メールマガジン バックナンバー

3068号 2022年7月16日

ピアノの演奏を簡単にする研究

(本日のお話 2764字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、対面でのコーチング研修の実施。
また夜は大学院の授業でした。



さて、本日のお話です。

ここ2年くらいの趣味がピアノです。

リモートワークが主体ですと、
間に息抜きとして勝手がよく、

ピアノを練習してから
タッチタイピングをすると、
正確かつ、スピードが早くなるという、
業務の生産性向上という副効果もついてきます。

そして、そんなことから、
月1でピアノのレッスンに通っており、
1日20-30分、練習をしております。

来年はショパンの革命なる曲を
発表会で演奏予定です。



そんな中、先日のレッスンで、
ピアノの先生から

「リズム練習をしたほうがいいですよ」
(=付点をつけて、音の長さを変えて弾く練習のこと)

と言われました。

そこで、ふと、

「はて?そもそもリズム練習ってなんだろうか?
やる意味とは?」

が気になって調べてみました。

そうしたところ、ある論文、

『リズム学習を考慮したピアノ演奏学習支援システムの設計と実装』
https://www.fun.ac.jp/~yoshi/doc/201304_IPSJ_Rhythm.pdf

というものが検索に引っかかり
何気なく読んでみたところ

「学習する」という行為について考えさせられ
勉強になりました。

、、、ということで、本日は

少しマニアックな話ではありますが、
皆様にその論文からの学びと気づきを
ご共有させていただければと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは、

【ピアノの演奏を簡単にする研究】

それでは、どうぞ。

■ピアノを弾く、という行為は、

いくつかの技術の複合、
とされています。

・譜読み
・正確な打鍵
・適切な運指(指使い)
・リズム(打鍵および離鍵のタイミング)
・打鍵の強弱
・テンポ(楽曲の速さ)
・両手を独立して動かす

、、、などなど。

■私は小学生の頃に
ピアノを習っていたので、
(初級レベルでしたが)

・譜読み
・両手を独立して動かす

くらいは出来ていましたが、

大人になってから、
これらの技術を習得しようとすると、
相当に骨が折れることは想像に難くありません。

ゆえに、せっかく始めても、

基礎技術の習得に時間がかかりすぎて
途中で挫折してしまう、

いくつもの技術を同時進行で身につけることは敷居が高く
曲の完成までの道のりが見えずに断念してしまう、

練習しては忘れ、練習しては忘れ、という
習熟効率の低さから挫折する、

というピアノ学習者は後を絶たないようです。

(よくわかります、、、)

■そんな中、上述でご紹介した論文

竹川佳成(2013)
『リズム学習を考慮したピアノ演奏学習支援システムの設計と実装』

なるものの中で、

「ピアノ演奏の習熟を高める
学習支援システム」

について研究をしており、

過去の関連研究、
並びに本論文で新しい学習支援システムを提案し、
実際に検証したところ上達の速度が有意に高かった、

という結果が出たそうです。

■ちなみに、

過去のピアノ学習支援による
関連研究はこんな話があるそうです

**

<ピアノ学習支援のこれまでの研究たち>

・ビデオや音声による模範演奏の指示

・演奏者の演奏データを解析し、
改善点をテキストなどで指示をする支援

・演奏中にリアルタイムの支援として
打鍵すべき鍵盤、運指、手本映像を表示する
キーボード、ソフトウェアによる支援

・磁力を用いた触覚フィードバックにより
リズムを学習できるシステム

・蓄積した演奏データから演奏者の苦手な奏法を割り出し、
集中的にトレーニングをするシステム

**

、、、ビデオや音声による
模範演奏の指示については
まあ、わかります。

でも、その他、

・演奏者の演奏データの解析
・磁力を用いた触覚フィードバック(!)

など、こんなものもあるのか、、、
と驚かされます。

■そして、上記の論文において、

それらの研究を踏まえて、
以下のようなシステムを作ったそうです。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ピアノ学習支援システムの内容>

1)プロジェクタを利用して、
実際の鍵盤上にカラフルな図や文字を表示させる

2)カメラを使って、
演奏者の運指(指使い)を認識する

その上で

3)打鍵情報を示し、次に引く鍵盤を輪郭で囲む
(→プロジェクタで投影させる)

4)運指情報について、運指番号を表示する
(→これもプロジェクタで投影)

5)鍵盤上部に、現在演奏している付近の楽譜を示す。
(→弾いている鍵盤と楽譜の音符を線で繋いで表示)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

その他にも細かな支援があるのですが、
それらの学習支援のシステムを使い、

五線譜の楽譜がほとんど読めない鍵盤経験歴のない
大学生、大学院生9名に実験をしたそうです。

曲目はモーツァルトの「トルコ行進曲」です。

・30分間、同支援システムを使いながら
訓練をしてもらうパターン

・自由に練習をしてよいと指示したパターン

にて比較を行ったところ、
システムの支援を行ったほうが、

・打鍵ミスの数が有意に減った

・リズムミスの数が有意に減った

という結果になった、

とのことでした。

■さて、この結果を見て思い出したのは、

Youtubeのあるピアノの先生が言っていた言葉です。

「間違えた方法で何度も練習しても、
間違ったやり方が定着するだけ」

、、、と。

確かにその通りで、

少なくともプロを目指していない
趣味でのピアノの練習の大半は、

”正確な動きで反復して
指に動きをなじませる作業”

だと思います。

■学習としては、

「反復学習」であり、
正しい方法で正しく繰り返せば
最短距離でゴールに近づくことができる、

となるのでしょう。

、、、とすると、

そこに様々な試行錯誤は
実はあまり必要ではなく、

”正しいパターンを、
効率よく身につけられるような手段を選ぶ”

ほうが効果が高い、と言えるのだろうな、
と感じたのでした。

■これはハイウェッツのいう、

『適応課題』と『技術課題』

の違いに分類して取り組むと、
わかりやすいようにも思います。

実際の仕事では、

『適応課題』:

”既存の方法で一般的に解決ができない
複雑で困難な問題(adaptive challenge)”

が多くあります。

それは関係性の中で生じる問題などで、
解決策が明確になく、難しい問題です。

一方、

『技術的課題』は

”既存の知識・方法で解決できる問題”

とされ、技術やリソースで
解決をする事ができる問題である、

といいます。

■仕事においては、

「適応課題(既存の方法で解決できない関係性の課題)を
技術的課題(既存の知識や技術)で対処しようとして、
ドツボにはまる」

パターンの方が多いと言われますが、

逆もまた然りで、
(それこそピアノの演奏のように)

「技術的課題(既にわかっている手法)があるならば
それは既存の知識を総動員すればよい」

とも言えるでしょう。

■、、、となんだか話が、
広がってしまいましたが、

いろんな研究者が、
学習を支援する様々なアイデアを
考えてくれているので、

それらのものを最大限活用するのが、
大事なんだな、と思った、

というお話でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

==========================
<本日の名言>

どんな芸術家でも最初は素人だった。

エマーソン

==========================

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す