「これ、ほんと?」と一瞬考えると、誤情報に踊らされなくなる ーマサチューセッツ工科大学らの研究ー
(本日のお話 3455字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、2件のアポイント。
また、外部支援をさせていただいている企業との定例ミーティングなど。
夕方に5kmのランニングと、その後、お世話になっている人事仲間の方との会食でした。
最近、やや睡眠不足気味です…汗
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さて、本日のお話です。
突然ですが、皆さまは、「騙されやすい」でしょうか?
私は、お恥ずかしながら、結構、騙されやすい人間でした。
思えば、若い頃に「詐欺」に引っかかったこともあります。
20代の頃、どこかで怪しい偽物の時計を売りつけられたことがあったり、あるいは、大学のときに愛媛出身の友人から「愛媛はみかんが余りすぎて、みかん専用の蛇口がある」という話を聞いて、本気で信じてしまったり…。
自分で言うのもなんですが、つくづくバカだなあと(苦笑)。
さて、物事を分析的・論理的に見るこの思考は、クリティカルシンキング(批判的思考力)と呼ばれることがあります。
今やその力は、巷で溢れる「フェイクニュース」を含め、情報を適切に取捨選択するために重要な能力となっています。
実際、近年では「フェイクニュース」によって、虚偽の情報が人々の間でシェアされ、拡散されています。
事実無根のことが、まるで事実であるかのようになってしまい、誰かが傷ついたり、社会的な問題に発展したりする。
そういう場面を、私たちは何度か目にしてきているここ最近ではないかと思います。
そんな中、今日ご紹介する論文は、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究グループが、「正確性プロンプト」と呼ばれるシンプルな介入手法が、誤情報の拡散をどれほど抑制できるかを、
20の実験・約2万7000人のデータをもとに検証したものです。
その結果が、なかなか興味深いものでした。
ということで、早速みてまいりましょう!
■今回の論文
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・タイトル:Accuracy prompts are a replicable and generalizable approach for reducing the spread of misinformation(正確性プロンプトは、誤情報の拡散を抑制するための再現可能かつ一般化可能なアプローチである)
・出版:Nature Communications, 2022年
・著者:Gordon Pennycook, David G. Rand
・所属:レジャイナ大学 ヒル・レヴィーン・ビジネススクール/心理学部(カナダ)、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院(アメリカ)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・「これは本当だろうか?」と問いかける「正確性プロンプト」という介入が、フェイクニュースの拡散を抑制する効果を持つ
・2017〜2020年に実施された20の実験(計約2万7000人)のメタ分析により、その効果の再現性と汎用性が確認された
・正確性プロンプトは偽ニュースへの共有意図を対照群と比べて約10%低下させた
・効果は政治・COVID-19どちらのニュースでも変わらず、性別・人種・政治的イデオロギーによる差もほとんど見られなかった
・SNSプラットフォームや公共啓発への実践的応用が期待できる
■なぜ、人は騙されながらシェアしてしまうのか
そもそも、なぜ人は虚偽のニュースをシェアしてしまうのでしょうか。
研究者たちは面白いことに気づいていました。
実は、私たちはニュースの真偽を判断する能力自体は持っている。
そのため、正確性を評価するよう求めれば、かなりの精度で真実と虚偽を見分けられる。
ところが、シェアするかどうかを判断する瞬間には、その能力が十分に活かされていない。
つまり、問題は「騙されやすさ」よりも、「正確性への不注意」にある、と考えたのでした。
この研究が注目したのはその点でした。
「正確かどうか」という視点を意識の前面に引き出すことができれば、人々はもともと持っている識別能力を自然に発揮し、虚偽のニュースを安易にシェアしなくなるのではないか。
そのような仮説のもとで積み上げられた実験群が、今回のメタ分析の対象となっています。
■正確性プロンプトとは何か
「正確かどうか」という視点を意識の前に出すものが、研究で用いられた「正確性プロンプト」というものです。
まず最も多く検証されたのが「正確性評価(Evaluation)」です。
以下のような内容です。
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「この見出しは正確だと思いますか?」と評価を求める
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これだけです。
これを、政治やCOVID-19とは関係のないニュートラルな見出しを1つ提示し、ニュースのシェアをするかどうかの判断するタスクの前に、問いかけるのです。
他にも、以下のようなパターンが「正確性」を意識させる取り組みで、検証をしました。
・「正確なニュースだけを共有することは、あなたにとってどの程度重要ですか?」と聞く(=重要性への問いかけ)
・「多くの人が正確性を重視している」と伝える(=社会的規範の提示)
・共有前に「一度立ち止まって正確性を考えよう」と促す(=30秒の啓発動画)
・「見出しを疑う」「情報源を確認する」と伝える(=デジタルリテラシーのヒント提示)
形式は違えど、いずれも「これは本当だろうか?」という問いを意識の表面に引き出すことを狙った介入です。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:正確性プロンプトは「虚偽ニュースのシェア」を減らした
20の実験(被験者総数26,863名)のメタ分析の結果、正確性プロンプトは「共有の識別力」を対照群と比べて71.7%引き上げたことが示されました。
この識別力とは、真実のニュースと虚偽のニュースへのシェア意図の差のこと。
その差が大きいほど、人々が正確性を重視してシェアを判断していることを意味します。
そして、この効果の中心を担ったのは主に虚偽のニュースに対するシェア意図の低下でした。
対照群と比べておよそ10%の減少が確認されています。
一方で、真実のニュースへのシェア意図には有意な変化が見られませんでした。
正確性プロンプトは、人々をただ懐疑的にしたわけではなく、虚偽の情報への反応を適切に変えたのだといえます。
◯わかったこと2:効果は幅広い対象・状況において一貫していた
もう一つ重要な発見は、この効果の「再現性」と「一般化可能性」です。
政治ニュースとCOVID-19関連ニュースの間で効果量に有意な差はなく、実験セッション中(最大30試行)を通じて効果が減衰することもありませんでした。
個人差についても見てみると、性別・人種・政治的イデオロギー(保守・リベラル)・党派性による顕著な調整効果は確認されませんでした。
つまり、「保守的な人には効かない」「リベラルな人にだけ効く」といったことはなく、幅広い層に対して一定の効果が確認されたのです。
(一方で、年齢が高いほど、また思慮深く(認知反射テストのスコアが高く)、注意力の高い参加者ほど効果が大きい傾向も示されています)
◯わかったこと3:プロンプトは自律性を損なわずに機能する
この研究がひとつ強調するのは、正確性プロンプトが「押しつけ」ではない、という点です。
プラットフォーム側が「これは真実だ」「これは虚偽だ」と判定して表示するのではなく、ユーザー自身の識別能力を呼び起こし、判断を委ねる。
これは、プラットフォームが「真実の仲裁者」にならなくても機能するアプローチであるということを意味しています。
■まとめと感想
今の情報環境を振り返ると、ニュースの一部だけが切り取られてショート動画に仕立てられたり、誰かの発言の文脈が削られて過激に見せられたりといった情報が、あちこちで目に入ります。
そうした情報の洪水の中で、私たちは日々、無意識に「シェアするかどうか」を判断しています。
この研究が示してくれたのは、そうした瞬間に「これは本当だろうか?」とひとつ問いかけるだけで、社会全体の誤情報への感度が変わっていくかもしれない、という可能性でした。
SNSの投稿文中に一文「この情報は正確ですか?」と添えるだけでも、受け取った人の注意が変わる。
そうした小さな実践が、実は積み重なるとずいぶん意味を持つのかもしれません。
昔の私のように、素真面目すぎてうっかり騙されがちな方は、ぜひこの「正確性プロンプト」を日々の習慣として意識してみてはいかがかと。
情報を受け取るたびに、少しだけ立ち止まる。
それだけで、世界の見え方がちょっと変わるかもしれませんね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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