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4489号 2026年6月10日

「強みに基づくリーダーシップ」が最も効くのは誰なのか?

(本日のお話 2577字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

先日は、午前中が大学のリーダーシップの授業。
午後から高校のリーダーシップの授業でした。

高校生については、前期の授業の集大成となる
「社会人&大学生ゲストの前での成果発表」という内容でしたが、

短い時間での準備にも関わらず、しっかり仕上げており、
プレゼン&質疑応答も立派にやり遂げていて、
「後生畏るべし…」と密かに思っていたのでした。

また、午後はスーパーマーケットと
不動産事業の社長などとお食事会でした。



さて、本日のお話です。

今日も「強み」に関する論文をご紹介したいと思います。

テーマは「強みに基づくリーダーシップが、パーソン・ジョブ・フィット(PJ-fit:個人と仕事の適合度) をどれほど高めるのか」というものです。

「仕事と人が噛み合っている感覚」というのは、職務満足感やワークエンゲージメント、組織へのコミットメント、離職率の低下に深く関わると言われています。
では、その「噛み合い」は、どのようにして生まれるのでしょうか。

それらの問いを「強みに基づいたリーダーシップ」という観点から紐解いている興味深い研究です。
ということで、早速中身を見てまいりましょう!

■今回の論文
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・英語タイトル: Enhancing person-job fit: Who needs a strengths-based leader to fit their job?
・日本語タイトル: 個人と仕事の適合(Person-Job Fit)の向上:どのような人に仕事を適合させるためのストレングスベースのリーダーが必要なのか?
・掲載誌と出版年: Journal of Vocational Behavior, 154巻 (2024年), 104044
・著者: Marianne van Woerkom, Robin Bauwens, Sait Gürbüz, Evelien Brouwers
・所属機関:ティルブルフ大学 人材開発研究部門(オランダ)/ハンゼ応用科学大学 国際ビジネススクール(オランダ)/ティルブルフ大学 TRANZOケア・ウェルビーイング科学センター(オランダ)
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・上司が部下の強みを特定・活用・開発する「強みに基づくリーダーシップ」は、部下のパーソン・ジョブ・フィット(個人と仕事の適合感)を高める

・そのメカニズムは「強みを実際に使う機会が増えること(強みの使用)」が媒介している

・ただし、プロアクティブ・パーソナリティ(主体的に行動する傾向)が高く、かつ仕事の自律性も高い従業員は、リーダーへの依存度が低く、リーダーシップの効果が弱まる

・つまり、このリーダーシップが特に重要なのは「自律性が低い」または「主体的に動きにくい」環境にいる人たちである

■研究の背景と目的

「個人と仕事の適合度(パーソン・ジョブ・フィット、以下PJフィット)」は、仕事への満足感やエンゲージメントを高め、離職率を下げる重要な要因として知られています。

しかし従来の研究は、どちらかというと「従業員が自分を仕事に合わせていく」という視点から捉えられてきました。
ジョブ・クラフティングや自己調整など、個人の努力を前提とした枠組みが中心でした。

この研究はそこに一石を投じます。

「従業員だけに適合の責任を負わせるのは、理論的にも現実的にも限界があるのではないか」

ということです。

こうした背景から、本研究は次の問いを立てました。

「上司が部下の強みに合わせて働きかけることで、PJフィットは高まるのか? そして、それはどんな人に特に機能するのか?」

この後詳しくお伝えしますが、このPJフィットを、「DAフィット」「NSフィット」という2つの側面から測定していく、という研究の設計になっています。

■研究の方法

◯サンプリングとデータ収集:
オランダの代表的なオンラインパネル(LISSパネル)から、従業員50人以上の中堅・大企業に勤務する労働者をランダムに抽出。

◯調査デザイン:
2ヶ月の間隔を空けた3回(3波)の縦断的調査を実施(2021年9月〜2022年1月)。
最終的に308名から計906の個人内タイムポイント(データポイント)を確保しました。

◯主な測定尺度:

・ストレングスベースのリーダーシップ(T1–T3で測定)

・強みの使用(T1–T3で測定)

・DAフィット(要求-能力の適合)
ー「仕事 ➔ 自分」の方向性。 仕事が求めてくる「要求(Demands)」に対して、自分の「能力(Abilities)」がどのくらい通用しているか、という適合度

・NSフィット(ニーズ-供給の適合)
ー「自分 ➔ 仕事」の方向性。 自分が仕事や会社に求める「ニーズ(Needs)」に対して、実際の仕事環境や待遇がどれくらい「供給(Supplies)」してくれているか、という適合度

・プロアクティブ・パーソナリティおよび仕事の自律性(T1で測定、個人間の比較的安定した特徴として扱う)

■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:強みに基づくリーダーシップは、NSフィットを高める

直接効果(仮説1): 強みに基づくリーダーシップは、個人内レベルでNSフィットに対して直接的な正の効果(b = 0.16, p < .001)を示しましたが、DAフィットに対する直接的な効果は有意ではありませんでした(b = 0.01, p = .657)

◯わかったこと2:強みの基づいたリーダーシップは強みの使用を高め、PJフィットを高める

媒介効果(仮説2): 強みの基づいたリーダーシップは強みの使用を高め(b = 0.29, p < .001)、その強みの使用がDAフィット(b = 0.11, p < .001)およびNSフィット(b = 0.09, p < .001)を高めていました 。
これにより、強みの使用を介した間接効果(媒介効果)が双方の次元で有意に支持されました 。

◯わかったこと3:強みに基づくリーダーシップが、最も必要な人は誰なのか
3元相互作用(仮説3 - リーダーシップの代替効果): リーダーシップ × プロアクティブ・パーソナリティ × 仕事の自律性の3元相互作用が、強みの使用に対して有意に負の効果を示しました(b = -0.06, p < .010) 。
すなわち、「プロアクティブで、かつ仕事の自律性も高い」従業員においては、リーダーシップが強みの使用に与える影響が著しく弱まりました(代替効果の証明) 。
逆に言えば、このリーダーシップが死活問題になるのは、「自律性が制限されている環境にいる人」や「主体的に動くことが苦手な人」 と言えます。

■まとめと感想

この論文の魅力が「シンプルな答えを出さなかった」ことだと感じます。

強みに基づくリーダーシップは有効である…以上!、で終わらず、
「誰に」「どんな状況で」「どんな経路で」機能するのかを丁寧に解きほぐしているところが唸らされました。

一つの現象の背景には、複雑な要因が重なり合っています。

・個人の特性(プロアクティブ・パーソナリティ)。
・環境の要因(仕事の自律性)。
・マネジメントの働きかけ(強みに基づくリーダーシップ)。

こうした複数の要因を組み合わせて検証した点が、非常に現場感のある研究だと感じました。

特に印象に残ったのが、「強みを活かせる上司の働きかけは、自律性が低く、主体的に動くことが難しい人に対して特に機能する」という結論です。現場をイメージするとよくわかります。

自分でどんどん動ける人は、上司がどうであれ、自分で適合を見つけていく。
でも、なかなか動き出せない人、裁量が与えられていない環境にいる人こそ、「あなたの強みはここにある」と示してくれるリーダーの存在が大きな意味を持つというのは実に納得でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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