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3655号 2024年2月27日

「強み介入」が中学生の生活満足度と抑うつ症状に与える影響とは? ー128名の中学生への介入研究ー

(本日のお話 2956字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日はマネージャー研修のDAY5でした。
また2件のアポイントとコーチングの実施でした。
朝は6kmのランニング。



さて、本日のお話です。

今日は「強み介入が中学生の精神的健康にどのような影響を及ぼすのか?」を調べた日本の研究のご紹介です。

京都の128名の中学生3年生に対して、授業で「強みの認識」「強みの活用」などの介入を実施した結果、生活満足度や抑うつが、どのように変化をしたのか?という研究です。

具体的にどんな授業を行ったのかも書かれており、学校教育に「強みの介入」がどのように役立つのかを具体的に教えてくれる興味深い内容でした。ということで内容をみてまいりましょう!

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<今日ご紹介の論文>
阿部・岸田・石川(2021).
“強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討.
” 教育心理学研究 69 (1): 64–78.
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■30秒でわかる本論文のポイント
・本研究では、2つの強み介入を実施し、強み介入が中学生の精神的健康(生活満足度と抑うつ症状)に及ぼす効果について検討した。

・研究1では「強みの認識・注目」を促す介入を行った。その結果、生活満足度のみ向上した。

・研究2では、「強みの認識・注目」に加え「強みの活用」を促す介入を行った。その結果、生活満足度の向上に加えて、抑うつ症状の低減が見られた。

・これらの結果から、中学生に対する「強みの認識と注目介入」は生活満足度の向上に役立ち、「強みの活用」は抑うつ症状を低減させることに役立つことが示唆された。

とのこと。

「強みの活用」を含めるか含めないか、でどのような差が出るのかを注目した、のが本研究のポイントのようです。

■子どもへの「強み介入」の先行研究
これまでの研究から、強み介入により、幸福度・生活満足度・ポジティブ感情が高まったり抑うつ症状が低減されることなどが明らかになってきました。一方、ポジティブ心理学が立ち上がった2000年代では、それらの研究の多くが大人を対象にしたものが主でした。

しかし、2010年代に入ってから、子どもを対象にした実証研究も増えてきました。たとえばProcter(2011)では、中学生が強みを学び・築き・他者の強みを認識できるような「Strength gym」というプログラムを実施し、それによって生活満足度やポジティブ感情が高まることがわかったのでした。

続く、Linkins(2015)では、「学校で実施される強みの教育プログラム」では、

1:強みに関する知識を伸ばす、
2:他者の強みを認識し、考える、
3:自分自身の強みについて認識し、考える、
4:強みを練習し、適用する

という4つの要素が必要と指摘するなど、具体化してきました。

そんな中で、本研究では、京都の中学校の先生から「3年生は進路選択の時期であるため、生徒の自己肯定感や自己理解を高めさせたい」という要望があった背景を踏まえ、強み介入プログラムを本研究者らが提案をされた、とのこと。

では、実際にどのような内容になったのか、具体的にみてまいりましょう。

■研究の全体像
本研究の対象者、並びに介入が、研究1と2で違っています。共通するものは測定尺度です。以下測定尺度をお伝えした上で、それぞれの介入について整理をいたします。

●測定尺度:
本研究では、以下の項目について「介入前」「介入後」「介入1ヶ月後」で調査をしました。

1、フェイスシート:(学年、組、年齢、性別)
2,生活満足度:日本語案Students Life Satisfaction(吉武, 2010)
3,抑うつ症状:自己記入式抑うつ評価尺度短縮版(並川, 2011)
4,強みの認識:児童用強み認識尺度(小國・大竹, 2017)
5,強みの活用感:児童用強み活用感尺度(小國・大竹, 2017)
6,強みへの注目:子ども用強み注目尺度(阿部他, 2019)

研究1_「強みの認識・注目」の介入
こちらの研究では、「強みの認識・注目のみ」にフォーカスをした介入研究となっています。以下、詳細となります。

●対象者:
京都府の中学校の3年生4クラス128名(男子63名、女子64名)

●介入内容:
1回目の授業50分、2回目の授業45分で実施。
(1回目:友だとの強みをみつけよう)
(2回目:自分の強みを見つけよう)

●結果:
結果は以下1~3のことがわかりました。

結果1)精神的健康について:「生活満足度」は、介入前よりも介入後、介入前より介入後1ヶ月の得点が高い傾向となった。

結果2)強みの活用感について:「強みの活用感」は介入前よりも介入後が高い傾向となった。

結果3)強みの注目について:「強みの注目」は、自己の強みの注目は介入前よりも介入後が高く、他者の強みの注目が、介入前よりも介入後、介入前より介入後1ヶ月の得点が高い傾向となった。

■研究2_「強みの認識・注目」+「強みの活用」の介入
こちらの研究では、「強みの認識・注目」に加えて「強みの活用」についても授業で教育を、実施を促した介入研究となっています。研究1と比べてどのように違うのかも含めてみてまいりましょう。以下、詳細となります。

●対象者:
研究1と同じ中学校に在籍する、京都府の中学校の3年生3クラス87名
(男子43名、女子44名)

●介入内容:
1回目の授業50分、2回目の授業45分で実施。
(1回目:友だとの強みをみつけよう)
(2回目:自分の強みを見つけ、伸ばそう)※「伸ばそう」が研究1と違う

●結果:
結果は以下1~5のことがわかりました。

結果1)精神的健康について:「生活満足度」は、介入前よりも介入後、介入前より介入後1ヶ月の得点が高い傾向となった。

結果2)精神的健康(抑うつ症状)について:「抑うつ症状」は、介入前よりも介入後、介入前より介入後1ヶ月の得点が低い傾向となった。

結果3)強みの認識について:「強みの認識」は、介入前よりも介入後、介入前より介入後1ヶ月の得点が高い傾向となった。

結果4)強みの活用感について:「強みの活用感」は介入前よりも介入後、介入前より介入後1ヶ月の得点が高かった

結果5)強みの注目について:「強みの注目」は、自己の強みの注目は介入前よりも介入後が高く、介入前より介入後1ヶ月の得点が高かった。一方、他者の強みの注目は、介入前後の差は見られなかった。

■考察とまとめ
研究1と研究2を総合して考えると、研究1の強み認識・注目介入は、生活満足度の向上には役立ちますが、抑うつ症状の低減にはやや足りないようでした。一方、研究2の強み認識・注目+強み活用感の介入は、抑うつ症状に対しても影響があり、かつ介入効果の持続時間が長いことも示唆されました。

強みを認識するだけではなく、活用を促す介入のインパクトが示されるようで、参考になりました。中学生で1時間✕2回の授業だとしても、「どの強みを伸ばしたいと思うか(3つ)?」「1週間、どのように強みの伸ばすのか?」を考えて実践することで、精神的健康に対してプラスの効果があることは、教育の時間の投資対効果を考えても、十分に有効なものにも感じた次第です。

もっとこうした強みへの介入がポピュラーになるといいな、そんなことを思った研究でもありました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

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<本日の名言>

我々は、他の人達と同じようになろうとして、
自分自身の4分の3を喪失してしまう。

ショーペン・ハウアー
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