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2006号 2019年8月18日

今週の一冊『貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり』

(本日のお話 2316字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日より2日間、友人の経営者仲間と
「自己探求ワークショップ」をひたすら実施。

自分のミッションの作り直し、
上手くパターン、行かないパターンなど、
ひたすら探求しておりました。

これまでも何度もやったことですが、
「自己探求」とはやる度に多くの気付きがあるものですね。

明日からいよいよ仕事も始動。
楽しく頑張りたいと思います!



さて、毎週日曜日は、オススメの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり』
デビッド・ヒューム (著)


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です。

■以前、JICA(国際協力機構)で働く友人から紹介された一冊。

「貧しい人に援助の手を」。

電車の中吊り広告でも、
ちらほら見かけるポスターでも、
あるいはテレビのニュースで見かける貧困問題でも、
誰もが一度は考えたことがあるテーマではないでしょうか。

そしてもし皆さまが、

『貧しい人を助ける理由ってなに?』

と子どもに聞かれたとしたら、
なんと答えるのでしょうか?

この書籍の帯に書かれた、

”日本人さえ豊かでいられれば、それでいいのか?”

という問いに、どのように考えるのか、、、

そんな事を、「理想論」ではなく「現実問題」として、
向き合わせてくれる一冊が、今回ご紹介の一冊です。


■確かに、「貧しい人を助けること」について、
否定する人はいないでしょう。

とはいえ、実際問題を考えて、蓋を開けてみると、
”不都合が現実”があるといいます。

「道徳的理由」(=持てる者が持たざるものを支援すべき) 、
という考えがある一方、反対意見も必ず起こるもの。

例えば、

・先進国の中にだって相対的に貧しい人だっている。
 なぜそれを後回しにして、貧しい国に支援をするのか? とか、

・貧しい国に支援をしても、結局、一部の権力者にお金が横領されて、
 きちんと使われることはない とか。

・「援助をしたい」とはいっても、
 移民が実際に自分たちの国に来るのはやっぱり困る

などなど。

どれだけ「やったほうがよいよね」と総論としては思うことでも、
「賛成意見」と「反対意見」が必ず起こるものなのです。

それが現実でしょうし、一つの教養として、
「一つの世界」に生きる私達は知る必要があるとも思えます。


■では、そんな点も踏まえて、

「貧しい国を支援する理由とは?」

という問いを考えてみると、どうなるのか。

すると、大きく4つの理由が挙げられると著書は語ります。

(以下、ちょっと小難しく聞こえるかもしれませんが、
 ”知識”として簡単に要約させていただきます)



まず、1つが、『道徳的義務』。

一番ポピュラーな理由です。
”全ての人類は慈悲深くなければならない”、という考えです。
「500円で1人のアフリカの子供が薬で救えるのと、
 500円のオシャレなラテを飲むのとどちらを取りますか?」
という問いは、世界共通で、考えさせられるものです。
これが、『道徳的義務』。


そして、2つ目が『道義的責任』。

成熟した先進工業諸国は、未だ現存する「格差の構造」を生んだ。
(植民地主義とか資本主義とかですね)
今の世の中の仕組みを作ったのが「先進国」だから責任があるよね、という話。
搾取してきた国は、ちゃんと面倒見なきゃダメ、ということかと。
これが、『道義的責任』です。


3つ目が、『共通利益』。

貧しい国を助けることできたら、先進国の利益にもなる、という考え。
例えば、移民問題や、麻薬・テロなど国際犯罪も抑制できる一員になる。
つまり貧しい国を助けるのは、自国の政治的問題を防ぐことになる、という考え。
世界は繋がっており、回り回って自分たちに戻ってくる。
これが、『共通利益』。


最後、4つ目が『自己利益』。

著者は「あまり自慢できない、、、」と語る最後の理由。
”貧しい国を対外援助を与えることで「自陣営に取り込む」”という目的での援助。
貧しい国の指導者に開発援助と軍事援助を組み合わせて、味方につける、という目的で、
独裁政権を生んだり、諸々の問題も引き起こすこともある、とのこと。
でも実際あり、強烈な理由になる『自己利益』です。  


以上4つが、良い悪いは抜いて、
「貧しい国を支援する理由」であるそう。


理想的かつ、否定のしようがない1つ目の『道徳的義務』。
ただこれだけで成り立たないのが現実なのです。

ゆえに、理想だけで語るのではなく、
上記の4つを総合的に見て、そして判断する必要がある。

そんな事を考えさせられる論考なのです。



■ちなみに、「グローバル開発センター」という機関が、

『どの富裕国が最も貧しい国を支援していると思うか?』

というアンケートを行ったそうです。。

以下の「7つの支援方法」について質問し、
総合的に判断したとのこと。その7つの支援方法とは、

1,対外援助(ODAなどお金を支援する)
2,貿易の対外開放生
3,地球規模の金融制度への貢献(貧しい国々が金融にアクセスしやすくする)
4,途上国からの移民受け入れ許容度
5,環境への負荷に対する責任のとり方
6,治安改善への貢献
7,技術を途上国で利用可能にするための措置

となります。

結果、どうなったか。

それによると、上位の国々は、
北欧のデンマーク、スウェーデン、ノルウェーなど。

ちなみに、どん尻が、
私たちの国「日本」、そして韓国だそう。


もちろん一つの指標でしかありませんが、
貧しい国々に対する国民の関心度を反映しているのかもしれませんし、
考えさせられるものがあります。


■私が偉そうに言える話でもありませんが、
つい目の前に見えることだけに集中しがちなものです。

しかし、なんだかんだこの島国でも、
「1つの世界」として繋がっている感覚はありますし、
これからその流れはより顕著になっていくのでしょう。

ゆえに、自分たちが未来の子どもたちのために、
何ができるだろうかと考えてみる。

きっと、そのようなディスカッションをしていくことも、
私達にとって一つの責務でもあるのかもしれない、
そんな事を感じさせられる一冊でございました。

かなり現実的な支援や対策が、一般向けに書かれており、
大変学びになる一冊です。

このテーマについてご興味がある方はぜひ。

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<今週の一冊>

『貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり』
デビッド・ヒューム (著)


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