みます。(例:嬉しかったのですね、等)
しかし、ネガティブな感情や複雑な感情を語った場合は、
別の話を聞き、「質問1」からやり直してください。

【ステップ2 - その成功の状況や条件を明らかにする】

質問1)

「あなたがしたこと、あなたの能力、あなたの強みなど、
あなたの中にあった条件は何ですか?」

質問2)

「この話を可能にした他者の行動は何でしょうか?
また、組織によって促進された条件(物理的、時間的にも)は何でしたか?」

※{ポイント}その人の最高のパフォーマンスを引き出すための条件を聞きます。
その人なりの成功の条件を引き出すために、できるだけ多くの多様な条件を明らかにすることが大事です。

質問1)では「自分の成功の条件」、
質問2)では「他者、組織における条件」を認識する意図があります。

【ステップ3 - これからの仕事の中に、その状況や条件を取り込むことを促す】

質問1)

「あなたが今述べた条件は、
「仕事での幸せ」「最高のパフォーマンス」「優れたリーダーシップ」など、
ストーリーの中で重要な成果を達成するための、あなた自身の条件のようです」

「もしそうであれば、あなたの現在の行動、優先事項、
近い将来(例えば次の四半期)の計画を思い浮かべ、
それがどの程度まで組み入れられているかを考えてみてください」。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

要約すると、

【ステップ1 - 成功体験を思い出させる】
【ステップ2 - その成功の状況や条件を明らかにする】
【ステップ3 - これからの仕事の中に、その状況や条件を取り込むことを促す】

の3ステップがポイントです。

■上記のプロセスを行うことで、

『1,ポジティブな感情の活性化』

『2,絆とコミュニケーションを育む』

『3,自分の中のイノベーションに火をつける』

『4,欠点を知るための心理的安全性の確保』

などが起こるとされています。

■例えば、

『1,ポジティブな感情の活性化』でいえば、

ポジティブな感情は、

思考を広げ、新しい情報への開放性、
協力への意欲、創造性を高め(Fredrickson, 2001)、
同時に対立を減らすことが知られています(Barsade, 2002)。

そして、「フィードフォワード面談」は
ポジティブな感情を促すことがわかりました。



また、

『2,絆とコミュニケーションを育む』

では

上司と部下がお互いのことを知っている場合、
面接がポジティブなものになることで、
両者の関係が改善・深化することが多いとされています。

■あるいは、

『3,自分の中のイノベーションに火をつける』

ということもそう。

フィードフォワード面談では、
自分の中に眠る「自己を最高に表現する状態」
「眠っていたけれども重要な声(エピソード記憶)」を
呼び覚ます問いになっています。

その本人にとっての最高の瞬間、エピソードを呼び覚まし、
主役にすることで、他の声や対立する声も回答を更新しなければならず、
新たな内面の対話が始まり、自己の中に革新が生まれる、

とされています。

最後に、

『4,欠点を知るための心理的安全性の確保』

ですが、

ポジティブなことに焦点を当て、
インタビュー対象者の話に耳を傾けることで、

多くの場合、不安が軽減され、
インタビュー対象者は自分自身を肯定的に振り返ることを楽しむことができ、
(Roberts, Dutton, Spreitzer, Heaphy, & Quinn, 2005)

これは、自分の社会的地位を肯定し、
心理的な安全性を構築するのに役立つ、

とされています。

■、、、ということで、

”部下が持つ強みや能力を意識させ、
ポジティブな行動変容を導く手法”

として、ご参考になれば幸いです。

※本日の内容は、以下論文より、
ご紹介させていただきました。

「The feedforward interview」Avraham N. Kluger ⁎, Dina Nir
School of Business Administration, The Hebrew University

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

人に自信を持たせることが、
わたしにできる何より重要なことだ。
自信さえ持てば、人は行動を起こすからである。

ジャック・ウェルチ

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