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3064号 2022年7月12日

「OJT」ってそもそもなんだ? ー演繹的OJTと帰納的OJTー

(本日のお話 2194字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は健康診断。
また1件のコーチング。
その他、ランニング10キロでした。



さて、本日のお話です。

先日、大学院のメンバーと
授業で話をしていたときに、

「OJTって、どこまでのことを
意味するのだろうね?」

とふとした疑問が話題に上がりました。

確かに、仕事上

「OJT(On the job training)」

とは言葉上、しばしば使うものの

・具体的に何を指すのか?
・コーチング、メンタリング、アドバイス等の行動とは、
一体何が違うのか?

など、よくわかっていないな、と
疑問に思ったのでした。



そんな中、先日読んでいた論文
『育て上手のマネジャーの指導方法 ー若手社員の問題行動とOJT』 松尾睦(2013)
において、

上記について解説されている箇所があり、
「へー、なるほどなあ」と勉強になったのでした。

、、、ということで、今日は

「OJTって何か?」について
意外と考えたことがない(私のような)方向けに、

OJTの歴史と、
OJTの2パターン

について学びのおすそわけをさせていただければと思います。

それでは早速参りましょう!

タイトルは

【「OJT」ってそもそもなんだ? ー演繹的OJTと帰納的OJTー】

それでは、どうぞ。

■OJT。

皆さまの組織でも「OJT」、
行っていらっしゃる方は少なくないのでは、
と思います。

正式には、
「OJT」(=On the job training)
ということで、直訳すると

”職場において行われる訓練”

となります。

■このOJTが
多くの組織で利用されているのは、
いくつか理由があるようです。

アカデミックな観点では、

”成人の能力開発の7割が
職務上の直接経験で決まる”
(Lombardo and Eichinger 2010)

と言われており、

先輩社員がOJT、
職場における教育を行うことは
現場で若手社員の経験を促す重要な機会になる、
なのでOJTは有効、と言えます。

OJT、大事なのですね。

■さて、すこし余談ですが

「OJTの歴史」を紐解くと、興味深いルーツがあります。
そして、それが今に影響していることが感じられます。



そもそもOJTの研究は
第一次世界対戦時に遡るそう。

もともとは先日ゆうの造船所で行われていた
職業訓練の一つがOJTでした。

生産現場の人材育成を効率的に実施する指導方法、
それが以下の4ステップ(つまりOJTの原型)だったそうです。

こんな内容です。

「1)見せる(show)」
:学習者が何をすべきかデモンストレーションする

「2)説明する(tell)」
:学習者がすべきことと、なぜそうしなければならないかを説明する

「3)行う(do)」
:学習者に仕事をやらせてみる

「4)チェックする(check)
:学習者が正しく実行しているときは褒め、改善すべき点をフィードバックする

(Dooley 2001; Rothwell and Kazanas 2004)。

とのこと。

■これを行うことで、
OJTのいくつかの利点が得られました。

・訓練と実践が密接に結びついていること
・職務上のスキルを効果的に学習できる
・低コストである
・必要なタイミングで実施できる
・現場で行われるため訓練効果の移転がスムーズである
(can Zolingen et al 2000)

平たくいえば、
「できる限り手間なく、
効率的に従業員を育てられる」

というわけですね。

かつ別のOJT研究によれば、
OJTによって

・従業員の組織コミットメントや生産性を高めたり、
・離職を防止する効果がある

との結果も示されています。

そんなことを思うと、
OJTが職場の教育で選ばれているのには
しかるべき理由があるんだな、と思えます。

■ただ、このようなOJT。

造船所のようにやっていれば
今の時代も人が育つかといえば、
そんなこともありません。

これが歴史と現実の違いです。

そんな中、Lohman(2001)が
「OJTには2パターンある」といっており、
この分け方が個人的にも実にしっくりきたのです。

そして今、OJTってなんだ?
どこまで、何をすればいいんだ?

と迷える方(?)に
ヒントになるのでは、とも思います。

こんなわけ方です。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<演繹的OJT と帰納的OJT>

◯演繹的OJT:
→トレーナー(教える側)が戦略・ルール・手続きを説明し,
さまざまな状況に適用させる。

*「クローズドタスク(=仕事のプロセスが明確に決められている仕事)」において
演繹的OJTが用いられる

◯帰納的OJT:
→トレーニー(教わる側)が曖昧な問題を解決し、
その中から自らが仮説を発見し、それを新しい状況に適用することを
トレーナー(教える側)が支援する形をとる。

*「オープンタスク(=仕事の手続きや流れが明確に決められていな異複雑な仕事)において
帰納的OJTが行われることが多い

Lohman (2001)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのこと。

■演繹的OJT(答えがあるOJT)と、
帰納的OJT(答えがないOJT)。

確かに、言われてみればそうなのです。

OJTといったときに、
もちろん先輩社員が、
その経験から答えを知っていることもある。

時代も取り巻く環境も、
刻一刻と変わっており、そんな中

「このときはこうするんだよ」

と言える仕事なぞ、
言ってしまえばごく一部になっている、
とすら思えます。

特にホワイトカラーの仕事など、
まさにそんな感じです。
(使うツールも毎年変わることもあります)

■そんな中で、

元々のOJTのルーツにあった
造船所のOJTプロセス

”見せる→説明する→行う→チェックする”

が出来るかといえば、そんなことはなく
先輩だからといって手取り足取り、
全部答えを教えられるわけではない、、、

そんな時代に私たちは働いている、
この前提を理解することは、
若手育成においても重要かと思います。

(当たり前っちゃ当たり前ですが、
でも「正しい答えがあるのでは」症候群で
悩むトレーナー&トレーニーはまだまだいる気もしています)

■そして、

「帰納的OJT」

すなわち答えがない問題について

・トレーニー(教わる側)が曖昧な問題を解決し、
・その中から自らが仮説を発見し、
・それを新しい状況に適用することをトレーナー(教える側)が支援する

ために何が必要なのか。

ここで、

『コーチング』

が登場してくる、となるわけです。

■、、、と、

普段(おそらく)考えない
「OJT」なる言葉について

論文を参考にさせていただきながら
紐解いてみました。

その言葉が意味することは、一体何か?
どのような要素が含まれているのか?

こういったことを、
先人の研究者たちは丁寧に考察し、
分類分けをしてくれています。

その思考をなぞることによって、
自分の思考も整理され、より深くそのテーマを
理解できるようにも思えます。

「わかることは、わけること」

ともいいますが、
改めてそんなことを感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

人は自分自身については暗闇の中にいるのも同然です。
自分を知るには、他人の力がひるようなのです。

カール・グスタフ・ユング(スイスの精神科医/1875-1961)

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