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3653号 2024年2月25日

今週の一冊『日本復帰50年 今・昔・未来 沖縄のこと考えてみませんか!』

(本日のお話 3452字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

一昨日から、沖縄の国際協力機関に所属する友人のお誘いで
「沖縄の歴史スタディツアー」なるものに参加をしています。

平和記念資料館や沖縄戦の話など、歴史や文化のスポットを巡る3日間の旅ですが、
たくさんのことを考えさせられます。

その中で、参加するに際して参考書としてに取った本が、今回ご紹介の一冊。

内容は、まさに「沖縄の社会の参考書」です。
私はこの書籍を通じて、だいぶ沖縄のことが理解できた気がしました。

ということで早速みてまいりましょう!

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<今日ご紹介の一冊>

『日本復帰50年 今・昔・未来 沖縄のこと考えてみませんか!』

新城 俊昭 (著), 編集工房 東洋企画 (編集)
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■沖縄の社会の授業の「資料集」

ふと思えば、小中学校のときは、社会や歴史は好きではありませんでした。歴史の教科書は文字ばかりで面白くない。ゆえに、歴史の資料集(絵とか写真がたくさんある)を眺めて授業の時間を潰していた記憶があります。(たぶん、私のような人も少なくないのでは)

しかしながら、大人になって、「沖縄の基地問題ってどういうことだろう?」「沖縄の歴史って、どんなものなのだろう?」「沖縄の文化はどのように生まれてきたのだろう?」、そうした興味の対象が広がった今、学ぼうとした時に、「沖縄の今・昔・未来を網羅的に理解することができる書籍」が今回ご紹介の一冊です。

内容は、「沖縄の”歴史と地理と政治の参考書」というイメージ。これを見れば、沖縄の過去から今に至った主要なことを全部わかります。

■考えるためには「出来事と言葉」を知ること

本書は「教科書感がかなりある一冊」です。なぜ、そう感じるかというと、”書籍全体を通して、Q&A方式で問題に対して答えるような形になっている”ためです。たとえば、「琉球・沖縄の歴史」については、こんな感じ。

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【問】琉球の国王は勝手に「王」を名乗っていたのではありません。中国の皇帝から認められて始めて、正式に琉球国王になることができていたのです。そのために中国から派遣される使節のことを、冊封使(さっぷうし)といいます。冊封使について、次の設問に答えてください。

(1)中国の招きで琉球が始めて明に朝貢したのは、いつのことでしょうか?
a、1372年  b、1401年 c,1507年

※答えは「a」
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こういう形式が、苦手と感じる方もいらっしゃるかもしれません(授業を彷彿させるため)。しかし、実際に問いに答える形で進めてみると、「沖縄を理解し、考えるために知るべき出来事や言葉」を手に入れることができると感じさせられます。

というのも、私達は「言葉」で思考し、物事を理解します。沖縄が歩んできた歴史や社会のことを表す「出来事とそれに由来する言葉」を多く手にいれなければ、沖縄のことを理解することも、そして考えること難しい、と感じるのです。

■「琉球」は、いつから・なぜそう呼ばれたか

たとえば、「琉球」という名について。沖縄がかつて琉球で合ったことは知られていますが、いつから、なぜゆえに琉球と呼ばれるようになったのか?はあまり知られていないように思います。

それを理解するためには、「朝貢(ちょうこう)」と「冊封(さっぷう)」という「出来事と言葉」を知る必要があります。それぞれの言葉の意味は以下の通りです。

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朝貢(ちょうこう):中国皇帝に貢物を収めて忠誠を誓うこと。
冊封(さっぷう):中国皇帝が朝貢国の首長に対し、王・候などの爵位を授けること
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琉球(現沖縄)は、古琉球時代(日本の室町時代)に、中国との交流を始めました。中国を皇帝とし、琉球が中国に対して貢物を捧げ、その代わりに王・侯の爵位を授けられるという出来事が朝貢と冊封です。

ちなみに中国(明)は、服属国(琉球)の領土や主権を侵したり、政治・宗教・干渉することはありませんでした。付け加えると、琉球が貢物(硫黄など)を捧げると、中国はその倍以上の”お土産”を提供してくれました。

また当時、琉球では自前で作れなかった船を30隻無償で貸与してくれたり、中国での貿易が可能になるなど、いわゆる”重税で搾取する”とは、程遠い関係であったようです。特に琉球は、日本への結節点として重要な拠点であったため、優遇されていたとのことです。

ゆえに、琉球王国としての自主自律は保たれているものの、1372年~1879年の500年にわたって、朝貢と冊封(合計23回)という中国を皇帝とみなす交流が続いていた事実があります

そして、なぜ・いつから琉球か?の話ですが、中国が沖縄のことを読んでいた呼称が『琉球』であったことが由来です。そこから、「琉球」と呼ばれるようになったわけです。(なぜ中国が琉球と呼ぶようになったかは「海に浮かぶ竜神の姿に見えたから」などの説がありますが確かではないそう)

そして、これが現在も、「沖縄はかつて中国であった」という中国の主張の一部を示すものであり、また中国が勢力圏を確保するための「第1列島線」へ繋がる政治的なカードに利用されています。これは「朝貢と冊封」という歴史と密接に繋がっています。

■沖縄を理解するための「全体地図」

沖縄のことを知るためには、”知っておくべき出来事や言葉”、が存在しています。そして、繰り返しとなりますが、それら沖縄の昔から今に至るまでの社会(歴史・地理・政治)の様々な出来事を抜けなく網羅しているのが、こちらの書籍です。

問いに答えていく中で、知らなかった出来事と言葉を手に入れていき、「沖縄を理解するための地図」をもらえる感覚になっていきます。

内容としては、以下のような構造になっています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<目次>
■第一部 琉球・沖縄の歴史と現在
1、琉球・沖縄の歴史について、知っておきたいこと
2,現在の沖縄県について、知っておきたいこと
3,沖縄の市町村について、知っておきたいこと
4、沖縄の重要な出来事・記念日・イベント・映画について、知っておきたいこと
5,沖縄戦について、知っておきたいこと
6,沖縄の基地問題について、知っておきたいこと
7,沖縄の自然について、知っておきたいこと
8,沖縄の観光について、知っておきたいこと
9,沖縄の食文化について、知っておきたいこと

■第二部 琉球・沖縄の文化と世界遺産
1,沖縄の世界遺産について、知っておきたいこと
2,琉球諸説について、知っておきたいこと
3,琉球芸能と伝統文化について知って置きたいこと
4,琉球・沖縄の歴史書・文学作品について、知っておきたいこと
5,琉球・沖縄の地名・人名について、知っておきたいこと
6,琉球・沖縄の人物について、知っておきたいこと
7,琉球・沖縄の伝統行事について、知っておきたいこと
8,琉球・沖縄の武術や娯楽などについて、知っておきたいこと
9,ウチナーなぞなぞにチャレンジしよう!
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■まとめと個人的感想

紙面の1/3くらいが、「琉球・沖縄の歴史について」ですが、知らないことばかりでした。著者の新城(しんしろ)先生は、沖縄の歴史学者の第一人者とのことで、本書の参考書籍は100冊近くにのぼります。

また、「沖縄のことを知る・考えるための素材」を提供されているという意図を感じました。様々な賛否の意見・感情が渦巻く沖縄問題について、「何があったのかという事実のパーツを集めることが、考えるためには必要になります。そのための第一歩として、大変役立つ一冊だと思いました。

この本を読んだ上で、沖縄戦や基地問題を始めとした、多くの作品に触れることで、理解の解像度を高めることができる、そんなことを思った次第です。

その他、「軍用基地の地主は儲かっているというのは本当か?」というデータがあったり(実はそんなこともない)、「沖縄の牛乳はなぜ1リットルではなく、946mlなのか?」の背景や、「琉球銀行の名前の理由」など、歴史も関連する様々なトリビアも満載で面白い一冊でした、

沖縄のことを深く知りたい、という方にお薦めしたい一冊です。
教科書感バツグン!ですが、勉強になります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

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<今日ご紹介の一冊>

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新城 俊昭 (著), 編集工房 東洋企画 (編集)

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