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3335号 2023年4月11日

新入社員には「会社らしさ」より「自分らしさ」を意識させたほうが、定着率がよい?! ー論文『The Powerful Way Onboarding Can Encourage Authenticity』からの示唆ー

(本日のお話 2334字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は終日、新入社員研修の
実施の準備でした。



さて、早速ですが本日のお話です。

世の中は、新入社員が入社し、
研修を行っている会社も少なくない、
そんな時期であります。

今日はそんな新入社員の活躍や定着に関連した
ある論文についてご紹介できればと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【新入社員には「会社らしさ」より「自分らしさ」を意識させたほうが、定着率がよい?!
ー論文『The Powerful Way Onboarding Can Encourage Authenticity』からの示唆ー】

それでは、どうぞ。

■新入社員が組織に馴染み、

力を発揮できるようにできる
取り組みのことを

『オンボーディング』

と呼びます。

まさに、

”(組織という)船や飛行機に乗る”

というイメージです。

■そして、

オンボーディングにうまく行けば、

”早く組織に馴染む”

ことができますし、
その結果、早期戦力化、
また離職のリスクを低下させることができます。

ゆえに、

オンボーディングが大事であり、
それらを実行するために

・内定者交流会
・入社式
・新入社員研修
・メンター制度
・理念研修

など、よく知られた施策があるわけです。

■さて、

ここで興味深い論文が
今月号のハーバードビジネスレビューに
掲載されていました。

掲載のタイトルは

『新入社員にはまず「自分らしさ」を意識させよ』

という内容で紹介されており、
元論文は、2015年に発表された以下のものです。

Cable, D., F. Gino, and B. Staats.(2015).
”The Powerful Way Onboarding Can Encourage Authenticity.”
Harvard Business Review Digital Articles.
(直訳:オンボーディングで「本物志向」を後押しするパワフルな方法)

■この論文の内容が実に興味深いものでした。

この論文の目的は

「新入社員に対する
オーセンティシティ重視のアプローチが、
従来の研修方法よりも高いパフォーマンスと定着率に
つながるかどうかを検証する」

ことです。

「オーセンティシティ」とは
”自分らしさ”とか”本来の自分感”

などと訳される言葉。

平たく言えば、

・会社で働くことが
自己を表現すること、自分の強みを活かすことになる

とトレーニングする群と

・会社で働くことは、
組織の規範や価値観を受け入れることである

とトレーニングをする群でわけて、

定着率やパフォーマンスに
どのような影響がでるのかを調べる、

という内容です。

■具体的な研究方法として、
改めて以下整理をいたします。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【論文まとめ『The Powerful Way Onboarding Can Encourage Authenticity.』】

<研究の趣旨>

・新入社員に対する
オーセンティシティ重視のアプローチが、
従来の研修方法よりも高いパフォーマンスと定着率に
つながるかどうかを検証する

<研究の対象>

・ウィプロの新入社員605名
(インドを拠点とするBPO業界の世界的リーダーの会社。
クライアント企業への電話やチャットでのサポートをしている)

<研究の方法>

・新入社員を以下の3つの条件にランダムに割当て、
初日は各グループに対して異なる研修を行った。
2日目以降の研修プロセスは同じとした。

・条件の違いと、初日の研修内容は
それぞれ以下のとおりである

◯条件1:「個人のアイデンティティ」を重視する群

・「自分ならでは視点と強み、そしてそれを仕事にどう活かせるか」
を考えてもらう1時間のセッションを行った。

具体的には以下の内容を行った。

1)シニアリーダーが登壇。ウィプロで働くことが、自己を実現し、
個人にとってのチャンスを生み出す絶好の機会になることを語る(15分)。

2)新入社員は、問題解稀のエクササイズに個々人で取り組む(15分)。

3)新入社員は、エクササイズで自らが下した決定を振り返る。
その後、自分の強みを仕事にどう生かせるかを考える(15分)。

4)新入社員はグループに対して自己紹介し、
エクササイズでの決定について説明する(15分)。

5)新入社員にバッジとフリースのスエットシャツが与えられる。
どちらにも本人の名前が印字されている。

◯条件2:「組織のアイデンティティ」を重視する群

・「新入社員が最大の能力を発揮できるのは、この組織に所属していることに誇りを持ち、
組織の規範と価値観を受け入れたときである」
という前提に基づいた1時間のセッションを行った。

・具体的には以下の内容を行った。

1)シニアリーダーが登壇。ウィプロの価値観と、
ウィプロが卓越した組織である理由を語る(15分)。

2)スター社員が登壇し、同様のテーマで語る(15分)。

3)新入社員は、スピーチの内容を振り返る。
たとえば、ウィプロの一員であることが誇りだと感じたのはどの文化、など(15分)。

4)新入社員はグループになり、振り返りの結果を話し合う(15分)。

5)新入社員にバッジとフリースのスエットシャツが与えられる。
どちらにも会社の名前が印字されている。

◯条件3:「対照群」

・従来のどおりの研修プロセスを受けた。

<結果>

・「個人のアイデンティティ」を重視した研修(条件1)は
「組織重視型(条件2)」および「従来の研修(条件3)」と比べて

入社後6ヶ月の時点で
より高い顧客満足度の達成に繋がり、
定着率も33%高かった

※引用・参考:ハーバードビジネスレビュー.2023年5月号
『新入社員にはまず「自分らしさ」を意識させよ』P72-75

Cable, D., F. Gino, and B. Staats.(2015).
”The Powerful Way Onboarding Can Encourage Authenticity.”

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

ちなみに、別の環境でも
同じように行ったところ、
同様の結果が得られたそうです。

■実に興味深いですね。

この実験からは

「組織よりも個性を重視した研修プロセスのほうが
従業員の態度・行動に好ましい影響を及ぼす」

こと、そして

「仕事への意欲や満足感が高まること」

がわかったというわけです。

■このメカニズムとして
同論文の著者らが別の研究から

”ありのままの自分を認め、
受け入れてくれる他者と関係を築くと、

同僚と情報を共有し、協力する傾向が高まり、
結果として生産性があがる”

ことがわかったとしています。

つまり、

自らの能力やエネルギーを
仕事につぎ込むことができ、
パフォーマンスがあがる、

という作用が起こるようです。

■「自分らしさを認め、受け入れる」。

こうしたポジティブなアプローチは
これまでの組織の理念などを伝える研修とは
違ったものかもしれません。

しかし、この結果は興味深く、
また、これからの組織では、
ますます求められるアプローチにも感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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自分を必要としてくれる場所がある。
その安心感があればこそ、人は強くいきられるのです。

ドロシー・ロー・ノルト
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