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2508号 2021年1月2日

山本五十六の格言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」を「学習心理学」の観点から紐解いてみた

(本日のお話 2619字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

2021年が始まりましたね!

皆さま、元旦はいかが
お過ごしでしたでしょうか。

私は妻とともに、
近所の神社に初詣に出かけたところ
大変な行列ができておりました。

(、、、なので、そのまま
Uターンして帰りました苦笑)




さて、本日のお話です。

現在、大学院受験のために
年末年始のお休みも
割と読書をしております。


読んでいる本の中で、

『企業内人材育成 ー人を育てる心理・教育学の基本理論を学ぶー』
(編著:中原淳)

なるものがありますが、
堅苦しいタイトルに反して(笑)
なんとも面白い。


特に、その中で紹介されている

「熟達化のステップ」

になるほどなあーと
実に納得したのでした。

今日はそのお話について
学びと気付きを、皆さまに
ご紹介させていただければと思います。


タイトルは、



【山本五十六の格言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」を
「学習心理学」の観点から紐解いてみた】



それでは、どうぞ。




■世の中に、
有名な格言はたくさんありますね。

その中でも
特に有名な格言があります。


そんな超有名な格言の一つが、
連合艦隊司令長官、
山本五十六の残した人材育成に関する格言でしょう。



『やってみせ、言って聞かせて、
させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。』



、、、おそらく
耳にしたことがある人も
少なくないのではないでしょうか。


改めて見返しても、

「確かにその通りだよなあ」
「言い得て妙だなあ」

と唸らされます。

世の中の人を育てる立場にある多くの方、
あるいは、育てられる立場の方も、
実に納得する格言かと思います。




■さて、そんな山本五十六氏の格言を
頭に置きつつ、

先日読んでいた
『企業内人材育成入門』の中に、
ある「学習心理学」のお話が紹介されていました。



ちなみに学習心理学とは、

・人はどのようにして学ぶのか?
・心理学的に効果的な学ぶ方法とは?

などを研究してきた、
その歴史が100年ほどの
まだまだ新しい研究分野です。



■そんな学習心理学に関わる話で、

アメリカの認知学者ジョン・S・ブラウンや
アラン・コリンズらによって提唱された、


『認知的徒弟制理論』


という理論があります。


なんだか小難しそうな響きですが、
至ってシンプルな話。


要は、

人間社会で古くから存在する
”徒弟制(いわゆる師匠と弟子)”に着目して、


「熟達者(=師匠)は学習者(=弟子)に
どのように支援をするとうまくいくのか?」


について
認知科学の観点から理論化した、
というお話。



■では、どのような理論なのか?


この『認知的徒弟制理論』は、
学習者の支援において、
4つのステップを踏むと言われます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<認知的徒弟制の4つの支援のあり方>

1)モデリング …熟達者が模範を示し、学習者はそれを見て真似る

2)コーチング …熟達者が手取り足取り学習者を支援し、助言する

3)スキャンフォルディング… 自分でできるところは学習者に独力でやらせてみて出来ないところだけを支援する

4)フェーディング… 段々と支援を少なくしていき、学習者を自律に導く

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


とのこと。


感覚的に、そういうのあるよねー、
というのを研究や理論により
誰もが使えるようにするものが、
科学や研究の面白いところです。




■さて、サラリと見てしまうと、

「ふーん、そうだよね」

はい、おしまい。

となってしまうかもですが、

よくよく注視してみると、
先ほどの山本五十六氏の格言は
まさしくこれに当てはまっていますね。




・「やってみせ」、→ 1)モデリング

・「言って聞かせて、」→ 2)コーチング

・「させてみて、」→ 3)スキャンフォルディング

・「ほめてやらねば、人は動かし」→ 4)フェーディング



ではないか!!…と。


この共通性に、
勝手に感動を覚えておりました。



■更に言えば、

この認知的徒弟制理論が提言されたのは、
1980年代となります。

つまり、

”山本五十六氏が
感覚的に分かっていたことを
「認知的徒弟制」が、理論化した”

ということになります。



■、、、で、それがどうしたの?

と言われないで下さい(汗)

実はこの2つの共通点を
あえて知ることはとてもよい
メリットがあるのです。



■これまた学習心理学の話ですが、

心理学者ジェロム・ブルーナーは
人間の認識には2つの思考様式が存在するとしました。

つまり、

「人が学ぶときに2つのアプローチがある」

というのです。


それは、

1)論理ー科学様式(パラグマティックモード)

2)物語様式(ナラティブモード)

というものです。


補足をすると

1)論理—科学様式(パラグマティックモード)は

・普遍的な真理性と論理的一貫性を求め、
簡潔な分析・理路整然とした仮説を導く思考様式。

で、

2)物語様式(ナラティブモード)

・「もっともらしさ(迫真性)」を求め、
人間の意図や行為、人間の体験する苦境やドラマを含む
出来事の変転を取り扱う思考様式

とされています。



そしてポイントは、

”上記の「論理」と「物語」の両面を、
それぞれ相互補完的に学ぶことで
人の学びはより深まっていく”

というところなのです。


論理的、科学的モードで
理屈だけで攻めても、「ふーん」となるし

もっともらしいエピソードの
物語モードだけで攻めても「で?」となる。

でも、どっちもそろったら
「なるほどね!」となる確率が高まるのです。




■そう考えると、

山本五十六の

『やってみせ、言って聞かせて、
させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。』

は「物語様式(ナラティブモード)」だし、



認知科学者コリンズの

『認知的徒弟制理論』

は「論理ー科学様式(パラグマティカルモード)

となります。


その両面から
相互補完的に理解することで、

理論と感情の
どちらからも説得力を感じられ、

「人を育てる原則」についても
より深く、多面的に理解することができて、
学びが深まることになるわけです。




■「人を育てる」とか、
「教える」というのは、

誰もが多少なりとも関わる領域のため、
感覚や経験則だけになりがち。


でも、
「山本五十六の名言で…」
だけではなく、

実証研究や論理的なアプローチからも
理解し、語れることで、

多くの人にとって
曖昧な人材育成も納得できて、
活用できるものになるだろう

と思ったのでした。



論理と物語、
左脳と右脳、

どちらからも語れることで
得られるものはたくさんありそうですね。

そしてそのようにありたい、
と自戒を込めて思った次第。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>
やってみせ、言って聞かせて、
させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

山本五十六(27代連合艦隊司令長官/1884-1943)

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