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今週の一冊『現実はいつも対話から生まれる』

今週の一冊『現実はいつも対話から生まれる』

2698号 2021年7月11日

(本日のお話 2789字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は引き続き、茨城にて。

午前ワークショップに参加、午後からは大学院。
その他2件のアポイントでした。

気持ち的にはワーケーション。
リモートワークありがたし。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する、
今週の一冊のコーナー。

今週の一冊は、

========================

『現実はいつも対話から生まれる』
ケネス・J・ガーゲン(著)



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です。

■来ました。

読みながら、ものすごくテンションが
上がってしまいました。

今、「対話型組織開発」として、
”対話の大切さ”を日頃からお伝えしていますが、

「なぜ対話が重要なのか?」について、
その理由を明確に語ることに、
難しさを覚えていました。

■そんな中、今回の本は
「社会構成主義」という立場から、

「対話がどのように
現実を作り上げていくのか?」

という対話の大切さを、
理論的に伝えてくれる本です。

哲学的な思想を含みますが、
概念の入門書という立ち位置。

読みながら、

「そうそう!そういうことなのだ」

と膝を打つような想いになり、
霧が晴れたような気がしました。

自らの言語化できなかった思考を
言葉にしてくれた文章に出会い、
興奮をひとり止められない141ページの旅路でした。

■、、、と冒頭から、やや
興奮気味に伝えてしまいましたが、

そもそも

「社会構成主義」

とは一体何なのでしょう?

定義としては、
こう説明されています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「社会構成主義」とは

・「現実」はそれとして存在するのではなく、
人々の頭の中で作り上げられるという考え方

・人は対話を通じて意味を作っていく
つまり「言葉が世界を創造する」としている

※本文より抜粋、編集
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とのこと。

■さて、一体どういうことでしょう?

これを考えるには、

常識的な考え方とされているものと
対比をしてみるとよいです。

”常識的な考え”とは

「世界は私たちの目に見えて、
理解できるものである」

というもの。

例えば、木々、ビル、車、女性、男性、犬や猫などは、
目に見えて”存在している”ものでしょう。

ごく当たり前の話。

、、、しかし、です。

社会構成主義の考えは、
この考えに異を唱えるのです。

木々、ビル、車、女性、男性、犬や猫も、
私達が「同意」しない限り、
そこには存在をしない、という立場をとる(!)のです。

■…は?

何いってるの?
どう見ても存在してるでしょ?

と反論が起こりそう。

はい、わかります。
そうですよね。。

確かに、自然科学の上では、
そこに物理的な原子の集まりとして
存在をしている、と言えるかもしれませn。

ただし、こういう考え方をしたらどうでしょうか。

例えば、お母さんが
1歳の太郎くんを散歩に連れて行ったとします。

彼の視線には、

木々もビルも車も、
”何ら興味ないもの”として
目の前を通り過ぎていきます。

つまり、太郎君(1歳)にとっては、
意味がないもの、として世界が見えている、
としたら。

眼球に届いているものが
お母さんと太郎君で同じだったとしても、

”それぞれにとっての意味が違う”

わけです。

■太郎君にとって、
「ビルは意味ないもの」で

お母さんにとって
「ビルは意味があるもの」。

この2つの現実があります。

もし、世界中の人が
太郎君のような視点(ビルってなに?木々ってなに?)
だったとしたら、

お母さんの
”ビルは意味があるもの”という意見は
非主流派となり、合意されず、
「は?ビル?なにいっちゃってんの?」

とされるかもしれません。

つまり、

”「現実」はそれとして存在するのではなく、
合意され、人々の頭の中で作り上げられる”

のです。

(何となく、伝わりますでしょうか)

■例えば、こんな例もあります。

少し話が飛ぶようですが、
私(紀藤)の話で先日、義父と話をしていて
こんな会話がありました。

「俺(義父)、75歳で”後期高齢者”になったんだけど
この呼び方、なんとかならんものかねえ。

高齢者で、更に後期、とか言われると、
もう本当に終わりだなって、感じするよ」

といっていましたが、
これも社会構成主義の考え方では、

「言葉が世界を創造する」

の例かもしれません。

言葉によって「後期高齢者=終りが近い」
という合意が創られる、、、なんて考えも、
無きにしもあらず、、、と思うわけです。

健康度は年齢と必ずしも
比例していなくても、

”あなたは後期高齢者だから”

という物語が社会関係の上で付与され、
主流派で合意されると「そんな気がしてくる」のです。

”言葉により現実が創られる”のです。

■もう一つ挙げましょう。
(しつこいようですが、、、)

社会構成主義の観点からすると
「うつ病」の存在も一考に値します。

最近、うつ病や注意欠陥障害と
診断される人が増えていますが、

20世紀になるまでは、
うつ病や注意欠陥障害と呼ばれる
精神疾患は存在しませんでした。

1900年には精神疾患を特定する用語は
一握りしかなかったものの、

2000年までに精神衛生の専門家が
400種類以上の精神疾患の形を「発見」しました。

社会構成主義の考えとしては

ある行動を「病気」であると
”構成する(合意する)”ことで立ち現れる、

とされます。

それを悲しい、憂鬱、
スランプであることを
「病気である」とするのか、

他者からの支援を必要とする
「時間や機会必要な人」とするのか、

で、現実は変わります。

そして、その後の行動も、
抗うつ剤の投与なのか、あるいは
親しい人の支えなのか、、、

も変わるでしょう。

私は専門家ではないのですが、

どちらの立場も、
社会構成主義の観点からは

”「現実」はそれとして存在するのではなく、
人々の頭の中で作り上げられるという考え方”

となるわけです。

(あくまでも
「社会構成主義者の観点から」であることを
強調しておきます)

■そして、この考え方は、
組織開発などにも応用されます。

例えば、

「否定的な側面ばかり、
口に出している組織」

は、否定的な側面を言葉にするがゆえに、
”それ”が現実になっていきます。

逆に

「ポジティブな側面に
光を当てている組織」

があったとして、
実は事実として起こっていることが
前者の組織と同じ状況だったとしても

口に出すことでポジティブな側面が照らし出され
”それ”が現実になる、といえます。

そんな視点から

「アプリシエイティブ・インクワイアリ」
(うまくいっていることや成功要因などの価値をみつけ、
ポジティブに解決するプロセスを通じて、人を育て、
組織の風土改革を実現する組織開発の手法)

という技法が創られています。

■だからこそ、

「言葉にして現実を創っていく」

ことが重要でしょうし、

・ビジョンを語る、
・ありたい姿を語る、
・ポジティブな視点にフォーカスする
・過去の遺恨がある物語を、皆で新しい物語に書き換える、

などを行うことが、

組織の未来を作る、とも
言えるのではないでしょう。

(まあ、組織の場合、
そんなに美しくはいかないことも
ままありますが、、、)

■と、長々とお伝えしてしまいましたが、

言葉の力を感じさせられる、
非常にパワフルな一冊。

特に組織開発やコーチング、
マネジメントなど、組織を作る人には
是非オススメの一冊です。

詳しくは、ぜひお読み頂き、
「対話の可能性」を
感じていただければと思います。

おすすめでございます。
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<今週の一冊>

『現実はいつも対話から生まれる』
ケネス・J・ガーゲン(著)


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