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3321号 2023年3月28日

「人生めっちゃ満足」より「まあ満足」のほうが収入が高い ーウェルビーイングの研究論文よりー

(本日のお話 2242字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は社会人教育事業をしている会社様への
ストレングス・ファインダー研修の実施でした。



さて、本日のお話です。

先日、興味深い論文を見つけました。

そのタイトルは、

『The Optimum Level of Well-Being: Can People Be Too Happy?』
(日本語訳:ウェルビーイングの最適なレベル :人は幸福になりすぎることがあるのか?)

Oishi, Shigehiro, Ed Diener, and Richard E. Lucas. (2009).
“The Optimum Level of Well-Being: Can People Be Too Happy?” In The Science of Well-Being: The Collected Works of Ed Diener, edited by Ed Diener, 175–200. Dordrecht: Springer Netherlands.

なるもの。

ポジティブ心理学における研究ですが、
この論文のテーマは、

「幸福度が高いことが必ずしもよいのか?
必ずしもそうとはいえないのではないか?」

という問いを探究した内容となります。

実に納得させられる内容でしたので
本日はこの論文からの学びを、
皆様にご共有をさせていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「人生めっちゃ満足」より「まあ満足」のほうが収入が高い
ーウェルビーイングの研究論文よりー】

それでは、どうぞ。

■近年、

「ウェルビーイング」

という言葉が
注目されるようになってきました。

”ウェルビーイング=持続的な幸福”

とも訳されることがあります。

企業にとって
長時間労働やストレスチェックなど
従業員の健康や生活の質も問題視されていますし、

利益だけ追求するのではなく、
従業員のウェルビーイング(幸福)を考えていくことも
大事なのではないか、、、

そんな世の中の流れもあり
企業でもウェルビーイングを促進する取り組みが
進んでいる(ところもある)ようです。

■また、ちょっと大きな話ですが

”「幸福」になりたいか?”

と問われて、

否定する人は、おそらく
あまりいないと思われます。

やっぱり、できれば
「幸せ」でいるほうが
不幸よりはずっとよいでしょう。



曰く、アリストテレスは、

「幸福が人生の究極の目的である」

といい、

その他の願望(例えば、金銭、健康、評判、友情)などは
幸福を含めた高い目標を達成するための
道具的な目標にすぎない、

ともいわれます。

そりゃ、
不快より、快のほうがよいし、
不幸より、幸せのほうがよいです。

こうした感覚は、
アリストテレスが述べるように
多くの人にとって共通の認識とも思えます。

■、、、ですが、

”本当に「最高に幸せ」なのが
常によいのか?”

と考えてみると、
ちょっと疑問も湧きそうです。

本人がいいっていうんだから、
いいんじゃね?

といえばそれまでですが、

社会には別の指標もありますし、
個人ではなく、組織としてみた時に
「幸福であること」のデメリットも
あるのではないか、という話。

■例えば、こんな研究があります。

・ポジティブな気分は
「認知能力の低下」と関連している

・ポジティブな気分の参加者は
ネガティブな気分の参加者よりも
「相関の推定課題」で悪い結果を示した

・ポジティブな気分の参加者は
「人物認識課題」において
ニュートラルな気分条件の参加者よりも
頻繁にステレオタイプを使用することが示された

などなど。

あるいは別の研究では、

・明るい気分の子供は、死亡リスクが高い

・ポジティブの比率が高すぎると
パフォーマンスが最適でなくなる

などもあります。

ポジティブであることは

「パフォーマンス」
「リスク」
「特定の課題」

等の観点から見た時に、

必ずしも良いとは言えない結果も
示されているようです。

■そんな背景もあり、

本論文では、
こんな調査をしたのでした。

概要としては、

以下の5つの領域

・収入
・教育レベル
・政治参加
・ボランティア活動
・交際状況

において、

”「人生全体における満足度の高さ」
(1:非常に不満 ~10:非常に満足 で評価。
すなわち幸福度の高さと言える)”
がどのように影響を与えているのか”

を調べたという研究です。

■結論からすると、

”・収入
・教育
・政治参加のレベルが最も高かったのは、

(人税全体における満足度が)
『中程度の人(10段階中 8または9)』であった”

とのこと。

■なるほど、、、、

「(人生全体について)
めちゃくちゃ満足している」

よりも

「まあ満足している」

ほうが、こと
収入や教育、政治参加においては
プラスの影響があるのですね。

この論文によると

「満たされないものがあったほうが
努力するエネルギー源となる」

と推察しています。

(例えば、”政治参加”も、
現状に不満があるから参加すし、
不満がなければ参加しない傾向がある)

■アリストテレスが言うように、

「人生の究極の目的が幸せ」

であるならば、

今に非常に満足しているなら
それでいいじゃん、

とも言えるのかもしれません。

、、、しかし、

ちょっとくらい
不満なところがあったほうが
努力をする原動力にもなります。

そしてその結果、
自分や周りが可能性を発揮する
エネルギーになるのであれば

実はそのほうが、

短期的な幸福感を得る以上に

中長期的に様々な経験や機会を得て
総合的に得るものが大きくなる、

といえるのかもしれません。

また、そういう観点があれば

必ずしも「幸せでなければならない」という
強迫観念に振り回されなくても良い、

とも言えるのかもしれません。

■私も、自分なりに
色々やってみても、いつも

「人生全体の満足度は”8”(よくて9)」

くらいでございます(汗)

いつも「まだまだ感」が拭えないのですが
それゆえに新しい挑戦をしようと思えて、

そして新しい世界を見るきっかけに
なっているとも思えますし、

一部のチャレンジが身近な誰かと共鳴して、
勇気づけるという他者への貢献にも
つながっているようにも思います。

■ということで、
こうした観点も知っておくと、

「ウェルビーイング」

という言葉に、やたらと
振り回されずにもすむし、

より広い概念で
”幸せであること”に
向き合うことができるのかもしれない、

そんなことを思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

ハゲ頭の向こうには、若者が想像しているよりも
多くの至福がある。

ローガン・スミス
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