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3465号 2023年8月19日

これは面白い…!「強みと年収の関係」を調べた論文がありました

(本日のお話 3775字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は3件のアポイント。
その他、8kmのランニングなど。



さて、本日のお話です。

今日のお話は「強みと年収の関係」について
ある論文が紹介されていました。

この内容がなかなか面白く、
ムフフとしながら(?)読み進めていました。

今日はこの論文の内容について
皆様に学びのおすそわけをさせていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【これは面白い…!「強みと年収の関係」を調べた論文がありました】

それでは、どうぞ。

■「性格的強み(Character Strengths)」

と呼ばれるものがあり、
代表的な強みを測定する尺度として

『VIA-IS(VIA)』
『クリフトン・ストレングス・ファインダー(CSF)』
『Realize2(REA)』

の3つが知られています。

※詳しくはこちら↓↓
『あなたはどれが当てはまる? 強みを表現するキーワード「118選」』
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4572619/

■「強み」に関してはこれまでも

ポジティブ心理学の見地や、組織行動の見地から、
様々な研究がなされています。

たとえば、「強みを使う」ことによって、

・職場において高いパフォーマンスにつながる、
・レジリエンスが高まる
・自己効力感が高まる

などがわかっています。

■しかし、
ここで気になることがあります。

社会人として活躍する要素の一つに
「強み」は含まれるようですが、

ぶっちゃけ

”「強み」と「個人の年収」は相関があるのか?”

という疑問です。
(みんな気になるお金の話・・・ですね)

このテーマについて

社会人213名に対してアンケート調査を行い

・強みを発揮している人は年収が高いのか?
・どんな強みを発揮している人が、年収が高いのか?
・また男女で違いはあるのか?

などについて分析した結果をまとめた
論文がございました。

■ということで以下、
そちらの論文についてご内容のまとめと
共有をさせていただきます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【論文『性格特性的強みと年収,職務満足度,ワーク・エンゲージメントとの関連
-キャリア教育で育成すべき能力とは何か-』  高橋誠、森本哲介(2022) まとめ】

<研究の背景>

・性格特性的強み(CS)が
社会人として活躍するための能力との関連については示唆された。
しかし、給与が高い者や、仕事に満足度や充実感を感じている者が、
どのようなCSを保有しているかは検討されていない。

・性格特性的強み(CS)と職務満足や給与との繋がりを検討することは
どのような側面をキャリア教育で育てるかを考える上でも有益である。

**

<研究の目的>

・既存の性格特性的強み(CS)尺度と個人の年収、
職業的な満足感やエンゲージメントとの関連について検討する

**

<調査方法>

◯対象:日本における社会人213名(平均年齢44歳、男性142名、女性71名)
に対するインターネット調査

◯使用尺度:
以下の4つの使用尺度を用いて、各相関を調べる。

1)性格特性的な強み(CS):
・「VIA-IS(VIA)」「クリフトン・ストレングス・ファインダー(CSF)」
「Realize2(REA)」の代表的な3つの尺度を用いた。

・合計118項目のキーワードと簡単な説明を記載し、回答者に
「まったく当てはまらない(1点)~非常にあてはまる(8点)」で答えてもらう

・また「日本文化特有の性格特性的強み」もあると考え、
オンライン調査と聞き取り調査で36項目を抽出。同様に回答をしてもらう
(例:平均主義、気配り、八方美人、ヨイショ、清濁飲み、平身低頭、お節介など)
合計得点を算出する

2)年収:
・年収330万円以下
・年収340万円~695万円
・年収695万円超 の3分類

3)職務満足度
・以下6項目で、1:全く当てはまらない~5:非常に当てはまるで回答する。
「仕事について最大のパフォーマンスを発揮できている」
「私の仕事は周囲から 評価されている」
「今の仕事に不満はない」
「仕事仲間との関係は良好だ」
「仕事に行くことはゆううつだ(逆転項目)」
「できればいまの仕事を辞めて別のところに行きたい(逆転項目)」

4)ワーク・エンゲージメント
・ユトレヒト・ワークエンゲージメントの短縮版9項目を活用

**

<結果>
調査結果から、以下のような結果がわかった。

1)「強み」と「職務満足度・ワーク・エンゲージメント」には、中程度以上の正の相関があった

・「強みを活用している」と思っている人のほうが
「職務満足度とワーク・エンゲージメント」が高い

2)「強み」と「年収」は正の相関があった

*{男性の、強みと年収の特徴}

・年収が高い男性は、強み尺度(CSF、REA、VIA)で「当てはまる」と答えている数が多い

・年収との相関がある尺度の順は、
クリフトンストレングス(35%:12個)→ Realize2(30%:18個)→VIA(12.5%:3個)だった。
(「日本文化特有の強み尺度(JCS)は年収との相関なし)

・以下の強み尺度は、年収への正の相関があった。
ークリフトンストレングス(CSF)= 未来志向、学習欲、目標志向、個別化、親密性、コミュニケーション、調和性、競争正、最上志向、責任感、共感性、信念
ーRealize2(REA)= 説明者、勇気、関係深化力、思いやり、感謝、調整力、フィードバック、つなぐ力、変化者、冒険、時間の有効活用、アクション、共感、立ち直り、感情的な認識、成功要因、順守
ーVIAーIS(VIA)= チームワーク、リーダーシップ、楽観性

*{女性の、強みと年収の特徴}

・年収が高い女性は、日本文化特有の強み尺度(JCS)で「当てはまる」と答えている人が多い

・年収との相関がある尺度の順は、
日本特有の強み尺度(36%:13個)→VIA(33%:8個)→クリフトンストレングス(5個:14.7%)→Realise2(15%:9個)だった。

・以下の強み尺度は、年収への正の相関があった。
ー日本文化特有の強み尺度(JCS)= フットワーク、関係把握、気配り、お調子者、忖度、平均主義、器用貧乏、反骨精神、自重、人情、八方美人、心配り、真面目
ーVIAーIS(VIA)= チームワーク、親切心、公平さ、自立心、熱意、柔軟性、リーダーシップ、楽観性
ークリフトンストレングス(CSF)= 回復志向、内省、慎重さ、規律性、個別化
ーRealize2(REA)= ミッション、ラポート、感謝、時間の有効活用、全体視、創造性、平等、好奇心

3)年収330万円以下に比べて、年収695万円超のほうが多く持っている「強み」

*クリフトンストレングス(CSF):
信念・コミュニケーション・競争性・目標志向・最上志向・ポジティブ

*Realize2(REA):
変化者・楽観主義・ラポート・回復力・全体視・時間の有効活用

・VIAーIS(VIA)
熱意・リーダーシップ・自立心・審美心

<まとめと今後の課題>

・男女ともに多くの性格特性的強み(CS)は
職務満足度やワーク・エンゲージメントに正の相関があることが示された。

よって、どのような性格特性的強み(CS)を育成しても、
仕事への満足度と、積極的に従事する可能性を高めることがわかった。

・男性は、競争的で業務を円滑化する強みが年収と関連し、
女性は、対人関係を円滑化するような日本的な強みが年収と関連していた。

・男性は欧米的な業務中心の強みを発揮しながら年収を得ている一方
女性は令和の時代においても旧来の日本文化と変わらない役回りを演じることで収入を得ているという
職場内の性役割の格差が浮き彫りとなる結果であった。

・このような現状を鑑みた上で
今後の女性のキャリア教育の中で、どのような性格特性的強み(CS)を育成することが
経済的な成功を得るために必要であるか議論を重ねる必要があるだろう

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

■いやはや、実に興味深いです。

結論

「強みと年収の相関はある」
という結果であったことはもとより、

「年収が比較的高い群が、
どんな種類の強みを使っているのか」

についても、
興味深い内容だと感じます。

(また日本独特の強みとして抽出されたものが
「清濁併せ」「ヨイショ」などであったのも複雑な気もしつつ、
なんだかわかる気がしました)

■思ったことは、

5つだけ強みを使っているわけではなく、
複数の強みを使っているもの。

強み尺度のアセスメントですと
その回答結果から

「上位10に注目しましょう」

と示すことが多いです。
(VIAもクリフトンストレングスの
強みのワークショップもそのように促します)

しかし、
「どの強みを使っていますか?」という問いの際

・118の強みリストうち、「10コ」当てはまるという人と
・118の強みリストのうち、「50コ」当てはまるという人

自己認識にも違いがあり、
かつそれが年収との相関があるというのは
興味深いですし、いくつもの強みを発揮の自覚を
持ちうるものと感じます。

■そう考えると、強みを活用する上でも、

「自分が持っている強みの質を高める」
ことも大事である一方、

『活用できる強みの種類を増やす』

ことも、同じように
大事なことなのかもしれないな、

そんな事をも考えさせられました。

ゲームの武器を集めるかの如く、
「この強みも、あの強みも使える」と言えるように

1)強みを表す言葉(=役に立つ武器)を仕入れる
2)自分が育てられそうな強みを集め、深める

こんなイメージで強みを育てることが
できそうだな、とも思った次第です。

そして、最後のまとめの
文化的な背景に基づいた求められる強み、、、
(男女の性差など)

あるいは

自尊感情や一般的な自己効力感(やればできる感)にも
関わっているとも想像されますので

まだまだ深く、探求する必要があるテーマだな…
そんな事を考えさせられた論文でございました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

他人の短所を見れば憂鬱になり、
他人の長所を見れば人生が楽しくなる。

アンドリュー・カーネギー
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