問題が起こったときには、一時停止して落ち着く「S.S.T.Pテクニック」が役に立つ ーニューヨーク州立大学の研究ー
(本日のお話 2543字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、終日、某企業の部長クラスの皆さまへ
ストレングス・ファインダー研修の実施でした。
言語化力と抽象的な思考力がとてもが高く、
またユーモアと対話力の高い皆さまで、
「責任ある立場の方々はさすがだなあ…」と感銘を受けておりました。
改めて、ご参加頂きました皆さま、ありがとうございました!
*
さて、本日のお話です、
先日、認知行動療法の一種である「問題解決の5ステップ」のお話をお伝えしました。
問題を定義し、解決策を出し、意思決定をして実行しよう!という、ビジネスでも日常でも使えるシンプルなプロセスです。
…とはいえ、理論はわかっていても、実際に直面したときに難しいこと。それが、「問題へポジティブに向きあう」ことではないでしょうか。
目の前に大きな壁が現れたとき、私たちはついそれを「脅威」と感じてしまい、足がすくんでしまいます。
「よし、挑戦しよう!」となかなか思えないのが人間というもの。
そんな中、問題解決療法の第一人者であるズリラ博士らが、この「最初の壁」を乗り越えるための重要なエッセンスをまとめています。
それが、感情調節を重視した「SSTPテクニック」です。
今日は、問題に直面したときに、パニックを回避して賢い選択をするための知恵について、同著の内容から抜粋してお伝えしたいと思います。
それでは、どうぞ!
■今回の論文
===================
『Problem-Solving Therapy(問題解決療法)』
Thomas J. D’Zurilla / Arthur M. Nezu
ジャーナル:Handbook of Cognitive-Behavioral Therapies, 3rd Edition、2010年
所属:ストーニーブルック大学、ドレクセル大学
===================
※本日の内容は上記より「SSTPテクニック」の部分を抜粋してお伝えします
■30秒でわかる論文のポイント
・人生の質を左右するのは「問題そのもの」ではなく、それをどう解決するかという「能力」である 。
・パニックや焦りなどの「負の感情」は、脳を過負荷(オーバーヒート)させ、論理的な思考を停止させる 。
・具体的な解決策を考える前に、まずは「S.S.T.P.」というステップで感情を鎮めることが成功の鍵となる 。
・問題を「脅威」ではなく「挑戦(変化の機会)」と捉え直すことで、解決率は劇的に向上する 。
■研究の背景と目的
「なぜ、ある人はトラブルに直面しても冷静に対処でき、ある人はパニックに陥ってしまうのか?」 この問いに対し、ズリラ博士らは長年の研究から、精神的な健康や人生の満足度は、個人の「問題解決能力」に依存していることを明らかにしました 。
しかし、どんなに優れた解決スキルを持っていても、強いストレス下では脳が「認知的な過負荷(オーバーヒート)」状態に陥ります。
これは、感情が高ぶることで論理的な思考を司る脳の領域(前頭前野)がうまく働かなくなる状態です。
本研究の目的は、こうした脳のオーバーヒートを防ぎ、いかなる過酷な状況下でも「合理的な問題解決」を実行するためのフレームワークを提示することにあります 。
■研究の方法
本論文は、過去30年以上にわたる「社会的問題解決モデル」の膨大な臨床データと理論を統合したものです 。
◯デザイン:システマティック・レビューおよび理論的枠組みの提示
◯対象:不安、抑うつ、慢性疾患、日常のストレスを抱える幅広い成人および青年層
◯評価ツール:社会的問題解決尺度改訂版(SPSI-R)など
◯介入:問題志向(態度)の改善と、具体的な5つの解決ステップの訓練
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:パニックを防ぐには「S.S.T.P.」による一時停止が不可欠である
強い感情は、本来活用すべき「問題解決スキル」を阻害してしまいます。
そこで推奨されているのが以下のステップです 。
ーーーーーーーーーーーーーー
・Stop(止まる):焦りやパニックに気づいたら、反射的に行動するのを一度止める。
・Slow down(スローダウン):深呼吸などを行い、脳の興奮(過負荷)を鎮める。
・Think(考える):落ち着きを取り戻してから、ようやく「問題を定義する」ステップへ進む。
・Planful action(計画的実行):冷静な判断に基づき、一つずつ行動に移す。
ーーーーーーーーーーーーーー
◯わかったこと2:問題を「挑戦」と評価するだけで、解決の確率は高まる
「問題志向(問題への向き合い方)」には、積極的(ポジティブ)なものと消極的(ネガティブ)なものの2種類があります 。
ーーーーーーーーーーーーーー
・積極的志向:問題を「成長の機会(挑戦)」と捉え、自分には解決する能力があると信じる 。
・消極的志向:問題を「自分を脅かす存在(脅威)」と捉え、自分の能力を疑い、動揺する 。
ーーーーーーーーーーーーーー
研究の結果、この「最初の構え」がポジティブであるほど、その後の論理的なスキルが有効に機能し、うつ病や不安の軽減、さらには体重管理やがん患者のQOL向上といった具体的な成果に結びつくことが示されました 。
◯わかったこと3:感情は「邪魔者」ではなく「合図」として活用できる
ネガティブな感情を無理に消そうとするのではなく、それを「問題が発生したことを知らせるアラーム」として捉え直す訓練が有効です 。
不快感を感じた瞬間に「お、今アラームがなったな。ということは、ここでS.S.T.P.を使って冷静に考えるチャンスだ」と考えることで、感情に支配されるのではなく、感情を問題解決のエネルギーに変えることが可能になります。
■応用可能性(実践に活かすヒント)
◯ビジネス現場でのトラブル対応で使う
クレームや納期遅延などのトラブルが起きた際、部下や自分がいきなり「どうしよう!」と動き出す前に、まずはチームで「1分間の深呼吸と現状の書き出し(Stop & Slow down)」を儀式化する。
これにより、脳の過負荷を防ぎ、場当たり的ではない「最善の解決策」を選択できるようになります 。
◯キャリアや人生の転機で使う
失業や病気といった大きな負の出来事に直面した際、それを「人生の終わり」と見るか「新しいステージへの挑戦」とラベルを貼り替えるか。
この「問題志向」の転換が、その後の適応能力を劇的に変えます 。
■まとめと感想
ふと思えば、私自身の経験でも、20代の頃に求人原稿の締め切りが重なりパニックになっていた際、当時のマネジャーが言ってくれました。
「キトウくん、まず落ち着いて。深呼吸。それから考えよう」と声をかけてくれたことがありました。
今振り返れば、あの「一時停止」こそが脳のオーバーヒートを救う手段だったんだな、この論文を読んで改めて痛感しました。
(今思っても冷静で凄かったなあ…とリスペクトします)
今でもトラブルが起きたときは、いきなり解決しようとせず、まずは生成AIに現状を書き出すなどして、強制的に「客観視」と「一時停止」の時間を設けるようにしています。
そうすることで、脳のノイズが収まり、「何をどの順番でやるべきか」という正解が自然と見えてくるようになる。
これはまさに、本論文が提唱する「S.S.T.P.」の実践そのものでした。
私たちは、問題そのものに負けるのではなく、問題に直面したときの「自分の感情」に振り回されて自滅してしまうことが多いのかもしれません。
もう少し落ち着けるようになりたいものだな、と思いつつ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。
<noteの記事はこちら>
