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1270号 2017年8月6日

『社会的排除』

(今日のお話 2386字/読了時間2分半)
■おはようございます。紀藤です。

この土日は、人事の方限定の
「7つの習慣」の週末セミナーの開催。
今日も引き続き、2日目です。

(週末にも関わらずお越しいただいている、
 志高き人事の皆様、誠にありがとうございます!
 たくさんのことをお持ち帰りくださいね)



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

===========================

『社会的排除―参加の欠如・不確かな帰属』(著:岩田正美)

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です。

■「光」を知るためには、
「闇」を知らなければいけない。

「理想」を語るには、
「現実」を知らねばならない。

「平和」を語るには、
「争い・混乱」を知らなければならない。



世の中は相対的にできています。


もちろん、“美しい側面”だけ見て、
実現できればそれに越したことはない。

しかしながら、そう出来ない現実があります。


思うに、本当の意味で、
「理想」を実現しようとするのであれば、
綺麗な部分や、理想的なことだけでなく、

「そうできない理由」を明確に知り、
課題意識を持つこと、

このことは不可欠ではなかろうか、
と、私は思います。


■今日の一冊は、
「社会の”闇”」の部分に焦点を当てた話です。

きっと、メルマガをお読みいただいている、
立派なお仕事をされている皆様には、
もしかしたら、縁遠い話かもしれません。


しかし、あるエリートサラリーマンなどが、
ふとしたきっかけで転落し、

「社会的排除」(社会から引き剥がされた状態)

をされてしまう人が存在している、

そんな社会問題を描いたノンフィクションの話です。


■さて、ではこの『社会的排除』の本、
どんなことが書かれているのでしょうか?


内容は、こんな風に紹介されています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◯『社会的排除』内容紹介◯


ホームレスやワーキングプア、
ネットカフェ難民、日雇い派遣、孤独死や自殺など、
福祉国家の制度からこぼれ落ち、呻吟する人々。

彼らはなぜ、どのようにその拠り所を失ったのか。

グローバリゼーションとポスト工業社会において、
深まるばかりの社会分裂を、どのように分析するか。

貧困研究の第一人者が、
曖昧に使われてきた「社会的排除」概念を、
社会参加と帰属に焦点を当てて、理論的にクリアに示し、
データとフィールドワークを駆使して、日本の今のリアリティに迫る。

(Amazon 内容紹介より引用)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



仕事があるのが当たり前、
ホームレス、ネットカフェ難民などは、
他の世界の出来事。

メルマガのお読みの皆様は、
もしかするとそのように感じられる方も、
いらっしゃるかもしれません。


しかし、それらの現実は確かに存在しており、
そうなった人も、自分がそうなるとは思っていなかった。

この本を読むと、
その事実・現実・真実を思い知らされます。


■例えば、こんな2つの
「リアルな転落事例」が紹介されています。




<職場に馴染めず、職を点々とし、そして落ちていった>
~Aさんの事例~


彼は飲食店で働いていたが、
年下の上司に使われることが嫌で、仕事を辞めた。

しかし、その後、転職するものの、同じような状況に遭遇する。
すなわち、また年下の上司に使われることになった。

しかし、彼はそれが耐えられない。
使われるのが嫌で、また仕事を辞める。

そんな理由で転職をする。すると、また同じ状況になる。
また、辞める。

転職をするたびに、どんどん条件の悪いところしか、見つからなくなってくる。

そんなことはわかっているのに、つい、そうしてしまう。

Aさんは、この状況を観察して、
一ヶ所にとどまれない自分をこのように言う。

「落ちるって言葉がありますけど、一度ツマづくと、本当に落ちていく。」




<配偶者との離婚。続くアクシデント。一気に転落し、ネット難民へ>
~Bさんの事例~


様々な理由で配偶者との離婚。(1つ目のアクシデント)

それがきっかけで生活の基盤が崩れ、支えるものがなくなる。
そして、心身ともに不安定になる。

そんな中、突然の会社からのリストラ。(2つ目のアクシデント)
離婚で精神的なバランスを欠いている中の追い討ち。

加えて、そこで次の職が
すぐ見つけられるようなキャリアを積んでこなかった。

仕事が見つからない。だから、とりあえず派遣として働く。
そんな状況に嫌気が差し、お酒におぼれ、アルコール依存症になる。

そして、仕事を休みがちになり、また退職を迫られることになる。
どんどん仕事の水準が下がり、日雇いのその日暮らしの生活が中心になる。

家賃が払えず、ネット難民になる。


■この2つのケースをみていると、

・自分がキャリアを積んでこなかったのが悪い。
・離婚した時の事を考えなかった人が悪い。
・リスクヘッジをしておかなかったのが悪い

そう思う方もいらっしゃるかもしれません。

そう言ってしまえば、
確かにそういった面もあるかもしれない。

しかし、

・配偶者との離婚・死別
・体を壊したことによる収入源の枯渇
・その他、身内の不幸、トラブル

など”思わぬ事態”で
普通の人、安定した仕事の人が、
一気に転落していくということが存在している、

ということ。

この事実が重要だと思うわけです。


つまり、言い換えれば、

【自分もそうなる可能性がありうる】

ということ。


これを“リアルな事例”として、
肌身で、リアルに知っておく必要がある、

このことが、私が思う、
この本の一つの価値である、

と思うのです。


■夢を語るのも、
自分のビジョンを追い求めることも、
とても大切なことです。

しかし、人生には、

“「攻め」と「守り」”

どちらも必要です。

そのためにも、
「こんなに恐ろしいリスクがある」
ということを知ること。

そして、そうならないために、
最大限の準備をしておくこと。


これらが、とても大事なのではなかろうか、
私はそのように思います。


日本社会の一つの闇を描いたこの作品、
明日は我が身かもしれません。


ぜひ一度お目通しいただくと、
また違った見方を手に入れられるかと思います。


読んで明るくなる本ではありませんが、
そんな視点を得たい方、ご一読をお勧めいたします。

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