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4450号 2026年5月2日

「働くとは何か」を考える ー第11章 労働時間と勤務場所ー

(本日のお話 2603字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は1件のアポイント。
ならびに、高校の授業設計などでした。

さて、世の中はゴールデンウィークですね!
私は家族にて、近場の沼津へ行ってまいります。
旅ランをしつつ、リフレッシュしてきたいと思います!



さて、本日のお話です。

昨日に引き続き、『人事管理入門』の読書会からの学びをシェアいたします。

本日は「第11章 労働時間と勤務場所」です。

GWに絡めて、「休み方」にも触れられている章です。

コロナ禍を経て、働き方の柔軟性は加速しました。
以前なら、テレワークも、フレックスも、「やっていることで申し訳ない」という感覚があったのが「当たり前の感覚」に近づいてきたのが、大きな変化だと感じています。

以前は、「早く帰ること」や「在宅で仕事をすること」に、どこか後ろめたさがありました。
でも今は、それが当たり前の選択肢として認められている。この数年で、確かに何かが変わりました。

本章はコロナ禍前のデータから論じていますが、「働き方の課題の根本」は以前地続きであるように思います。

ということで、本日は「働き方」という問いに向き合ってみたいと思います。

それでは、どうぞ!

■「働くことの柔軟化」には2つの顔がある

本章では、労働時間制度の柔軟化を2つの視点から整理しています。

◯「企業にとっての柔軟化」:
業務の繁閑に合わせて労働時間を調整する、変形労働時間制などがこれにあたります。
アイスクリーム製造やリゾートホテルのように、季節によって仕事量が大きく変動する業種には特に有効な仕組みです。

◯「個人にとっての柔軟化」:
社員自身が仕事の進捗や生活リズムに合わせて労働時間を選択できる、フレックスタイム制や裁量労働制がこれにあたります。
出勤前に子供を病院に連れていく、ラッシュアワーを避けて通勤する、終業後に専門学校へ通うなど。そうした生活の必要に合わせて働き方を選べることが、この制度の本来の意義です。

読書会で印象的だったのが、「本部ではフレックスが有効に活用されている一方、営業店では使いづらい」というような声でした。
制度はあっても、仕事の性質やライン長の考え方によって、実際に使えるかどうかが大きく変わるのが現実です。

たとえば、フレックスタイム制がうまく機能するためには、時間管理の柔軟化だけでなく、

⑴仕事の量・質の適正化、⑵目標の明確化、⑶成果による評価、⑷社員自身の自己管理能力の育成

などがセットで整っていなければならない、と本書は述べています。制度は「入れれば終わり」ではないのですね。

■有給休暇と連続休暇 ー「休むこと」の意味ー

「有給休暇」についてですが、日本の有給休暇取得率は、2017年時点で約5割。
先進諸国では完全取得が一般的であることを考えると、かなり低い水準です。

取得率が低い背景として本書が挙げるのは、「完全取得を前提とした要員配置になっていない」「休むと同僚に迷惑がかかる」「病気に備えて残しておきたい」という意識です。

一方で、本書が特に力を入れて論じているのが連続休暇(リフレッシュ休暇)の意義です。
仕事ばかりに長期間追われていると、適応力や発想力が次第に低下していく。長期間、会社や仕事から完全に離れることで、社員がリフレッシュし、新しいアイデアや創造性を取り戻す——これが、連続休暇を導入する経営上の理由です。

さらに興味深いのは、連続休暇には副次的な効果もあるという指摘です。
長期休暇を前提とした業務計画の作成が業務効率化を促し、上位職が不在になることで部下に仕事を任せる機会が生まれ、それが人材育成につながる——「休む」ことが、組織を強くする契機になるというのは、なかなか逆説的で、面白い視点だと思いました。

■日本の労働時間は、まだ長い

本書に掲載されている国際比較データを見ると、日本の年間実労働時間はドイツやフランスを大幅に上回り、アメリカやイギリスの水準にも近いかそれを超えている状況です(2018年時点:日本1,706時間、ドイツ1,305時間、フランス約1,420時間)。

日本の労働時間が長い背景として挙げられるのは、⑴年次有給休暇の取得日数が少ないこと、⑵所定外労働(残業)が多いこと、の2点です。

読書会では「ブルシットジョブ(クソどうでもいい仕事)」という概念が話題になりました。効率化が進んで手が空いた人を、本当に価値のある仕事に振り向けられているのか。

テレワークやフレックスが広がっても、生産性が上がっているのか実感がない、という感覚は、長時間労働の問題の根っこにある「働くことの意味(時間を消費すれば働いているという誤解)」と直結していると感じます。

■テレワーク・在宅勤務の可能性と限界

本書では、サテライトオフィスや在宅勤務について、その定義と課題を丁寧に整理しています。

在宅勤務には「在宅雇用」(会社に雇用された社員が自宅で働く)と「在宅就業」(請負・委託契約で自宅で働く)の2種類があります。
コロナ以降に広がったのは主に前者で、子育て中や介護中の社員が職業能力を維持しながら働き続けられる可能性を広げました。

一方で、課題も明確です。
本書が指摘するのは、「1人で仕事をするため孤立感が高まる」「自己責任が増大し負担感が増す」という点。

読書会でも「テレワークによってコミュニケーション機会が減り、10年前は仕事終わりに一緒に帰ることもあったが今はそれぞれ別々に帰る」という変化が語られました。

テレワークを機能させるためにも、「業務を個別作業・個別評価が可能な形に組み直す」「社員の自主管理能力を高める」ことが不可欠だと本書は言います。

結局、テレワークも、フレックスも、制度を整えるだけでは機能しないですし、活用することによる孤立化などの弊害もある。

ゆえに、出社が原則になる会社も出てきたり、皆が手探りで「最適な塩梅」を探している最中なのでしょう。

■まとめと感想

今回の第11章を読んで、根底に「働く=成果を出す」ではなく「働く=時間を使う」という考え方が、根強く残っていることが一要因であるようにも思いました。

お題目のように「成果を出す」というものの、根本的なものの見方を「労働時間という枠が、ある意味で人々を守っている」という視点もあります。
AIが仕事を代替し始め、余った時間をどう使うか考えること自体が苦痛になる人もいるーー便利になった先に何があるのか、「働くとは何か」という哲学的な問いは、制度の話をしていると、毎度のこと考えさせられる気がします。

そういう意味では、働き方の柔軟化は、単なる制度設計の問題ではなく、「どう働くか、どう生きるか」という問いと不可分なのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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