親切にするなら、見知らぬ人より「身近な人」がよい?! ―デュッセルドルフ応用科学大学らの研究ー
(本日のお話 2654字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
来月、再来月と、
勢いで申し込んだ学会でのポスター発表について、
(強みの尺度開発と、その成果について発表する予定です)
無事発表できることが決まり、安心いたしました。
なんと、入会したつもりが、入金ができておらず
発表できないかも…となり、詰めの甘さに悲しくなっておりましたので…。
色々と新しい経験ができそうで、楽しみです。
*
さて、本日のお話です。
今日は「親切」をテーマにした
ある論文をご紹介いたします。
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人に親切にすること。
そして、それが自分自身の幸福にもつながる。
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実は、この話は、ポジティブ心理学の世界では実証された有名な話です。
けれど、ふと(ちょっとマニアックな)こんな疑問が浮かびました。
「親切にする相手って、誰でもいいのだろうか?」
…と。
私自身、電車でお年寄りに席を譲ったりすることは、しばしば行います。
でも一方で、家族や親しい友人に対してはどうか。
「近い距離だから、わかってくれている」
そんな甘えが出て、
意外とぞんざいに接してはいまいか。
知らない人には優しくできるのに、身近な人には素っ気ない、
そんな自分を振り返るとき、少し引っかかりを感じていました。
そんな理由もあり、研究の観点から、
「誰に親切にすること」が重要なのか(特に効果があるのか)について、
気になって調べてみました。
今回はそれを直接調べた研究をご紹介してみたいと思います。
タイトルは、「私は誰に親切にすべきか?」という論文です。
それでは、早速みてまいりましょう!
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<今回の論文>
・タイトル:To whom should I be kind? A randomized trial about kindness for strong and weak social ties on mental wellbeing and its specific mechanisms of change
(私は誰に親切にすべきか?強い社会的絆と弱い社会的絆への親切行為が精神的ウェルビーイングに与える影響とその変化のメカニズムに関するランダム化比較試験)
・出版:International Journal of Wellbeing, 11(4), 1-23.(2021年)
・著者:Leonie Wieners, Mirjam Radstaak, Llewellyn Ellardus Van Zyl, Marijke Schotanus-Dijkstra
・所属:応用科学大学(ドイツ・デュッセルドルフ)、トゥウェンテ大学(オランダ)、ノースウェスト大学(南アフリカ)、ゲーテ大学(ドイツ・フランクフルト)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・親切行為の「受け手が誰か」によって、
その効果が変わることを初めて実験的に検証した研究である。
・家族や友人などの「身近な人(強い絆)」への親切は、
精神的ウェルビーイングとポジティブな関係性を有意に向上させた。
・見知らぬ人(弱い絆)や対象不特定の親切、
そうした効果は統計的に確認されなかった。
・「週1回の親切の日」を設けるという現実的な介入設計が、
実用性の高いモデルを示している。
■なぜ「誰に親切にするか」が問題になるのか
今回の研究の対象者になった「大学生」という時期は、
自立への移行期である一方、孤独感やプレッシャーにさらされやすく、
精神的なストレスのリスクが一般成人の約3倍に達するとも言われています。
そうした状況のなかで、
「親切行為」をはじめとする「他者のためになる行動」が、
本人のウェルビーイングを高めるという研究は以前から存在していました。
…ところが、従来の研究の多くは「誰に親切にするか」を特定していませんでした。
漠然と「親切にしましょう」と伝えるだけで、
受け手のことは、参加者任せでした。
本研究はここに注目しました。
「受け手が誰かによって、効果は変わるのだろうか?」
という問いを立て、
ランダム化比較試験(RCT)という厳密な方法で検証しています。
■どのように調べたのか ー研究の方法ー
オランダの大学で心理学を学ぶ学部生222名(平均年齢21.3歳、女性74.3%)を対象に、
4週間の介入が行われました。
参加者は次の3つのグループにランダムに振り分けられています。
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⑴強い絆グループ:家族、友人、パートナー、ルームメイトなど親しい人への親切
⑵弱い絆グループ:見知らぬ人、顔見知りの程度の人(他学部の学生など)への親切
⑶対象不特定グループ:受け手を指定されない通常の親切介入
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介入のルールはシンプルです。
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<介入ルール:「親切にする日」を決めて行う>
毎週「この日に親切をする」と自分で1日を決め、
その日のうちに5つの親切行為を実行する。
(例:「友人のために食事を作る」「祖父母に手紙を書く」(強い絆群)、
「見知らぬ人のためにドアを開けて待つ」「バスで席を譲る」(弱い絆群)といった行動)
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そして翌日、何をしたかをオンライン日記として記録します。
測定指標としては、
精神的ウェルビーイング(感情前・社会的・心理的側面を含む多面的尺度)、
他者とのポジティブな関係性、
抑うつ・不安・ストレスの各症状が、
介入前後で比較されました。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:身近な人への親切だけが、ウェルビーイングを有意に高めた
3グループを比較した結果、
精神的ウェルビーイングの全体スコアを有意に向上させたのは、
「強い絆グループだけ」でした。
弱い絆グループと対象不特定グループでは、
統計的に有意な向上は確認されませんでした。
◯わかったこと2:「ポジティブな関係性」の向上が特に顕著だった
強い絆グループでは、
他者とのポジティブな関係性のスコアが介入前の4.76から介入後に4.97へと上昇し、
効果量(Cohen's d)は0.25と、
小〜中程度のポジティブな変化が示されました。
一方、弱い絆グループや不特定グループでは、
介入前後での有意な変化は見られませんでした。
◯わかったこと3:ストレスが、全グループで増加した
また、「親切な日」における介入期間のストレスが
全グループにおいて上昇していることが興味深い点でした。
3グループ全員で抑うつ・不安・ストレスのスコアが増加しました。
このことは、大学の中間試験時期と重なったためという理由が考えられています。
一方、そのような状況下でも、
身近な人への親切はウェルビーイングへの効果を示していたことになります。
■まとめと感想
今回の研究では、
特に, 近くにいる人(家族や友人)に対して、
意識的に優しくする時間を作ることの方が、
自分のウェルビーイングにも、関係性の質にも、
より直接的に響くのだということが、
で実証されていました。
そして、
「週に一度、親切の日を設ける」
という介入のシンプルさも印象的でした。
大げさなことではなく、
友人のために料理をする、
祖父母に手紙を書く、
引っ越しを手伝う。
そういった当たり前のような行動を、
意識的に「その日にやる」と決める、ということも実現しやすそうです。
ついつい身近な人への親切は後回しになりがち。
つい、バタバタとした日常に流されてしまいがちですが、
たとえば「金曜はカレー曜日」よろしく、
「金曜は親切曜日」みたいに心がけてみる。
そんな小さな習慣が、
自分自身の心も、大切な関係性も、
豊かにしてくれるのかもしれないな、などと思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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