「強みの使いすぎ」は、偏ったリーダーシップを引き起こす ー論文レビュー
(本日のお話 2256文字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き、宮崎に来ております。
昨日は執筆、そして12kmのランニングでした。
*
さて、本日のお話です。
本日は強みに関する論文のご紹介です。
性格の強み(VIA)の文脈では、「強みの使いすぎ/使わなさすぎ」が問題になりやすく、「強みは中庸で使うべきである」という指摘が、これまで多くの研究者によってなされてきました。
今回ご紹介する論文は、米国のエグゼクティブのリーダーシップ開発を行う企業、Gallupのクリフトンストレングスを活用し、「強みの使いすぎ」という現象が本当に起きているのか、そしてそれがリーダーシップの評価にどのような影響を与えるのかを検証したものです。
結論から言えば、やはり自分の強みに偏って行動するリーダーは、リーダーシップのバランスを欠きやすいことが示されました。
既存研究の流れを強く後押しする、非常に示唆に富んだ研究です。
それでは、早速中身を見てまいりましょう!
■今回の論文
英語タイトル: Strengths, strengths overused, and lopsided leadership
日本語タイトル: 強み、過剰な強み、そして偏ったリーダーシップ
掲載誌: Consulting Psychology Journal: Practice and Research, Vol.63, No.2, 2011
著者: Robert B. Kaiser / Darren V. Overfield
所属: Kaplan DeVries Inc.(カプラン・デブリーズ社)
■30秒でわかる本論文のポイント
・本研究は、管理職が自身の強みを過剰に発揮することで、かえってリーダーシップのバランスを崩す可能性を検証した研究です。
・110名の管理職を対象に、クリフトンストレングスと360度評価(LVI)を用いて分析した結果、強みに該当する行動は「やりすぎ」と評価される確率が約5倍高いことが示されました。
・強みは万能ではなく、行き過ぎることで弱点へと転じることが、実証的に示されました。
■研究の概要
◎研究目的/背景
・ポジティブ心理学の普及とともに「強みに基づく開発」が広がる一方で、リーダーシップ研究では古くから「脱線(≒やりすぎ/やらなさすぎ)」の問題が指摘されてきました。
本研究は、強みの活用がこの脱線とどのように関係するのかを、概念的・実証的に検証することを目的としています。
◎方法
・デザイン: 横断研究
・参加者: 管理職110名(主に中間管理職、男性中心)
・測定ツール:
1.リーダーシップ行動: LVI(Leadership Versatility Index)を使用 。独自の「少なすぎる/多すぎる」評価尺度を用いて、本人および計1,396名の同僚(上司・同僚・部下)が評価した。
2.個人の強み: ギャラップ・クリフトンストレングスを使用し、上位5つの強みを特定した。
・分析方法: ストレングスファインダーのテーマと、LVIの4つのリーダーシップ次元(力強い、支援的、戦略的、運用的)との概念的な関連性を予測し、強みが「上位5位以内」であるかどうかが「過剰(やりすぎ)」や「不足(少なすぎる)」の評価と関連するかを統計的に検証した。
■主な結果
◎わかったこと1:「強みの過剰使用」はやはり起こっていた
・管理者は、自身の強みに関連するリーダーシップ行動を過剰に行う可能性が、強みを持たない管理者と比較して5倍高かった。11の予測のうち10で統計的な有意差が認められた。
◎わかったこと2:「過剰である自己認識」は本人にもあった
「やりすぎ」と評価された管理者は、自覚症状として「不足している」と感じているという仮説(制御理論に基づく予測)は支持されなかった。
実際には、同僚から過剰と評された管理者は、自己評価でも過剰と認識する傾向が強かった。
◎わかったこと3:「偏ったリーダーシップ」が起こっていた
強みと対立・補完関係にある行動を怠る(不足する)可能性は1.23倍高く、一部の項目で有意な関連が認められたが、強みの過剰使用ほど一貫した結果ではなかった。
「達成欲」が高いと、「強圧的リーダーシップ」が過剰になる傾向がある
「ハンマーが大きければ大きいほど、あらゆる問題が釘に見える」という言葉通り、才能は純粋な賜物ではなく、度を越せば有害になり得ることが示された。
■実践に活かすヒント
・強みの活用は「伸ばす」だけでなく「抑える」視点も持つこと。
・「やりすぎ/足りなさ」を区別できるフィードバック設計が重要である。
・コーチングでは行動の背景にある不安や執着にも目を向ける
■まとめと感想
強みを活かす、という言葉はとても魅力的です。
しかし本研究を読むと、無邪気に「弱みは放っておいて、強みだけに注目しよう」と言い切ることの危うさも、同時に見えてきます。特にリーダーシップの文脈では、成果だけでなく周囲との関係性や全体のバランスが問われます。
本論文の中で、このように考察されていたのが印象的です。
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強みを過剰に発揮する効果は非常に頑健であり、対立する行動を過少に行う効果よりも、約4倍も強い。
この結果は、管理者が「自然にできること」に熱中しすぎるあまり、バランスを欠いたリーダーシップに陥るリスクを浮き彫りにしている。
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実際に、ストレングス・ファインダーでは資質(強みのもと)を使いすぎることによる難しさを感じる人のほうが、ずっと多い印象があります。
強みはただ発揮しまくればよい、という直線的な発想ではなく、状況に応じて強弱を調整する力こそが、「強みを磨く」ことであり「成熟した強みの使い方」なのでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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