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1949号 2019年6月20日

「自分に思いやり」を持つことは、世の中のためになる

(本日のお話 2430字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は名古屋へ出張。
『4Dx』の研修実施立会い、
ならびに、1件のミーティングなどでした。



さて、早速ですが本日のお話です。
購読している『ハーバードビジネスレビュー』より、
興味深い記事がありました。

それが『セルフ・コンパッション』というもの。

人材開発の世界で近年注目されているこのキーワード。
今日はこの言葉からの学びについて、
皆さまにご共有させていただきたいと思います。


タイトルは、


【「自分に思いやり」を持つことは、世の中のためになる】


それでは、どうぞ。


■研修を実施するにあたって、
よく議論にのぼる話があります。

それが、

”「成長をしようと思う気がない人」には、何をやってもダメ”

という話。

確かに、色々アプローチを与えても、

・生まれつきこんな性格だから
・今更何やったって、変わんない
・才能がないからムリ

というように、

性格や特徴や能力を、”石に刻まれたモノ”のように捉え、
今も5年後も変わりはしないと信じていれば、
当然、現実もそうなります。

この考えを、『固定思考』と呼びます。



一方、

「性格的特徴は改善できる」
「能力も伸ばせる」と考える人もいます。
これは、「固定思考」に対して、

『成長思考』

と呼びます。

「成長思考」の人は、積極的に努力をし、
改善をし、前向きで楽観的。

ゆえに当然、

”成長もするし、未来もよりポジティブな結果になる”

傾向があります。

そして、どちらのほうが望ましいかと言えば、

『成長思考』

であるのは言うまでもないでしょう。

・自分の可能性を信じられて、
・前向きに取り組めて、
・過去の自分より向上もできて、
・皆からも評価されたほうが

本人にとっても、周りにとっても幸せであるかと。


■しかし、ここで疑問が起こります。

「どうすれば『成長思考』になれるのか?」

という疑問です。

いやいや、成長思考はわかる。
いやいや、それがいいのはわかっているよ。
でも、そう思えないから、ツラいんじゃないか。

「どうすれば”自分の可能性を信じられる”のか?」
「どうすれば”努力すればきっとうまくいく”と思えるのか?」
「どうすれば”自分自身をもっと改善しよう”と思えるのか?」

ここに一つの壁があり、
大きな疑問であり、考えたいことなのです。



そこで、鍵となるキーワードが冒頭の、

【セルフ・コンパッション】

なるキーワードなのです。

聞き慣れない単語ですが、日本語に訳すと

『自分への思いやり・慈悲』

という意味です。


不思議なことに

「自分への思いやり」を持ってあげると、

人材開発の面でも、個人の人生においても、
様々なプラスが現れることがわかりました。



■こんな実験が行われたのです。

それは、テキサス大学の准教授である、
クリスティーン・ネフ氏による実験です。



ある被験者に対して、

『自分自身の最大の弱点を考えてもらう』
(自信がない、不安、内気である、人間関係が不安定など)

というワークをしました。

その後、被験者を3つのグループに分けて、
以下のような指示で文章を書いてもらったのです。



グループ1は、「思いやり」グループ。

「自分の弱点に”思いやりと理解”という視点で自分自身に語りかけています。
 あなたはどんな言葉をかけますか?」

と問うて、文章を書いてもらいました。


グループ2は、「強み重視」グループ。

「自分の弱点に”自分の良いところ(悪いところではなく)”を証明するという視点で、
 自分自身に語りかけています。どんな言葉をかけますか?」

と問うて、文章を書いてもらいました。


グループ3は、「何も書かない」グループ。

ただ、弱点を上げただけで終了しました。


、、、そして、グループ1~3について、

『自分の弱点をどう捉えるか?』

について質問をしてみました。

そして

{1}「その弱点は、自分の性格的ものだから変えられない」(『固定思考』寄りの答え) 

または、

{2}「その弱点は、努力によって変えられるものである」(『成長思考』寄りの答え)

どちらに回答が振れるのか、調べてみたのでした。


■すると、面白いことがわかったのです。


【自分に”思いやり”を持って言葉を書いたグループ1は、
 優位に『成長思考』寄りの回答になった】


というのです。

つまり、

自分に「思いやり」を持つと、
(=セルフ・コンパッションを持つと)

『「成長思考」が鍛えられる』

ことがわかりました。

不思議なもので、自分に「思いやりや理解の心」を持つと、

・自分に正直でいられるようになる
・自分の悪いところもそのまま受け止められるようになる
・その上で、自分を改善良くしようと思える

そんな効果があるという事実がわかったのでした。


■私達は、個人であれ、組織であれ、
ほとんどの人が「もっとよくなりたい」と願っているはずです。

でも、

途中で諦めてしまったり、
自分はムリだと思ったり、
どうせ変わらないと投げ出したり、
「良くなろうとする努力」をできないことがあります。

もしそうだとしたら、それは、

”自分に対しての「思いやりや理解」”

が足りていないのかもしれません。

友人や家族だったら

「うんうん、そういうこと、あるよね」

と励ませても、不思議なもので、
自分のことになると途端に許せなくなったりします。

でも、それは、「自分にとってもマイナス」であり、
「社会にとってもマイナス」なのです。


・自分に「思いやり」を持てない。
 ↓
・自分なんて変わらないと、
 「固定のマインドセット」になる
 ↓
・自分の弱点が「改善されない」
 ↓
・自分が成長しないことは、周りにも影響を与える
 ↓
・すなわち組織や社会にとっても損失になる


そんな構造になるとも言えるのです。



■また「自分に思いやり」を持てない人は、
他人への態度にも”リンク”をします。

ゆえに、

「自分への思いやり」

は甘えや怠慢ではなく、

・誰かへの影響力を磨くという文脈でも、
・自分自身が現実を受け止め、改善するという文脈でも、

とても大切なキーワードである、と思うのです。



そして、自分が「思いやり」を持ち、自分の可能性を認められ、
そして、弱みを改善し、強みを大きく伸ばせたのであれば
それは、家族に、組織に、社会に還元されます。

だからこそ、『セルフ・コンパッション』が大切、
そんなことを思った次第です。

ゆえに、


【「自分に思いやり」を持つことは、世の中のためになる】


のだろうな、そのなことを思った次第。

人材開発・組織開発の観点からも、
とても大切なことだな、と思いました。


最後までお読みいただきありがとうございました。
今日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

弱い者ほど相手を許すことができない。
許すということは、強さの証だ。

マハトマ・ガンディー(インドの弁護士・社会運動家)
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