今週の一冊『海をあげる』
(本日のお話 1862字/読了時間3分半)
■こんにちは。紀藤です。
*
先日は土曜日に大学院がなかったので、
家族で近くの公園にいき、シートをひいて
本を読んだり、芝生で子供を遊ばせたりしておりました。
こういった時間、大事だなあ、
としみじみ思った次第。
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さて、毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
早速参りたいと思います!
今週の一冊は、
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『海をあげる』
上間陽子(著)
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です。
■何気なく開いたSNSで
面白かったとお勧めされていました。
何気なく手にとったところ、
「Yahooニュース!本屋大賞2021
ノンフィクション本大賞受賞」
という冠があり、
何気なく手にとって見たのが、
今回の一冊です。
■ただ、正直なところ、
メルマガではなかなか
コメントを書きづらい、、、と
思ってしまいました。
というのも、
著者の人生を捧げて、
社会の問題と自らを重ねて、
その中での弱さや脆さも含めて
見事な筆致でその怒りや絶望、
葛藤なども含めて書かれた本について
良かった点、印象に残った点のように、
批評するような言葉を記すことは、
どう転んでも稚拙な表現にしか
なりえないと感じてしまったから、
なのかもしれません。
静かなのに、
迫力を感じる言葉と、
著者の真っ直ぐで
ずるさがない言葉たちに、
自分を問われたように、
私は感じました。
■さて、こちらの本ですが、
沖縄にて、幼い娘と生活をしつつ、
琉球大学教育学研究科の教授であり、
沖縄で未成年の少女たちの支援・調査に関わる中で、
沖縄の性暴力に関しても
多くの著作を書かれている、
著者の上間陽子さんの経験から描かれる
エッセイ集です。
殆どの方が耳にされたことがあるであろう、
・沖縄普天間基地の問題
・辺野古の埋め立て問題
・性暴力の問題
・それにまつわる家族や
共同体のあり方
について、
当事者からのインタビューを重ね
たしかに起こっている現実を
世の中に伝える活動をしています。
そして、問題から目をそむけないように
ご自身も爆音が響く普天間基地のそばに住み、
幼い娘と生活をされています。
■上記の問題も、
新聞記事のようニュースのように
取り上げられている時は、
文字情報のように、
脳内を素通りしてしまう感覚が、
時にしてしまいます。
しかし、今回のエッセイ集では、
何気ない母娘の幸せな日常を
覗き見をするような興味深さの中に、
確かに紛れ込んでいる
上記の問題に関する悲しさ・怒りを
感じさせられます。
それは、著者が
色彩豊かに描き出す言葉の力を持ち
それを生み出す感性を通じて、
私達にその感覚の一端を
疑似体験させてくれるからこそ、
その問題が確かに”そこにあるもの”として
少しだけ感じさせてくれるのでした。
■では、どうすればよいのか、、、
というと何も答えはわからないのですが、
知らないものとして
無関心でいることは恥ずかしいことにように感じましたし、
そのような世間の問題の多くについて
未知でいる自分も社会の担い手の1員として、
どうなのだろうか、
と私は思いました。
■読んでみて
・人を信じること、
・自分の信念に従って生きること
・問題から目を背けない強さ、
・より大きなものを見るあり方、
など、
自分のあこがれや、
そう至っていない自分の未熟さを含めて、
考えさせられた次第です。
きっと読まれた方、一人ひとりに
違った感動や気づきがあるかと思います。
(以下、著書の紹介です)
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「半分つぶされた虫のように、地面の上をのたうちまわるような打撃をうけた人々には、
自分の身に起ったことを表現する言葉がない」
――シモーヌ・ヴェイユ 「神への愛と不幸」(渡辺秀=訳)より
着替えを済ませた娘は私のお布団に移ってきて、「まだ夜? 朝来た?」と尋ねてくる。
「まだ真夜中だから眠ってね。かーちゃん、今日は辺野古に行く」と言うと、
「風花も一緒に行く」と娘が言う。
「今日は、海に土や砂をいれる日だから、みんなとっても怒っているし、
ケーサツも怖いかもしれない」と言うと、娘はあっさり、「じゃあ、保育園に行く」と言う。
暗闇のなかで、娘は私に「海に土をいれたら、魚は死む?ヤドカリは死む?」と尋ねてくる。
「そう、みんな死ぬよ。だから今日はケーサツも怖いかもしれない」
娘の髪をなでながら、ついに一二月一四日が来てしまったと目を閉じる。
(「アリエルの王国」より)
私はたぶん朝をはじめる前に、
どこかで一度、泣いておけばよかったのだ――。
沖縄の生活を、幼い娘のかたわらで、強く、静かに描いた傑作!
【目次】
美味しいごはん
ふたりの花泥棒
きれいな水
ひとりで生きる
波の音やら海の音
優しいひと
三月の子ども
私の花
何も響かない
空を駆ける
アリエルの王国
海をあげる
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詳しくは、ぜひ読んでみてください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<今週の一冊>
『海をあげる』
上間陽子(著)
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