100本の論文からわかった!「パーソナルブランディング」の5つのステップ ーアムステルダム自由大学の研究ー
(本日のお話 3642字/読了時間5分)
■こんにちは、紀藤です。
さて、本日ですが、あるちょっと変わった論文のご紹介です。
テーマは「パーソナルブランディング」に焦点を当てたレビュー論文です。
経済学の分野では、現代を「アテンション・エコノミー(関心経済)」の時代と定義しており、「注目を集めること」が価値となっています。
経営学の研究においても、「パーソナルブランディング(自分を適切にアピールすること)」がキャリアの成功に影響することがわかっており、
戦略的に自分をブランド化している人は、周囲からの評価だけでなく、「知覚された雇用可能性(自分には市場価値があるという自信)」が高まり、最終的なキャリア満足度が大きく向上するとのこと。
確かに、実際に独立していると、「自分や自社をどのような存在として認識してもらうか」は、即生存戦略に繋がってくるもの。
ゆえに、とても大事なテーマだと個人的にも感じます。
そんな中、本日はパーソナルブランディングに関する100件の学術文献を精査して、その理論を1つにまとめあげた論文をご紹介します。
「なるほど、パーソナルブランディングって、このように作られるのか…」と実に勉強になる内容でした。
ということで、早速中身を見てまいりましょう!
■今回の論文
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・タイトル:Personal Branding: Interdisciplinary Systematic Review and Research Agenda(パーソナルブランディング:学際的系統的レビューと研究課題)
・著者:Sergey Gorbatov / Evgenia I. Lysova
・ジャーナル:Frontiers in Psychology、2018年
・所属:アムステルダム自由大学(Vrije Universiteit Amsterdam)
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■30秒でわかる論文のポイント
・パーソナルブランディングに関する100件の学術文献を精査し、バラバラだった定義や理論を一つにまとめ上げた研究です。
・自分をブランド化することは、単なる「目立ちたがり」ではなく、変化の激しい現代でキャリアを守り、成功させるための「戦略的プロセス」であると定義しています。
・「強みを活かした独自の物語(ナラティブ)」と「一貫したイメージ」を通じて、対象者に特定の約束を示すことが鍵となります。
・プロセスの核心は、「自分がなりたい姿(理想の自己)」と、「周囲の認識(認識されたアイデンティティ)」のズレを最小限にすることにあります。
■研究の背景と目的
かつて、キャリアの責任は「組織」にありました。
しかし現代では、その責任は「個人」へと移っています。AIの進化や産業構造の変化により、終身雇用が当たり前ではなくなった今、私たちは自分自身の価値を証明し続けなければなりません。
そこで注目されたのが「パーソナルブランディング」です。
しかし、この言葉はマーケティングや心理学など様々な分野で語られ、定義が曖昧なままでした。
本研究は、この断片的な知識を統合し、誰もが実践できる「理論モデル」を構築することを目的としています。
◯パーソナルブランディングとは
個人の特性の独自性をベースに、差別化された物語とイメージを通じて、特定の約束をターゲットに示し、自分に対するポジティブな印象を作り上げ、維持していく戦略的なプロセスのことです。
■研究の方法
本研究は、系統的文献レビュー(システマティック・レビュー)という手法を用いています。
・デザイン:PRISMAガイドラインに準拠した広範な文献調査。
・対象:2005年から2017年までに発表された、パーソナルブランディングに関連する100件の査読付き学術出版物。
・プロセス:Web of ScienceやGoogle Scholarなど複数のデータベースから1,100件以上の候補を抽出し、厳格な基準で精査しました。
・分析手法:各論文の内容を「定義」「理論」「プロセス」「成果」などのカテゴリーでコード化し、定性的に統合しました。
・パーソナルブランディングの研究は年々増えている
■パーソナルブランディングの5つのステップ
論文を精査した結果、以下の5つのステップが重要であることがわかりました。以下、ポイントをまとめます。
◯ステップ1:自己認識
「内なる自己」を発見するための不可欠な第一歩です。
・アイデンティティの探求: 自己同一性、個人の価値観、信念、自己像、および個人的な目標を明確にします。
・不可欠なスキル: この段階では、内省(自己反省)や批判的思考力が求められます。
・反射性: 自身の特性を外部にポジショニングする前に、まず自分自身の特性を特定するプロセスが必要です。
◯ステップ2:ニーズ分析とポジショニング
ターゲット層の期待に応えつつ、競合他社から際立つための戦略を策定します。
・期待への適合: 望ましい組織分野において、その分野の期待(共通点)に応える必要があります。
・差別化の確立: 競合他社(他者)から際立つポイント(差別化ポイント)を明確にします。
・属性の最適化: 追加的な属性を持つことではなく、対象が価値を置く資質をより高いレベルで備えることで差別化を図ります。
◯ステップ3:ブランド・アーキテクチャの構築
「理想の自己」と「認識されたアイデンティティ」の2つの側面からブランドを構成します。
・理想の自己(Desired Self): 個人が対象とする聴衆に「どのように認識されたいか」という概念です。
・認識されたアイデンティティ(Perceived Identity): 現実において、個人のブランドが他者から実際にどう認識されているかという視点です。
・一貫性の追求: 理想と認識の間のギャップを最小化し、属性、態度、便益、人格などの要素を備えた「ブランドコア」を構築します。
◯ステップ4:自己省察とフィードバックの追求
ブランド의関連性、強さ、競争力を維持するための継続的なメンテナンスプロセスです 。
・自己省察(内部的な確認): 自身の強みと弱みについて、慎重かつ批判的な自己評価を継続的に行います。
・外部的な確認(フィードバック): 理想の自己と周囲の認識に乖離がないか、他者からの反応を積極的に収集します。
・失敗の回避: フィードバックは、メッセージの強調不足や不適切な対象へのアプローチといった「ブランディングの失敗」を回避するのに役立ちます。
◯ステップ5:意味づけ(Sensemaking)
自身のアイデンティティを通じて環境を理解し、他者との相互的な意味の集合体を構築します。
・アイデンティティの構築: 特定の感情や認識を個人と結びつけるアイデンティティを構築し、それらを効果的に管理します。
・ナラティブ(物語)の活用: 差別化された物語(ストーリーテリング)は、労働市場における個人の価値を示す強力なシグナリングメカニズムとなります。
・相互作用: 個人と対象層の双方が関与する「相互的な意味づけ」を通じて、より強固で一貫性のあるブランドへと昇華させます。
■まとめと感想
余談ですが、私はnoteとXの名前を、「強み先生」としています。
強み本を出す企画が始まったときに、編集者の先生から「SNSの名前を明日から『強み先生』に変えてください」と言われたことが直接のきっかけです。
「えっ、まだそんな実績もないですし・・・」と躊躇していると、「違います。言うからそうなるんですよ」と、強力に背中を押されました。
まだ道半ばですが、それでも経緯を振り返ると、まさにこの「パーソナルブランディングの5ステップ」を踏襲した流れの中にいるのだなと気づきます。
具体的には、こんなステップでした。
・「ステップ1:自己認識」:自分は強み✕人材開発・組織開発が好きで得意であり、特性的にもマッチしている。この領域を深めたい。
・「ステップ2:ニーズ分析とポジショニング」:ストレングス・ファインダーなどやっている人は数多くいるが、大学院を修了し、また論文を読み漁っている人はいない。
・「ステップ3:ブランド・アーキテクチャの構築」:「理想の自己」は”強みの専門家”と認識されたいが、実際はそうはなってはいない。ゆえに『強み先生』というブランドコアを打ち立てた。
・「ステップ4:自己省察とフィードバックの追求」:他者からのフィードバックを求めている段階。(まだ周りになんとなく聞いている段階だが、悪い方向にはいっていない感覚がします)
・「ステップ5:意味づけ」:本を書く中で、自分がなぜ「強み」という領域に興味を持ち、そして歩みを深めているのかを言語化している。その中で、自分の中でも腹落ちをしていく感覚がある。
まだ道半ばではあるものの、「パーソナルブランディングの理論をまとめたステップ」として、確かに納得がいくものだな、と感じている次第です。
これらを磨いて、尖らせていきたいな、そんなことを思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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