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4372号 2026年2月13日

子どもが直面する「社会的問題」を解決する王道5ステップとは? ー宮崎大学らの研究ー

(本日のお話 2546字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、2件の打ち合わせ。
ならびに、執筆と研修準備などでした。

また明日から来週にかけて研修ラッシュがしばらく続くので、
気合を入れていきたいと思います。
(インフルエンザが流行っているようです。手洗いうがいに気をつけましょう…!)

また朝から12kmのランニングでした。
ケガのため痛くて履けなかったレース用シューズを履いたら、
違和感はあるものの、何とか走れたのが嬉しかったです。
東京マラソンに向けて、調整を進めたいと思います。



さて、本日のお話です。

本日は「児童における社会的問題解決」という、子育て世代の方々だけでなく、対人関係に悩むすべての人にヒントをくれる興味深い研究をご紹介します。
(先日、「社会的問題解決」における有名な論文をご紹介いたしましたが、本日もその続きです)

今回は、小学5~6年生を対象として、日常の「困った場面」を具体的に設定し、そこでの解決スキルをどう高めるか、そしてそれが本人の自信(自己効力感)にどうつながるかを検証した内容です。
親の視点としても、あるいは一人の大人としても、子どもたちがどうやってトラブルを乗り越える力を身につけていくのかを知ることは、非常に大きな意味があると感じます。

それでは早速、内容を詳しくみてまいりましょう!

■今回の論文
・『児童における社会的問題解決訓練用尺度の開発と訓練の効果』
・宮田 八十八、石川 信一、佐藤 寛、佐藤 正二
・ジャーナル:行動療法研究、2010年
・所属:宮崎市立広瀬西小学校/ 宮崎大学教育文化学部

■30秒でわかる論文のポイント

・小学生の日常的な対人トラブル(掃除、無視、喧嘩など)を解決する力を測る新しい尺度「児童の問題解決スキルを測定するための尺度(C-SPSS)」を開発しました。

・「問題に前向きに向き合う」「具体的な解決策をたくさん出す」といったステップを学ぶ全3回の授業(訓練プログラム)を実施しました。

・訓練を受けた子どもたちは、不適切な解決策(衝動的な行動や無視など)が減り、適切な解決策を選ぶスキルが有意に向上しました。

・単にスキルが身につくだけでなく、「自分は友達との問題を解決できる」という対人的な自信(自己効力感)も高まることが証明されました。

■研究の背景と目的

私たちは日々、ちょっとした人間関係のトラブルに直面します。これを解決するプロセスを「社会的問題解決(Social Problem-Solving)」と呼びます。
成人向けの研究では、これがうつや不安の軽減に役立つことが知られていますが、児童、特に日本の小学生における具体的なアセスメント(評価)や訓練の効果については、まだ十分に検討の余地がありました。
そこで本研究の目的は、児童が直面しやすいトラブル場面に基づいた評価尺度「C-SPSS」を作り、それを使った訓練が実際に子どものスキルと「自信」をどう変えるかを検証することでした。

◯社会的問題解決とは
日常生活で直面する問題を処理するために、効果的な解決手段を見つけ出し、実行するプロセスのことです 。本研究では以下の5ステップを重視しています。

1.問題志向:問題に対して「解決できる」とポジティブに構える態度。
2.解決の目標:何を目指すか(相手も自分も嫌な気持ちにならない解決)
3.解決策の案出:多くのアイデアを出すこと。
4.予期・決定:結果を予想して最善を選ぶこと。
5.実行と検証:やってみて、どうだったか振り返ること。

■研究の方法

この論文は2つの研究で構成されています。

◯【研究I:尺度の開発】
・参加者:予備調査92名、本調査365名の小学生 。
・方法:児童への調査やベテラン教師へのインタビューから、日常で起こりやすい6場面(そうじ、登下校、待ち合わせ、無視、けんか、わりこみ)を特定し、質問紙(C-SPSS)を作成しました。

◯【研究II:訓練の効果測定】
・参加者:小学生88名(5・6年生)
・デザイン:学級単位で以下の2群に分けました。
ー介入群(訓練群):全3回(各45分)の授業形式で社会的問題解決訓練を実施
ー比較条件(統制群):訓練を行わず、通常通り過ごす群(後に訓練を受けるウェイティングリスト群)
・分析手法:群×時期の2要因分散分析などを用いて、介入前後の変化を比較しました。

■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:訓練により問題解決の質が劇的に改善した

訓練を受けたグループは、受けていないグループに比べて、介入後に「合理的解決(前向きな話し合いなど)」の得点が有意に上昇しました。
一方で、「衝動的・不注意な解決」や「回避(逃げる)」といった不適切なスタイルは有意に減少しました。

◯わかったこと2:アイデアの数(案出数)が増え、より柔軟になった

ひとつのトラブルに対して出せる解決策の数が、訓練群では大幅に増加しました。
訓練後、介入群は統制群よりも有意に多くの解決策を提示できるようになっていました。

◯わかったこと3:対人関係に対する「自信」が向上した

これが最も興味深い点の一つですが、訓練によって「対人的自己効力感(友達とうまくやっていけるという自信)」が有意に高まりました。
特に「認知的解決(自分の考え方を切り替えて対処する)」のスキル獲得が、この自信の向上と強く相関していました。

■実践に活かすヒント

・教育現場での活用:道徳や学級活動の時間に、「ピンポン玉を手を使わずに運ぶゲーム」のような遊びを交えながら、「解決策はたくさんあるほど良いものが見つかる」という体験をさせることが有効です。
・家庭での活用:子どもがトラブルを報告してきた際、すぐに正解を教えるのではなく、「相手も自分もいい気持ちになるには、他にどんな方法があるかな?」と、選択肢を広げる(案出)のサポートをすることが、子どもの自信を育むことにつながります。

■まとめと感想

実際に、こうした社会的問題解決は、社会に生きる私達全員にとても重要なスキルだと思います。言われたら当たり前に思うかもしれないけれども、

・問題志向(ポジティブに向き合う)
・解決目標(合理的解決を目指す)
・解決策を案出する(一つの問題解決方法にしばられない)
・予期・決定する(相手も自分も良い気持ちになるか)
・実行と検証をする

ということを丁寧にやること。またそうすることで問題解決に至ったという経験を積めることは、今後の大いなる武器に、震して何より自信にもなるのだろうな、そんなことを思った次第です。
こうした知恵も、まだまだ知られていないと思うので、自分もやってみたいし、問題を抱えている人に一つの「認知療法的アプローチ」としてもお渡ししてみたい、そんなことを思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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