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3673号 2024年3月16日

「よく効く振り返り」のための3要素

(本日のお話 2976字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

先日、ある製造業のOJTトレーナー向けに「経験学習を促すコーチング研修」に外部コーチとして参加させていただきました。

15名の参加者に対して、運営チームが外部を含めて8名ほど関わられており「なんて贅沢な学びの場なのだ・・・!」と驚かされました。こうした抽象度が高い振り返りからの学習に会社全体で取り組もうとする企業は、まだまだ多くないように思います。ほんとうに、素晴らしい。。。

さて、今回の研修のテーマは「経験学習」でした。経験学習とは「経験を振り返ることで、経験からの学びを教訓化して、次に活かす」という話であり、社会人の学びの中心的な学び方でもあります。

言われてみればそういうのあるよね、と思いますが改めて考えてみると「振り返りの効果は何か?」と言われると、何だかパッと答えられず、歯切れが悪い感じになりそうです。

振り返りの効果も、振り返りのやり方も、いくつかの考えがあるようですし、その点について自分でもあまり整理ができていませんでした。そんなことを思って論文をポチポチみていたら、この経験学習の中核にある「振り返り効果」について整理している論文がありました。

ということで、前置きが長くなりましが、今日はそちらの論文をご紹介させていただきつつ、学びと気付きを共有させていただきたいと思います。

それではまいりましょう!

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<今回ご紹介の論文>
Finlay, Linda. (2008). “Reflecting on ‘Reflective Practice’ PBPL Paper 52.” Practice-based Professional Learning Paper 52, The Open University.2008
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■「リフレクション」という広大な世界

「人は経験から学ぶ」。

確かに事実です。しかし、より厳密に言えば『人は経験を”振り返る”から学ぶ」のです。もし、経験をしても、その経験に対して振り返られなければ、何が良くて何が悪かったのかもわかりません。
振り返らなければ、経験から教訓を得ることもできず、やみくもに経験を積み重ねるる「這い回る経験主義」になり成長に繋げることができないのです。失敗するやり方を繰り返しても、失敗が積み重なるだけなのです。

ということで、「振り返り」大事だよね、という話ですが、「振り返る」といっても、いくつかパターンがあるのです。「振り返りを通じた学習」でも、いくつかの理論家がいて、その言わんとすることも若干違っています。

たとえば、デューイ『経験と教育』(1938年)、コルブ『経験学習』(1984)、Gibbs『リフレクティブ・サイクル』(1988)、コルトハーヘン『ALACTモデル』(2010年)などあって、どれがどれだか混同してしまいそうです(はい、勉強します・・・)

「経験を振り返って、次に活かす」ということなのですが、そのプロセスには色々あるようです。

■リフレクションを構成する3つの要素
さて、そんな「リフレクション」という広い世界の中でEby(2000)が提唱している「リフレククションの実践(リフレクティブ・プラクティス」を構成する3つの要素なるお話が、深く、身のあるリフレクション(振り返り)を実現するための要素として、納得するものでした。

それが以下のようなものです。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~
【リフレクティブ・プラクティスの3つの要素】
<1)自己認識>
・(ルーツ):現象学
・直感で考え、感じ、知ることが出来る認知能力
・自己認識によって得られた知識を評価し、理解を深める

<2)内省>
・(ルーツ):実存的現象学と批判理論
・解釈学と批評学の理論を用いる
・自己啓発・社会貢献・社会活動推進ツール
・自己表現・学習・協力の向上
・理論と実践の紐づけ

<3)批判的思考>
・(ルーツ):懐疑論と批判理論
・思い込みの確認と挑戦
・文脈の重要性に挑戦する
・内省的懐疑主義に選択肢を想像、探究すること

※Finlay, Linda (2008).”Reflecting on ‘Reflective practice’.
(「リフレクティブ・プラクティス」の振り返り)
~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

なるほど、それぞれ、哲学的な理論を背景しつつ、「自己認識」と「内省」
と「批判的思考」の3つの要素の統合により、リフレクティブ・プラクティスが成り立っているとのお話、何だか納得します。

振り返りのレベルを深めるには
そして、ここからは個人的意見ですが、「リフレクション」のそれぞれにも、ややレベルのようなものがあるのでは?とも感じました。もちろん、同時的に進むこともあるイメージですが、あえて階層があるとするならば

「自己認識」(レベル1)

「内省」(レベル2)

「批判的思考」(レベル3)

というように「振り返りのレベルを深める」ことができるのでは、と感じたのということです(繰り返しますが、個人の感想です)

まず「振り返り」のレベルの第一歩は「自己認識」です。

・「何が起きたのか?」を解釈なく事実を正しく振り返ること
・そして、その時、自分は何を考えていたのか?何を感じていたのか?どうしたかったのか?など、”自分自身”に矢印を向ける力を養うこと

という「自己認識」から始まります。

これが「あの人が~」とか「会社が~」と周りの環境、外部要因など、変えられないところにばかり視点が言っていると、変えられるものも変えられなくなります。なので、まずは「自分」にズレていると振り返りは効果を発揮しません。

次に、もう少し深くなると「内省」が深まります。

自己認識をする力を得た上で、振り返りの効果の「自己表現・学習・協力の向上」とあるように、内省を学習につなげることができるようになります。
「2度あることを3度起こさない」、「上手く行ったことは再現性を持たせる」など、成長に繋げることができます。ただし、シンプルな内省だけでは、自分の信念を見直すような自己変革にはつながらない、とも思うのです。

そこで大事なのが、最後の「批判的思考」です。

批判的思考、つまり「自分の前提を疑う」ことが、自身の行為の奥深くにある信念を揺さぶります。ここに影響があれば、思考や行動に与えるインパクトも大きくなるのでしょう。
この部分はおそらく一人よりも、他者との対話で、普段の自分の思考の枠から出ることが役に立ちそうです。フィードバックや、挑戦的な質問なども効果を発揮しそうです。

■まとめ
論文の著者らはレベルがある、なんて話をしているわけではないのですが、個人的にそのように考えるとわかりやすかったんので、個人の意見として書いてみました。

いずれにせよ、「自己認識」「内省」「批判的思考」は、振り返りのための重要な3要素です。

「自己認識」がなければ、外界とのギャップは大きくなるでしょう。
「内省」がなければ本質的な答えにたどり付かず表面的なところで終わってしまうことになるでしょう。
「批判的思考」がなければ自分の思い込みや、社会の当たり前から距離を置くことができず、自己正当化のループから抜け出すこともできないかもしれません。

振り返り(リフレクション)奥が深いですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

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<本日の名言>

人は失敗するたびに何かを学ぶ。

キングスレイ・ウォード
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