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3534号 2023年10月28日

「強みの介入」が「個人の成長」にどのような影響を与えるのか? ―論文まとめー

(本日のお話 3567字/読了時間4分)
 
■こんにちは。紀藤です。

昨日金曜日はとあるメーカー様のマネジャーの皆さまへ
ストレングス・ファインダー研修の実施でした。

東京→岐阜へ、新幹線から乗り継ぎ
岐阜の山中のキャンプ場での実施。

普段と違った感じがして、開放感がある時間でした。
(皆様、ご参加いただき、ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

本日も「強み」に関する論文について、
皆様にご紹介をさせていただければと思います。

これもまたなかなか興味深い論文で
大変勉強になりました。

それでは早速参りましょう!

タイトルは



【「強みの介入」が「個人の成長」にどのような影響を与えるのか? ―論文まとめー】



それでは、どうぞ。



■本日ご紹介する論文は、

オランダのディルブルク大学の研究で

『個人の成長を強化する:”個人的成長の自発性”に対する強み介入の効果』

原題:
Woerkom, Marianne van, and Maria Christina Meyers.(2019).
”Strengthening Personal Growth: The Effects of a Strengths Intervention on Personal Growth Initiative.”
Journal of Occupational and Organizational Psychology 92 (1): 98–121.

というものです。



■どういう論文か?

ざっくりお伝えすると、
以下のような内容が書かれています。

***

<研究の背景>

・「個人の成長」は、個人の中心的なニーズであるだけでなく、
 組織の成功のための重要な要件でもある。
 
・それにもかかわらず、従業員の個人的成長を促すことを目的とした職場介入はまだ少ない

<研究の内容>

・本研究では、「従業員の強みの特定・開発、・活用」を目的とした介入が、
 「個人的成長の自発性(Personal Growth Initiative:PGI)」を刺激する有効性を調査した

・84名の教育専門家をサンプルとし、
 強み介入群と待機リスト対照群に振り分け 、フィールド実験を行った

<研究の結果>

・1ヶ月の追跡調査において、介入は「一般的自己効力感(General Self Efficacy:GSE)に直接的効果をもたらし、
 「個人的成長の自発性(PGI)」には間接的効果をもたらすことがわかった。
 
・さらに、介入はGSEの初期レベルが低~中程度の参加者に特に有効であることがわかった

・強みの介入は、特に自分の能力に自信がない従業員に提供される場合、
 従業員の自己主導的な学習を目指す組織にとって、簡潔で効果的なツールを提供する可能性があると結論付けた。
 
***

という論文です。



■なるほど、たしかに。

”「個人の成長」は、
 本人にはもちろんのこと、
 組織にとっても重要な要素である”
 
言われてみたら至極当然の話のようですが、
この「個人の成長」なるものに焦点を当てた研究というのが、
意外に見当たらない、、、

じゃあ、その「個人の成長」と「強みの介入」を
追求してみようじゃあないか!

という研究とのことで、実に興味深いです。



■今回の論文でのキーワードの一つが

「個人の成長」です。

この”個人の成長”なるものを
どのように測定するのか?

このことに際して、
Robitschekらの研究で提唱されている


『個人的成長の自発性(Personal Growth Initiative:PGI)』


なるものを用いています。

曰く、

”PGTとは、自己改善の為の一連のスキルであり、
 以下4つのスキルが含まれる”

とします。4つのスキルとは
 
<認知的スキル>
1,変化への準備
 (自己の成長に関連する肯定的な信念、態度、価値観を反映したもの。
  これによって、個人が成長したい領域を特定できるようになる)
   
2,計画性
 (成長を達成するための、具体的かつ現実的な計画を策定する能力のこと)

<行動的スキル>
3,資源の活用
 (成長志向の目標を促進する資源を利用すること)
 
4,意図的行動
 (自己成長のために作成した行動計画を意図的に実行すること)
  
とされています。

一方、この

”「個人的成長の自発性(PGI)」を
 どのように開発できるかについては殆ど知られていない”
 
と本論文で述べています。


よって、
ポジティブ心理学の分野で語られている

「個人の強みを特定し、それを活用することが、
 さらなる発展への道筋となる」
 
という考えを前提として、

”強みの介入”が”個人の成長”に
どのように影響するのか?

を研究してみよう、とのこと。



■これまでの研究で知られていることには、

”強みの介入が「自己効力感(Self Efficacy)」に直接的な効果をもたらす”
(Toback, Graham-Benrmann& Patel2016)

ことがあります。


ちなみに、「自己効力感」とは、

”ある行動を自分は遂行することができると
 自分の可能性を認識していること”
(Bandura,1997)

と自己効力感で有名なバンデューラは述べています。

それを、Robitschekは発展させ

”一般自己効力感(GSE)とは
 積極的にかつ意図的に自己を変化させるための
 一連の認知的スキルと行動的スキルを指す”
(Robitschek,2012)

としました。


これらのことを総合してこの論文では、
以下のような研究の仮説モデルを考えています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「強みの介入」→「一般的自己効力感(GSE)」→「個人的成長の自発性(PGI)」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのこと。



■そして、

「研究方法」
「介入の方法(強み活用の介入)」
「研究結果」

については以下のような内容でした。


***


<研究方法>

・研究対象者は108名の参加者(実験群47名、対照群61名)。
 参加者は5つの小学校に勤務する教育者、管理職、ティーチングアシスタント。
 

・介入開始の1ヶ月前のベースラインアンケート(T1)
 介入終了後の1ヶ月間のフォローアップアンケート(T2)を取る
 
・アンケート(調査票)の内容は、以下の通り
 ー「年齢、性別、教育レベル、組織在籍期間」
 ー「自己成長への取り組み」(PGIS=2オランダ語版)
 ー「一般的自己効力感」
 ー「強みの認識」「強みの活用」
 
**
 
<介入の方法(強み活用の介入)>

◯ワークショップの構成について
・2人の専門トレーナーによる2つのワークショップで構成された。

・ワークショップの設計は、Quinlan(2012)らによる研究を参考にした。
 「強みの特定・開発・活用」を目指すトレーニングプロセスとした。


◯ワークショップの進め方について
・ストレングス・ファインダー2(TOP5)を活用した。

{1回目の介入}
・1回目の介入では、職場で活力を感じた経験について説明し、
 その経験の原因となった個人の強みを特定するフィードフォワード面談を行い
 自由形式のアプローチで強みを発見することに焦点を当てた。

・参加者のモチベーションを上げるために、
 トレーナーはなぜ多くの人が自分の強みを職場で活かせないのか、
 行かせない場合の否定的な結果を紹介した。

・研修内容の目標設定、実践が研究の効果を高めるため、
 一回目の研修の最後に、今後4週間のうちに自分の仕事の状況において
 個人の強みを活用するための個人的な計画を立てた。
(日常的な仕事でも、困難な仕事でもどちらでもよいとした)


{2回目の介入}
・2回目のワークショップの冒頭で、個人計画の実施結果について話し合った後、
 自分の仕事と個人の強みを一致させるための方法として、
 ジョブ・クラフティングという概念が紹介された。
 
・参加者は、「自分の多様な仕事のタスク」を特定するよう求められた
 (タスクに費やした時間、タスクが生み出すエネルギーや消費するエネルギー、
 組織にとってのタスクの重要性など)
 
・タスク分析に基づいて、参加者は自分の強みに沿って
 自分の仕事のどの要素を作りたいかを決めるように求められた。
 
**

<研究結果>
 
◯変化がなかったこと 

・介入は、「個人的成長の自発性(PGI)」には
 直接的な効果を示さなかった
 

◯変化があったこと

・介入は、「一般的自己効力感(GSE)」に影響を及ぼし、
 GSEは、「個人的成長の自発性(PGI)」と関連していた。
 
・また、介入前に一般的自己効力感が高レベルの群に比べて
 介入前に一般的自己効力感が低レベル、中レベルの群のほうが、
 介入後の自己効力感を高まっていた
 

◯示唆されること

・強みの介入とPGTの関係において、
 GSEがどの程度メカニズムとして機能するかを検討することができた
 
・また元々自己効力感が高い個人に対して、
 強みの介入は有意ではなかったという知見は、
 自己効力感が高い個人は、すでに自己成長を促進するために
 必要な物を持っているということを示しているのかもしれない
 
***

とのことでした。



■なるほど、実に興味深いです。

”自己効力感が低い人ほど、
 強みの介入によって自己効力感が高まりやすい”

このことは、

個人的な経験(私の)を
思い出した時に、

確かに20代そこそこの
自信がなかったときに受けた
ストレングス・ファインダーのインパクトは
大きかったなあ、、、と思い出されたことにも
繋がっているようにも思えました。


いずれにせよ、組織内で、
自己効力感を通じて、自己成長を促すための施策として
たいへん参考になる論文とも思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

マネジメントのほとんどがあらゆる資源のうち、人が最も活用されず
能力も開発されていないことを知っている。
だが、現実には、人のマネジメントに関するアプローチのほとんどが、
人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている。

ピーター・ドラッカー
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