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2909号 2022年2月7日

ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その2) ~コーチングの有効性を示すエビデンスとは?~

(本日のお話 3356字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日日曜日は、2ヶ月ぶりの
ピアノのレッスンでした。

習えば習うほど、不思議なもので
自らの下手っぷりを自覚します(汗)

でもこれが”学ぶ”ということかな、とも思います。

スタートラインやどの場所を走っているのかは
人によってまちまちですが、

何かを学んでいくというのは
その道における旅路において、

「自分が歩んでいる場所を正しく知り、
ゴールまで距離を正しく認知する」

と言うことだと思います。

そういった意味で
自分のレベルを正しく知りつつある今日この頃。

楽しみつつ、粛々と練習を
続けていきたいと思います。



さて、本日のお話です。

本日は、先日のメルマガ

『ストレングス・コーチングの効果を紐解く』
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4097775/

の続きをご紹介したいと思います。

「強み」と「コーチング」。

この組み合わせは
人によっては全く興味がない(!)
内容かと思いますが(興味ない方、スミマセン!)、

とはいいつつ
現在のマネジメントの潮流において

”強みにフォーカスをする”
”1on1で成長の支援をする”

ことは、

人的資源を活用する経営的側面からも、
掘り下げていく価値が十二分にあるもの、

と捉えております。

ということで、
早速まいりましょう!

タイトルは

【ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その2)
~コーチングの有効性を示すエビデンスとは?~】

それでは、どうぞ。

■コーチング、コーチングと
のっけから連発しておりますが、

コーチングの研修を
企業に提供させていただく中で、
このような質問にしばしば遭遇します。

「コーチングって、実際のところ
どれくらい効果があるんですか?」

、、、というもの。

■コーチングを提供している人(私)に、

そのような質問をされること自体が、
やや挑戦的な質問である節もあります。

ゆえに、
直接そのように聞かれることは実際は少ないです。
(皆さん大人ということもありますし)

しかしながら、

特に理系バリバリで行われている
研究職のマネジャーの方など、
(嫌味ではなく純粋な興味として)
そのような質問が、時に投げかけられます。

■そんな時に私(紀藤)は、

「◯◯の業界のマネジャーに対しては
アンケート結果から参加者の80%の方が
成果につながったと回答いただきました」

とか

「具体的にはこのようなコメントを
研修実施後3ヶ月ではいただきました」

と、ご紹介させていただくわけです。

それは

実際にそのようなデータもありますし、

提供している側としても、
確かに参加者に変化変容をもたらすと感じているので
その様な回答をさせていただいている、という次第。

■、、、しかし、です。

もうちょっと突っ込んでみて

”コーチングの成果を、研究として見た時に、
成果があったと言えるのか?”

と問うと、どうなのでしょうか?

個人の体感値(紀藤の経験)等なら
「成果があった」といえても、

研究からの視点となると
ちょっとハードルが上がります。

なぜならば、

・目的変数と、説明変数の定義
(何を成果とし、何が影響を与える要素かの定義)

・調査手法の信頼性

・数字で示せるのか、という客観的証拠

などが含まれるから。

自己申告を超えた客観的な調査にすると、
難易度がグッと上がってきます。

■そんな中で、2014年の論文となるのですが、

「コーチングの有効性に関するメタ分析研究」

として、Theeboomらが調査してみたのでした。



研究内容は、

107の論文をスクリーニングして、
「成果があった」と示せる論文を見つける、

という内容。

まず、

・横断的な研究
・プロの外部コーチによって行われていない研究
・定量的な分析が行われていない研究

を除外したところ、18件の研究が選択基準をクリアし、
(つまり、本当にコーチングの成果と言えるのか
という論文だけ残したわけですね)

更に掘り下げて

・職場での実施
・被験者間の方法論
・自己報告以外のデータを収集したもの(定量的なもの)

という基準を満たすものを抽出したところ
わずか4件の研究のみであった、
(Bozer&Sarros2012)

とのことでした。

つまり、コーチング”研究”では

”自己申告や、複合的な研究で
成果があったと報告されたものは多数あるけど

「客観的に成果があった」と示せる事例は
まだまだ少ない”

と現状だったそうです。

論文を書くくらいですから、
専門家が107本もコーチングに関して
研究を重ねているのに、

残るのが「4本」というのは正直、
評価基準、キビシー、という感じです。。。

■また別の研究、
Smitherら(2003)によって行われた

「コーチングによって360度フィードバックの
パフォーマンス向上が改善されるのか」

という研究では、

”360度フィードバックを受けた上級管理職1202名のうち
404人がコーチングを受け、その成果を評価する”

というものがありました。

すると、コーチングを受けた人は

・より具体的な目標を設定した
・より多くのアイデアを募るようになった
・他人の評価がより向上した

というポジティブな結果が報告されました。

素晴らしいですね。



、、、が、

研究を掘り下げていくと、
こんなツッコミが入りました。

・404人のコーチングを受けた人の
選択基準がまちまちであったこと
(上司から参加を要求された人もいた)

・とすると、”選択効果”の影響も受けるため、
純粋にコーチングの効果とは言えないじゃね?

となり、

「これも客観的に成果があったとは
言い切れない」

となったのでした。

■他にも、こんな研究もありました。

教育現場における
エグゼクティブコーチングの研究(Grant2010)で、

・教師44名に、認知行動療法を中心とした
コーチングセッションを実施

・実験群と対照群を分けて実施
(しっかりやってます)

としました。

結果は

・コーチングを受けた人の
目標達成度と幸福度が優位に向上し、
ストレスが減少した

・自己申告において
「建設的なリーダーシップスタイルが
長期に渡って改善した」

となったのでした。

これもまた素晴らしい!と
拍手したくなりました。

、、、が、

上司や同僚の評価を分析したところ

「建設的なリーダーシップに
優位な差がなかった」

ということで、

「自己申告の域を越えて
成果があったとは言えないよね?」

、、、と、やっぱり

”客観的な成果とは言えない”

となった、というお話でした。

■こんな風に

「コーチング研究」の研究、
いくつか並べてみて思ったことがあります。

それは

「成果となる基準、キビシー」

ということ。
(素人っぽい意見でゴメンナサイ)

多分、実際の企業研修では
ここまで厳密には測るところは
極めて少ないでしょう。

それは、

測定する時間的コスト、
人的コストが見合わないというのもあります。

(または、正直ぼんやりとさせておきたい、
という意図もあるのかも)

■、、、ただ、

これらの研究者のある種のクリティカルかつ
ストイックな視点からは、
学ぶことがある、と感じます。



例えば、ツッコミ(質問)として

「その結果は、本当にコーチングの成果なの?」

「他の要因を変えずに、
コーチングの要因だけ切り取った時に
何に対して、どのような影響があったの?」

「それは数字で測れるものなの?」

、、、と、

もし自分が追求されたら、
ちょっとイヤだなあ、と思いそうなことを、
細分化し、追求していく姿勢。

その様な研究・探求の姿勢は、
正直、骨が折れるものです。

まあ、これくらいでいいのじゃね?
と素人からすると思いそうです。

でも、それでもなお
批判的かつ、深く掘り下げる視点で
研究がなされるからこそ、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1、どのような要素が、
どのような結果にインパクトを与えるのかが
明確になる

2、それらを積み重ねることで
再現性・汎用性がある理論と手法が確立される

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という、

多くの人が使える武器として
昇華されることになるのだろう、

と思うのです。

■安易に「成果」と捉えず、

本当にそうなのか、
他の視点はないだろうかと考え、

深めていく。

そんなことの大切さを、
この論文から学ばされている気がしましたし、

そういった研究者の視点があるからこそ、
今、活用できる理論になっているんだなあ、

と先人たちの功績に
改めて尊敬の念を覚えた次第です。

■、、、ということで、明日は
そんなクリティカルな視点の先にある

「強みにフォーカスをしたことは
変革型リーダーシップに影響を与えた」

という研究の詳細を
引き続きお伝えしてまいりたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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<本日の名言>
自分が感じていることは正しくないかもしれない。
だから、常に自分をオープンにしておくんだ。
あらゆる情報や、たくさんの知識を受け入れられるように。

アイルトン・セナ(ブラジルのレースドライバー/1960-1994)
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