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『風姿花伝』

今週の一冊『風姿花伝』

2775号 2021年9月26日

(本日のお話 2083字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、終日大学院の授業でした。

またその後、5キロのランニング。
シャワーを浴びての1件の打ち合わせでした。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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現代語訳『風姿花伝』

世阿弥 (著), 水野 聡 (翻訳)



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です。



■世阿弥。

この名前、歴史の教科書で
聞き覚えがある方も、
少なくないのではないでしょうか。

私もお恥ずかしながら、
なんとなく記憶の片隅にあった

「能」を確立した人=観阿弥・世阿弥

という印象でございました。



■先日、ふとした時に

「世阿弥の記した『風姿花伝』が
 現代の教育にも通ずるものがある」
 
なんて話を耳にして、
手にとって見たのですが、

「確かに、600年もの時を経ても、
 変わらないものがあるのだ」
 
と感じるものがありました。

(、、、と「能」を観たことがない私が
 いうのは非常におこがましいのですが汗。
 近々鑑賞に行こうと思います)
 


■ちなみに、

「世阿弥」について
改めて以下ご紹介いたします。


~~~~~~~~~~~~~~~~~

世阿弥(1363?~1443?)


室町時代の能楽の大成者。

実名、観世二郎元清。

申楽に音曲・作曲面で改革を行い、
今日の脳の基礎を確立した観阿弥の一子。

父燗阿弥より能役者としての英才教育を、
パトロンである将軍足利義満、北朝公家
二条良基により庇護、寵愛を受け高度な上流教育を享受。


稀代の美童にして歌舞の逸材でもあった世阿弥は、
天賦の才に加え、これら宮廷文化を存分に吸収。

民衆芸能申楽を美と幽玄を主とする
総合舞台芸術、能へと昇華・大成させることとなる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とのこと。



■そして、今回ご紹介の

『風姿花伝』

とは、そんな世阿弥が

”亡き父観阿弥の遺訓を元に著した、
 日本最古の能楽理論書”

とされており、

日本人の美にとっての美を探求し、
また体系だった理論や、その言葉の美しさから、

「世界にも稀な芸術家自身による汎芸術論」

として位置づけられる、
と紹介されています。


本書の最後には、


”この別紙口伝は、当芸において
 家の大事となるものゆえ一子相伝とする。
 
 たとえ跡継ぎが一人しかいなくとも、
 その者が無器量であれば伝えてはならぬ。”
 

と世阿弥自身で注が書かれているように、
まさに一子相伝の書でした。

明治に入り、これが公開されて
一般の人も読むことができるようになりました。



■さて、ではこの書、
一体何が書かれているのでしょうか?

全体は七編で構成されており、

以下、私が印象に残ったところを、
いくつか抜粋してお届けいたします。



<第一 年来稽古條々 より>

”一時の花をまことの花と取り違う心こそ、
 真実の花を更に遠ざけてしまう心のあり方なのだ。

 人によっては、この一時の花を最後に、
 花が消え失せてしまう理を知らぬ者もいる。
 初心とは、このようなものである”
 
 ↓

(感想)
・若い頃に成功をして自惚れて、その後、
 足をすくわれるみたいな話は枚挙に暇がありません…
 
 成功をしたとて、それは一時のものとして
 謙虚にその道を探求することが大事なのですね。
 


<第ニ 物学條々 より>

”上手く演じるほど、面白くなくなるという道理である。
 
 恐ろしさこそ、鬼の本意。
 恐ろしいという心と面白さは、黒と白の違いがある。
 
 すなわち鬼を面白く演じることのできるシテは
 能を究めた上手ともいうべきであろう”
 
 ↓
 
(感想)
・研修などでも、言葉が馴染んだ”慣れた講師”の話は、
 逆に刺さらない…ということがあります。
 
 上手い=刺さる、というわけでもありません。
 
 技術に野性味が混ざって、
 人の感情、そして行動を促すというのは
 我々のコミュニケーションにおいても
 学ぶものがあるように思います)
 
 *

 
<第三 問答條々 より>

”上手にも悪い面があり、下手にも良い面が必ずあるもの。
 ただこれを見分ける者もなく、本人も自覚していない。
 
 上手は名を頼み、技能にかくされ、
 自分の欠点が見えなくなっている。
 
 下手はもとより工夫せず欠点も見えないので、
 たまたまある長所にも気付かない。
 されば上手も下手も互いに尋ね合うべきだ。
 
 反面、能と工夫を究めた者はこれを悟るものである”
 

 ↓
 
(感想) 
・まさに「フィードバックの重要性」ですね。
 そう、上手も下手も、自分のことは見えないのです。
 
 だからこそ、”互いに尋ね合うべき”であると
 世阿弥は言いますが、これは現代の人材開発風に言えば
 まさしく「フィードバック探求」と言えます。
 
 ただ能と工夫を究めた者は、自覚するようになる、
 というのも「ダニング・クルーガー効果」にも通ずる話に
 感じる次第です。
 
 ※参考:ダニング・クルーガー効果
 https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/10267/
 
 

■、、、と、一部を感想とともに
ご紹介させて頂きました。


きっと、聡明な読者の皆さまは、
より深い感想、文化的な背景などにも
気づくことが出来る方もいらっしゃるでしょう。


ですが、

「能」など全然わからない、という方も
(私も含めて…汗)

自分の専門性を究めるための
あり方、学び方において、
多くの知見を得られるのではないか、

と感じさせられる一冊でした。

よろしければ、ぜひ。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

現代語訳『風姿花伝』

世阿弥 (著), 水野 聡 (翻訳)


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