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3226号 2022年12月21日

関係が薄いメンバーほど、関わると効果が高い?! ー論文『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』より

(本日のお話 3054字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

先日、「LMX理論」について
お話をさせていただきました。

内容は、「LMX」とは、
リーダーとフォロワーの交換関係であり、

この交換されているものが
金銭などの報酬を超えたもの、

すなわち、

”信頼や敬意、努力”

などを交換するような
質の高い関係だと、

組織における高いパフォーマンス、
フォロワーは多くのチャンスを獲得し
職務満足度にも繋がる

、、、というお話でした。

※昨日のお話はこちら↓
 LMX理論とは何か ー「リーダーとメンバーの交換関係」が影響を与えるものー
 https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4376613/
 


本日はこのLMX理論を
もうちょっと深掘りして

論文から興味深いものを一つ、
ご紹介させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!


タイトルは



【関係が薄いメンバーほど、関わると効果が高い?!
 ー論文『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』】



それでは、どうぞ。



■「上司」の影響は大きいものです。

部下にとって
上司の目は気になるものです。

例えば、

「XXさんは、
 他のメンバーには優しいのに
 自分に対しては厳しい」とか、

「自分は、
 個別で声をかけられることはあまりない。
 多分、目をかけられてはいないのだろう」

と思ってしまう部下も
やっぱりいて然るべきですし、

それは当人の心理に
何かしらの影響を与えるものです。



■上司と部下も、
人間対人間ですから、

聖人君子のように
誰にも別け隔てなく、、、

というのはやっぱり難しいですし、
そうすることが是とも限りません。


ただ、LMX理論から言えば、

「自分が上司は、質の高い関係」なのか
(=LMX理論で言えば、イン・グループ)

「自分は上司は、業務的な関わりのみの関係」なのか
(=LMX理論でいえば、アウト・グループ)

は、仕事の成果にも影響することは
わかっているわけです。



■では、

「LMXのが低い人」に対して
マネジャーがリーダーシップ介入(1on1など)をすると、
どのような影響があるのでしょうか?


このことについて研究した論文で、


『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』

原題:Scandura, Terri A., and George B. Graen.(1984).
”Moderating Effects of Initial Leader–member Exchange Status on the Effects of a Leadership Intervention.”
The Journal of Applied Psychology 69 (3): 428–36.


というものがありました。


この研究、興味深い内容で、

「LMXが低い従業員と
 LMXが高い従業員を比べたときの
 リーダーシップ介入効果の差」
 
を調べた研究です。

先に、結果からお伝えしまうと、

”LMXが相対的に低い従業員は、
 リーダーシップ加入に、より肯定的に反応した”

ことがわかりました。



■以下論文の詳細について
ポイントを見てみたいと思います。


(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

論文まとめ『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』
 

<論文の目的>

・ダイアド間のLMXの状態が
 リーダーシップ介入の効果に及ぼす影響を検討すること。

***

<論文の仮説>

*仮説1:
 LMXの質が低いメンバーは、質の高いメンバーに比べ、
 リーダーシップの介入により、総合的な職務満足度に対してよりポジティブな効果を示すだろう

*仮説2:
 当初LMXの質が低かったメンバーは、リーダーシップの介入により、
 当初質が高かったメンバーより上司満足度に対してよりポジティブな効果を示すだろう

*仮説3:
 LMXの質が低いメンバーは、質の高いメンバーと比較して、
 リーダーシップの介入によって生産性により大きな影響を受けるだろう

***

<論文の研究方法>

・対象者はコンピュータ処理に従事する従業員83名

・BeforeーAfterで行う実証実験

・1週目(Before)と26 週目(After)で、
 小グループと直属の上司に質問票を配布する。
 
・そして、26週間にわたり週単位で生産性を測定する。

・参加者は、作業単位によって2つの条件のいずれかに割り当てられた。
 リーダーシップ介入条件とし、65をリーダーシップ介入条件を設定した。
 

◯「実験群」に行ったこと

・LMXの実験群のマネージャーは、
 2時間のセッションを6週間にわたって6回受講した
 
(研修の目的)
 ・マネージャーが部下との関係における
  ポジティブな要素とネガティブな要素を徹底的に分析し、
  それに基づいて行動できるようにすること

(研修内容)
 ・アクティブ・リスニングのスキルトレーニング(2時間)、
 ・相互期待交換(2時間)
 ・リソース交換(2時間)、
 ・マンツーマンセッションの実践(4時間)

(研修後に行ったこと)
 ・トレーニングに続く実際の介入は、
  マネージャーとメンバーとの1対1の会話を30分前後かけて行った

 ・会話で行うことは以下のことだった

 (a)メンバーの仕事、上司の仕事、仕事上の関係について、
  各人の不満、懸念、期待について話し、議論する時間を持つ
 
 (b)”アクティブリスキング”のスキルを使い
  部下が懸念している課題について注意深くなること
 
 (c)マネージャーは、提起された問題に対して、
  自分の枠組みを押し付けることを控えること
 
 (d)マネージャーは、自分自身の仕事、
 メンバーの仕事、そして彼らの仕事上の関係について、
 自分自身の仕事への期待をいくつか共有すること


◯「対照群」に行ったこと

・プラセボ対照群では、マネージャーが、
 職務の充実、業績評価、意思決定、コミュニケーションに関する
 一般的なインプットを2時間のセッションに3回参加した

**


◯研究の方法

*被説明変数:
 ・生産量(1人が1週間に完成させた仕事の総数)
 ・仕事の満足度(給与、安全、社会的側面、上司、成長機会の5つの側面)
 
*調整変数:
 ・LMX尺度

***

<結果/わかったこと>

・LMXの質がリーダーシップ介入の効果を調整するという仮説が支持された
 (仮説1~3が支持された)

 
・26週間にわたる研究期間中に、介入対象者は
 より高いパフォーマンスを発揮するようになった。
 
・特にリーダーシップ介入は、
 LMXが低いメンバーに対して最も効果的であった。


※参考:『リーダーシップ介入の効果に対するLMXの調整効果』

原題:Scandura, Terri A., and George B. Graen.(1984).
”Moderating Effects of Initial Leader–member Exchange Status on the Effects of a Leadership Intervention.”
The Journal of Applied Psychology 69 (3): 428–36.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。



■さて、いかがでしょうか。

たいへん興味深いです。

1984年の論文ですが
ここで実験群で用いられている
「リーダーシップ介入」の内容が、

まさに現在も取り入れられている
「1on1」における内容と実に似ています。


そしてこの論文は
全体的な結論としてこう述べていました。


”リーダーシップの介入による効果は広範囲に及ぶ。
 その中で、最も影響を受けるのは、
 質の低い交流を行っている従業員であると考えられる。
 
・実際、リーダーシップの介入により、
 ハードな生産性が19%改善された。

・この改善により、
 年間500万ドル以上のコスト削減が見込まれた”


とのこと。



■リーダーシップ介入は
(やっぱりですが)
全般的にポジティブな影響がある。


今回の実験で語られたような

・お互いの関係、不満や課題などを話す時間を設ける
・アクティブリスニング(傾聴)
・自分の考えを押し付けない
・自分の期待を伝える

このような「1on1」の時間は
やっぱり有用であり、

加えて特に
「LMXの質が相対的に低い人」に
効果があるというのは、興味深いです。



■鶏が先か、卵が先か、

という観点のように

・関係がよいから1on1をやるのではなく
・1on1をやるから関係がよくなる

という作用もあるように思います。


この研究は「LMXの調整効果」ではありますが、
リーダーシップ介入の効果についても
考えさせられるものでした。


LMXの理論とまた影響を知ることで
メンバーの生産性や満足度を高めるヒントに
なりそうだ、と感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。


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<本日の名言>

握りこぶしをつくっていたら、
握手はできません。

ゴルダ・メイア
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