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3569号 2023年12月2日

1000名に聞きました!「強みの活用」と「生産性・組織市民行動・職務満足度」の関連を調べた研究

(本日のお話 3855字/読了時間5分)

■こんにちは、紀藤です。

昨日は1件のコーチング。
また1件の打ち合わせでした。

最近は週末も休みがあまりなかったので
一部休みをいただき、妻と『ゴジラ-1.0』を観にいきました。
面白かったです。(思いがけず泣けてしまいました・・・!)

最新のCGで描かれるゴジラは迫力がすごく
熱戦の破壊力がとんでもなかったです。

ご興味ある方は、よろしければ。



さて、本日のお話です。

今日も引き続き、強み論文のご紹介をいたします。
内容は「職場での強み活用の研究」です。

ストレングスファイダー、VIAなどのアセスメントなどに代表される性格特性的強みが、ポジティブ感情、幸福度の向上、抑うつの抑制、自尊心の向上など「個人に役立つ」ことは示されてきました。

一方、現代生活における「職場への実際の効果(生産性など)」はほとんど研究されていないと、本論文では問題提起します。
(あってもイスラエルの85名を対象とした少数のサンプルしかなかったようです ※2017年当時)

その中で、強みの活用が仕事の成果へ影響を与えることを示したものが、本日の論文です。

ということで、早速みてまいりましょう。

タイトルは、

【1000名に聞きました!「強みの活用」と「生産性・組織市民行動・職務満足度」の関連を調べた研究】

それでは、どうぞ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<今回の論文>
『より良い自分(My Better Self):職場での強みの活用と、仕事の生産性・組織市民行動・満足度』
Lavy,Shiri, and Hadassah Littman-Ovadia(2017)
“My Better Self: Using Strengths at Work and Work Productivity, Organizational Citizenship Behavior, and Satisfaction.”
Journal of Career Development 44 (2): 95–109.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■論文のざっくりポイント

・本研究では、従業員が職場で強みを活用することと、生産性、組織市民行動(OCB)、職務満足度との関連を検討しました。

・ポジティブ感情の拡大構築理論に基づき、強みの活用がポジティブ感情、エンゲージメントを媒介し、生産性等の結果に影響するという仮説モデルを立てました。

・1000名のアンケート調査を行い、これらを検討したところ、職場での強みの活用は、生産性・組織市民行動(OCB)・職務満足度と関連しており、これらの関連は、ポジティブ感情やエンゲージメントによって媒介されていたことがわかりました。

という内容です。

一言でいえば、「強みの活用」は仕事で求められる様々な成果に関連している、というお話です。
私のような、強みを活用した研修などを届けているものにとっては実にありがたい研究結果・・・!
では具体的に、どのような内容なのでしょうか。



■「仕事における強み」に関する研究

まず本論文の前半では、これまでの「仕事における強み」について、どのような研究がされてきたのかを概観しています。
たとえば、こんな研究結果がこれまでは示されてきました。

強みの活用は、

・問題や困難への対処の有効性を高める(Macaskill&Denovan, 2013)

・仕事の意義や生産性の感覚と関連する(Littman-Ovadia& Lavy, 2016)

・特定の強み(熱意・希望・社会的知性)は仕事の満足度と強く関連している(Smith, 2011)

・特定の強み(自己調整・熱意・希望・愛・誠実さ・感謝)は仕事を天職と認識することに関連する(Smith, 2011)

などがわかりました。

しかし、「職場での強みの活用」が「主観的幸福感(ウェルビーイング)」や「ワークエンゲージメント」に及ぼす効果を検証する研究はあるものの、「実際の仕事機能(生産性や組織市民行動など)」に与える研究はほとんどされていない、とします(※2017論文発表時点)。

「生産性」は、職場の成果に直結するものであるのは言うまでもありませんし、「組織市民行動(OCB)」は、職場の他者を助けたり、組織の行事に参加したり、組織で自発的に役割を果たしたり、職場の不満に寛容であるなど、”組織における良き市民”としての行動です。
そのため、この組織市民行動は、従業員のパフォーマンスを予測する指標とされています。



■仮説

さて、これまでの仕事における強みの研究などから、本論文の研究者は以下のように考えました。

・「強みを活用」すると「ポジティブ感情」が高まる

・ポジティブ感情の拡大構築理論によると、「ポジティブ感情は人々の思考と行動のレパートリーを拡げる」

・「強みの活用」はポジティブ感情やエンゲージメントを高め、「生産性、組織市民行動、職務満足度」を高めるのではないか

ということで、上記を少しかちっと整理すると、以下のような仮説と理論モデルとなります。

<仮説>
仮説1:仕事における「強みの活用」は、「生産性、組織市民行動、職務満足度」と関連する。
仮説2:仕事における「強みの活用」が、生産性、組織市民行動、職務満足度に及ぼす影響は、(a)ポジティブ感情、(b)ワークエンゲージメントによって媒介される。


■研究のプロセス

以下、研究のプロセスとなります。

<研究の参加者>

合計1095名。
女性が888名、男性が207名と女性が多数で、約90%の方がフルタイムの雇用者でした。

「参加者の職種」は、教育職(23.8%)、 管理職(15.7%)、セラピー、カウンセリング(14.5%)、自由業(弁護士、会計士、エンジニアなど:9.1%)、行政や人事(7.7%)でした。

「参加者の居住大陸」は、北米(57.9%)、ヨーロッパ(17.2%)、オーストラリア(9.6%)、アジア(8.3%)、南米(4.7%)、アフリカ(2.5%)でした。
(強み診断の「VIA」のサイトを通じて、研究への参加者を募ったため、世界中からのサンプルとなりました)

<調査項目>

そして、以下の質問について回答をしてもらいました。

◯「強みの活用」(14項目)・Govindji and Linley(2007)のStrengths Use Scale
(例:私の仕事は、強みを生かす機会をたくさん与えてくれる)

◯「仕事の生産性」(7項目)・Williams and Anderson(1991)の役割内行動の尺度
(例:私は与えられた職務を適切に遂行する)

◯「組織市民行動」(16項目)・Lee and Allen'S(2012)を活用
(例:仕事または仕事以外の問題を抱えている他人 を助けるために時間を割いた)

◯「職務満足度」(5項目)・Andrews & Withey(1976)を用いて評価
(例:仕事についてどう感じているか)

◯「ワークエンゲージメント」(9項目)・Schaufeli, Bakker, & Salanova(2006)のユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度9項目バージョン
(例:仕事に熱中している)

◯「ポジティブ感情」(10項目)・ Watson, Clark, & Tellegen,(1988)のPositive and Negative Affect Scales (PANAS)の陽性尺度で評価。



■研究の結果

本研究の結果は、「仮説1、2ともに支持された」となりました。
具体的に、どのような内容だったのかを見ていきましょう。
<仮説1の結果>

仮説1:仕事における「強みの活用」は、生産性、組織市民行動、職務満足度と関連するですが、こちらは支持される結果となっています。
それぞれの項目の相関は、

・「強みの活用」と「生産性」:.32***
・「強みの活用」と「組織市民行動」:.32***
・「強みの活用」と「職務満足度」:.42***

となり、関連があることがわかりました。

<仮説2の結果>

次に、仮説2:仕事における「強みの活用」が、生産性、組織市民行動、職務満足度に及ぼす影響は(a)ポジティブ感情(b)ワーク・エンゲージメントによって媒介されるですが、こちらも支持される結果となりました。

「強みの活用」と「生産性」「組織市民行動」「職務満足度」各項目は、直接の相関よりももありますが、媒介した間接的な相関もあることがわかりました。



■まとめ

論文をまとめながら、「研究のバトン」が繋がれていく、ということを感じました。
この論文の中心には「ポジティブ感情」というものが位置していますが、このポジティブ感情の影響について、フレドリクソンさんが1998年に『ポジティブ感情の拡大構築理論』として提唱しています。
こうした研究などを元にして、続く研究者が、「職場への実際の成果(生産性や組織市民行動)」への関連を調べた内容となります。

ポジティブ心理学が2000年初頭に始まり、2010年代中盤から、そしてまたここ数年で職場での活用も、多くが明らかにされつつあります。
これまでの歴史と、最新の論文を行き来することで、こうした研究のバトンが繋がれていることを感じ、面白さと、そして現場に還元できるありがたさを感じました

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

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<本日の名言>

楽観主義は物事を達成へと導く信仰である。
希望、そして確信が無ければ、何事もなし得ることはできない。

— ヘレン・ケラー、作家、障害者権利擁護者
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