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3667号 2024年3月10日

今週の一冊『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』

(本日のお話 4856字/読了時間6分)

■こんにちは。紀藤です。

毎週日曜日は、最近読んだ本の中から「おすすめの一冊」をご紹介させていただくコーナー。
今回の一冊は、こちらです。

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<今週の一冊>

『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』
ビル・パーキンス (著), 児島 修 (翻訳)
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■「人生が豊かになるお金の使い方」とは
老後2000万円問題、物価高、円安・・・。経済的な不安やリスクの喚起、そしてそれに伴って「個人で資産形成していきましょうね」という社会のメッセージはますます強くなっているよう。

2024年から始まった「新NISA」も、その認知率は86.6%、実際に利用している人の割合は37.8%、毎月の投資額は平均6万680円とのことでした。2023年4月の「生活者一万人アンケート」(野村総合研究所)によると、投資経験の割合・興味ありの人数も年々増えています。

投資か貯蓄かは人により分かれると思いますが、これまでのお金との向き合い方のメッセージの多くは貯金・投資・節約など「お金を貯めること」にフォーカスをしていました。

しかし本書は、違います。タイトル「DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)」とあるように「お金の使い切り方」に焦点を当てています。もちろん、ただ浪費をしましょう!という話ではなく「自分の人生が最も豊かになるお金の使い切り方とは、どのようなものなのか?」を様々な過去のデータ、調査などを元に提案をしています。うーん、新しい!非常に気になります。

ということで内容を早速みてまいりましょう。

■人生が豊かになりすぎる究極のルール:スタンス編
人生を豊かにするお金の使い方について、「究極のルール」として9つ紹介をしています。ルール1~3はスタンスについて、後半のルール4~9は具体的な考え方やアクションについて伝えています。以下、ポイントをお伝えします。

◯ルール1:「今しかできないこと」に投資する
アリとキリギリスの話では、せっせと働くアリが良しとされるが、アリは果たして人生のどこで楽しみを得るのか?
多くの人は「喜びを先送りにしすぎている」。大事なことは、自分が何をすれば幸せになるかを知って、その経験に惜しまずにお金を使うこと。節約することでお金は増えるかもしれないが「人生を充実度を高めるふさわしい経験」という貴重な資源を失っている。ここに気づくべし。

◯ルール2:「一刻も早く経験」に金を使う
「人生で一番大切な仕事は”思い出づくり”」である。モノは買ったそばから時間が経つとともにその価値が低減していく。しかし「経験(思い出)」は、逆である。時間が経つごとに思い出は美しいものになり、その価値は逓増していく(心理学で『記憶の配当』と呼ぶ)。

経験は「その時しかできないこと」がある。たとえばバックパッカーをしながら20代前半の旅人たちと和気藹々できるのは、その年代だから。50歳になって時間ができても、20代のときの仲間・感性・エネルギーとは違うものである。だから「その時しかできないこと」に今すぐお金を使うべきなのだ。そうして「記憶の配当」からの福利を増やして、人生の充実度を高めていこう。経験は福利のように、自分の幸福度を高めてくれるのだ。

◯ルール3:セロで死ぬ
日常生活では、誰かがつくったプログラムにしたがって生きているようである。なんとなく毎日スタバのフラペチーノを買う。これが1年間でどれくらいの額になるのかに、人はあまり気づいていない。この「自動運転モード」でお金を使うのをやめて、「自らの意志で思う方向で自分を操縦すること」が大事である。

自動運転モードの一つが「お金をひたすら稼ぐこと」である。ゆえに、「ゼロで死ぬ」ことを目指して、お金を人生が豊かになること割くことが大事である。なんとなく稼ぎ続けても、年を取るとお金は使わなくなる。最終的にほとんどの人はお金は使い切れずに、死ぬ。

■人生が豊かになりすぎる究極のルール:アクション編
ここからは具体的なアクションとして、「人生が豊かになるお金の使い方」を提案しています。残り時間を意識するためのテクニックも含めて、使えそうなものもあり、興味深い内容でした。早速見てまいりましょう。

◯ルール4:人生最後の日を意識する
「富の最大化から人生の最大化」を目指していくこと。
そのために、経験にお金を使うことが大事である。では、金を残して死なないためにどのような工夫ができるのか?

それは「死を意識すること」である。例えばそのためのツールとして『Final Countdown(ファイナル・カウントダウン)』という推定死亡日までの日数が分かるアプリを使うこともよい。死を意識することに役立つ。そして、貯めるばかりでなく、やりたいことにお金を使うことも意識できる。

◯ルール5:子どもには死ぬ「前」に与える
「自分が死んでから子どもに遺産としてお金を渡す」のが通常である。
しかし、それでは遅すぎる。それはなぜか?
理由は、「子どもの人生を考えたときに、お金が最も必要となるタイミングがズレて、価値が半減するから」である。相続人の相続時年齢は、大体60歳前後が一番多い。
しかし、お金の価値を最大化できる年齢は「26~35歳」である。
その頃は、経験を詰むためのエネルギーが溢れている。かつ「お金との向き合い方」も理解している年代になっている。しかし、肝心の「お金」が足りない傾向がある。ゆえに、子どもが26~35歳頃のときに、お金を渡せるように準備をしておくこと。
著者は、子どものためのお金の口座を用意し、そこに必要と思う金額を積み立てて、必要というときにその存在を伝えて渡せるように準備している、とのこと。

◯ルール6:年齢にあわせて「金・健康・時間」を最適化する
「収入の2割を貯金しよう」という話がある。しかし、それは違う。20代、30代、40代、50代、60代、すべての年代で言えるわけではない。稼ぐ力が少なく、経験の福利が最も大きい20代に、はした金を貯めるのはバカげている。それぞれの年代で最適なバランスを考える事が重要である。
各年代で「お金」「健康」「時間」のリソースは違う。人生を充実させるために、この3要素のバランスを取ることが重要なのである。経験を楽しむ能力が高いとき(20代30代)に、たくさんの金を使うことは理にかなっている。お金を貯めるのは30代後半から、40代へと増やしていけばよい。
また大切なもう一つのことが、「お金を使うのにもエネルギーがいる」といことである。健康は年齢と共に低下をしていく。よってお金から価値を引き出す能力は、年齢とともに低下をしていく。
健康を維持することは、特に中年期以降は、それらのお金から価値を引き出す能力を維持することに繋がるため重要である。
お金と活動のバランスがよく、経験を楽しめる裏の黄金期は「45~65歳」とも言えるので、このタイミングでしっかりと経験にお金を使うのも良い。

◯ルール7:やりたいことの「賞味期限」を意識する
人は人生でいくつもの「小さな死」を体験する。物事は永遠に続かない。3歳の子どもが抱っこをねだる時間も、一緒に遊んでくれる少年期の子どもとの時間も、親とともに食事をする時間も、必ず終わりを迎える。これが「小さな死」である。
たとえるなら、園児向けのプール、小学生向けのプール、大人向けのプールと様々なプールが同じ場所にあるが、その時しか楽しめないプールがあるようなもの。だからこそ、「今のステージでしかできないこと」の経験のために、お金を使うのが大事である。一度去った、死んだ時間は、戻すことができない。経験にお金を使うことを先延ばしにしてはいけない。
やりたいことの賞味期限を切らさずに実行するコツとして「タイムバケット」という方法ある。これは、「人生でやりたいこと」ではなく、「今の時期にしかできないこと」を10年区切りで考えて、リスト化していく方法であるこれを行うことで、残りの人生で、何を、いつしたいのかを明確にすることができる。

◯ルール8:45~60歳に資産を取り崩し始める
お金を貯めるのではなく、必要な経験にお金を使い、ゼロで死ぬことを本書は薦めてきた。そのために「資産を減らすタイミングを考えること」が重要である。純資産を減らすポイントを、いつの年齢にするのか?を考えるということである。
ポイントは「老後に必要な最低限の資金」を確保すること。
死ぬ前にお金がなくなるという最悪のシナリオを避けられる、という見立てを作った上で試算しなければ、現実的ではない。これはどの程度の生活レベルを維持したいかによって変わってくる。(今の日本であれば、ある程度趣味にお金を使える「ゆとりある老後」のためには、2000万円程度必要というのが、それに相当するという話もある。しかし物価が上がったら話は別になる)。
大半の人の場合、「資産のピークは45~60歳である」ため、そこ以降は稼いでいる以上のお金を使う事を考えたほうがよい。そうしなければ資産は増え続け、人生を豊かにする経験に十分にお金を使えなくなる。
そもそも、思ったより老後はお金は使えなくなるのだから。

◯ルール9:大胆にリスクを取る
最後は「リスクをとる」ことである。若いほどリスクをとるデメリットは小さく、年齢を重ねるほど、家族や守るものが大きくなるため、リスクを取ることのデメリットは大きくなる。年齢を取ると、失うものは増えるが、成功して得られるものは少なくなる。リスクを最も取れるのは、一番若い今である。

■まとめと個人的感想
本書で提案していることは「人生の充実度を最大化する」ことです。そして死ぬ前に「もっと働きたかった」という人はいない、という話があります。
ゆえに、大切な人と、大切な経験を積み重ねる重要性を問きます。
そしてそのためのツールとして、「お金を適切に使い切る」ことを提唱しています。当たり前のことですが、立ち止まらないとなかなか気づくことができないメッセージ。だからこそ、本書は注目されたのだと思います。

そうしたメッセージの中で、個人的に3つのルールが印象に起こりました。「ルール2:一刻も早く経験に金を使う」「ルール5:子どもには死ぬ前に与える」「ルール6:年齢に合わせて金・健康・時間を最適化する」です。

ルール2については、たしかに自分の経験を振り返って『記憶の配当』を感じるからです。大学時代のタイへのバックパッカーの旅、20代のシェアハウスの経験、新婚旅行のハワイのスカイダイビング、30代のウルトラマラソンなど、時間が経つごとに思い出はどんどん美しく、価値を持って、思い出すたびに幸福度を高めてくれている、と感じます。『記憶の配当』、ほんとにあるし大事だな、、、と思います。

次に、ルール5ですが、実際に子どもに相続を考えるとき、子どもが経験を積み上げられる最適のタイミングでお金を渡したいと思わされました。そして、その経験を元に次の世代にバトンを渡せるような生き方を、子どもにはしてほしい。
一方、老後に困らない最低限の金額は早めに確保する必要がある、とも後半で述べていますので、そうした金額を貯めることが見立てを早めにできることが大事です。ゆえに、お金を稼ぐ力も、やっぱり大事なのです(当たり前ですけど)。

最後にルール6:お金・健康・時間のバランスも考えることですが、最適なときに、ふさわしい経験ができるようにアンテナを立てておくこと。走って健康を維持すること。この方向性は大事にしたいと思います。(ランニングも悪くない!と思いました)

将来への不安でお金を貯めること、稼ぐことにフォーカスしがちな自分でしたので、本書はたいへん胸に刺さりました。あらためて、この考え、大事にしたいな、と思った次第です。

著者様、翻訳者様、素晴らしい気づきをありがとうございました!

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』
ビル・パーキンス (著), 児島 修 (翻訳)
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