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1963号 2019年7月7日

フィードバックの「8割褒めて2割指摘する」が効果的である理由

(本日のお話 3054字/読了時間3分半)


■こんにちは。紀藤です。

先日金曜日は、午前に1件の打ち合わせ、
また「ストレングス・ファインダー」講座の
研修サポートに参加してまいりました。

ストレングスファインダーも本当に深い内容で、
学べば学ぶほど、唸らされます。
さらに深め、磨いてまいりたいと思った一日でした。



さて、本日のお話です。

先日、ある企業の役員の方とお話ししている中で、
「メンバーへのフィードバック」について話があがり、
そのお話を聞きながら思うことがあったのでした。

本日は、その「フィードバックのポイント」について、
思うところをお伝えできればと思います。

タイトルは、


【フィードバックの「8割褒めて2割指摘する」が効果的である理由】


それでは、どうぞ。


■先日、普段からお世話になっている、
とある上場企業の役員の方とお話をしている中で、
こんなお話を聞かせてくれました。


その役員の方が、ご自身の母上と、
”仕事の気づき”を共有した、というエピソード。


「今まで、メンバーの欠点や改善点ばかり指摘してきたけども、
 それは間違っていたと気付いた。
 最近は、5割を褒めて、5割指摘するようにしているんだよ」

そう母親に語ったそう。
すると、母親曰く、


「何言ってるの。8割褒めて、2割指摘じゃないとダメよ」


と、一蹴された、、、そんなお話でした。

笑いながらお話しされていましたが、
大変印象的かつ、的を射た話だよな、と思ったのでした。


■かの有名な海軍大将であった、
山本五十六曰く、


『やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ』


と語ったように、
「褒める」「その人の努力を認める」ことの重要性は、
昔から語られてきたようです。


ちなみに、あまり知られていませんが、
その後に続いている「全文」もかなり深いです。

その続きとは、

『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
 やっている、姿を感謝で見守って、 信頼せねば、人は実らず。』

と続きます。

つまり、「承認」「傾聴」「感謝」「信頼」、、、
これらのキーワードは、時代を超えて大切なことだった、

と言えるのかもしれません。


■ちなみに、「指摘しすぎてしまう上司」「欠点・改善点ばかり見てしまう上司」。

これが、実はメンバーの「モチベーション・ダウン」において、
極めて大きな影響与えていると新聞でも取り上げられました。

2年前の新聞になりますが、
2017年5月の日経新聞によると、日本において

”『熱意ある社員は6%のみ」で先進国最下位クラスである”

というショッキングな記事が出ました。

かつ、やる気のない社員が70%、
周囲に害悪をもたらすようなネガティブな影響を与える社員は24%いる(米ギャラップ調べ)。

そんな記事でした。

そして、その原因の大きな要因となっているのが、

「指示、命令型のリーダー」
(=お前のここがダメなんだよ、ここをこうしろ、ああしろという、
  上意下達型、弱み着目型マネジメントスタイル)

であるとも述べました。

そんな文脈を踏まえても、
「褒める」「認める」というのは、
今の世代のマネジメントに重要なキーワードである、

とも言えるのでしょう。


■、、、というような
”それっぽい事実の話”を確かに一つの事実。

でも、そのよく言われる話を、
一旦置いて考えてみても、


”フィードバックを受け取る側(=メンバーでも、上司でも、同僚でも)の気持ち”

を考えてみると、

「まず認める」「承認する」。
それを8割たっぷりやって、

それから「指摘」「欠点などを正す」
というように2割程度行う、

というのは、実はとても”合理的”ではないかと思ったのです。


■なぜそう思うかというと、
人は年齢や立場にかかわらず、

「自分のことを否定された(と感じた)ときに、
 ”感情的に(ここが重要)受け止めづらい」

と思うからです。


人は「自己愛」や「自己防衛」が働く、
すなわち、「自分が正しい」と思いたい生き物なので、

「するどい指摘・否定」を、
冷静に受け止め改善できるほど
実は大人ではないのではないか、と思うのです。

口では「わかりました」といっても、
本当の本当に、受け止められているのか、ということ。


もちろん、そのレベル感により、
厳しい叱責も必要なときもあります。
なんでもかんでも「承認」も違うでしょう。


でも、「改善」「指摘」から入った場合、
本当に、上司の改善が心に届くのでしょうか?

例えば営業のシーン。

上司と部下が同行営業をして、
一生懸命チャレンジした不器用な部下に対して上司が、
こういったとします。

「さっきの商談、ここが良くなかったね」
「あの言い方は、ないよね」
「そういえばあの商品説明、わかりづらかったよね」

と部下に伝えて、

「まあ、空気づくりはよかったね」

と褒めて、

「ロープレで、説明練習してみようか」

と言われたとしたら、どうか。

やっぱり、

”最初に否定から入ると、感情的に受け取りづらい”

と思うのです。

上司との絶大なる信頼があれば別でしょうが、

(なんだよ、俺も一生懸命やってるんだよ)

という気持ちが、一生懸命やっていればいるほど、
「自己防衛」としてその気持が自然と沸き起こってしまうかもしれない。

そういう気持ちが起こって、
その気持をぐっとこらえて、
「はい、おっしゃるとおりですね」といっても、

(じゃあ、アナタは完璧にできてるんですか?そんなことないよね)

と、「自己防衛」する気持ちが消せない、
拭えない、そして受け取りたくても、
「改善点」を受け取ることができない、、、

そんな場合も、あると思うのです。

(少なくとも私はありました。
 、、、皆さん、どうなのでしょうか?)


■これは、全員に聞いたわけでもなく、
あくまでも私の一推測にすぎません。

もしかしたら、私が幼稚なだけかもしれません。

でも、「8割褒めて、2割指摘」という言葉があるように、
また、山本五十六氏の言葉にもあるように、

やっぱり「承認」「傾聴」「感謝」「信頼」は大事なのです。

そして、その逆の行動としての、

”「否定」から入ったメッセージは感情的に受け取りづらい”

と思うわけです。


■人は、理屈で動いているようですが、
結局は「感情」で動く生き物です。

ゆえに、「感情」が起こった後に、
「その感情に意味付け」をするのです。

・自分が否定をされた
 ↓
・その行為で自分が揺らぐ
 ↓
・自分をつい守ろうとする
 自己防衛をしようとしてしまう(頭でわかっていても)
 ↓
・自分を守るために相手の否定は違う、
 相手が間違っている、ともうひとりの自分が思いたがる
 ↓
・そして素直に受け取れない

、、、という構造に陥りがちである、と思ったのでした。


つまり、伝える側からすると
相手には感情があるし、そして自己防衛と言う気持ちもあるし、
そこをズバッと切りさばいて、すぐに受け止めるほど強い人はそんなにない、

、、、そういうことも、
重々認識する必要があると思ったのでした。



■ということで、話をまとめますと、

「8割褒めて、2割指摘する」。

この順番と言うのは、人間心理を考えたときに、
”受け取りやすさ”を考えた時に非常に効率が良い、

と思われます。


相手を認め、承認し、そして自己防衛のガードを下げる。

相手のことを、努力も含め、受け入れた上で、指摘をする。

そうやって、自己防衛や自己愛を抑えやすく仕立てをして、
感情的に受け取りづらい状況を減らして、伝える。
そうしたほうが、同じ指摘も食べやすいものでしょう。


これも、人のタイプによりますし、
ズバッっと言ってくれたほうが嬉しい人もいますが、

一つ、同じことを伝えるにしても、

『人それぞれ効果・効率が良い伝え方として工夫をすることは大切』

そんなことを思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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<本日の名言>

やさしいことばで相手を征服できないような人は、
きついことばでも征服できない。

アントン・チェーホフ(ロシアの劇作家 1860-1904)
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