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3496号 2023年9月20日

『サビカスのキャリア構成理論』を読む ー「道を拓く人」ロバートの物語

(本日のお話 2738字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は1件のコーチング。
その他、研修の企画や準備、
打ち合わせ等でした。



さて、本日のお話です。

昨日に引き続き本日も

『サビカス キャリア構成理論
四つの〈物語〉で学ぶキャリアの形成と発達』

マーク・L・サビカス (著), 水野 修次郎 (翻訳), 長谷川 能扶子 (翻訳)


の書籍について紐解いて行きたいと思います。

今日は1つ目の物語、
「道を拓く人」のお話です。

それではまいりましょう!

タイトルは、

【『サビカスのキャリア構成理論』を読む  ー「道を拓く人」ロバートの物語】

それでは、どうぞ。

■第三章では、
「ロバート・コイン」という
企業経営者が主人公です。



この章では、
彼の物語が幼少期からスタートした
ライフポートレートとして描かれます。

そして、後半で
「サビカスのキャリア構成理論」
に基づいて分析がなされていくのが
面白いところです。

■本章がどういう話かというと

ロバートが、地域社会の仲間、従業員、
友人、知人から高い評価を受けている、
多数の従業員を持つ会計事務所の社長です。

その成功した状況にも関わらず、
誰かを見下す態度もなく、謙虚さを携える
人間性が見えます。

仕事にも心から満足しており
心身ともに余裕があることがみえるそう。

60代前半である彼はまさに、
いわゆる「成功者」と呼んで
差し支えないかと思います。

■では、そんな彼のアイデンティティとキャリアは
どのように出来上がってきたのか?

これを幼少期からの丁寧なインタビューで
紐解いていきます。

そもそも当人の価値観は
「両親の価値観と教育」に
色濃く影響を受けます。

母親と父親はどんな人だったのか?
その母親はどんな教育を受けてきたのか、、、
それらのことが語られていきます。

■農作業をしており、
抑圧的な家庭環境で育った母親メアリーは
その自身と同じ思いはさせまいとして
ロバートにはしっかりと教育を受けさせたいと考えます。

また父親のパトリックは、
家具職人であり、職業選択ができない苦しみから
「学歴がないとダメだ」といい、影響力を与えつつも、
息子ロバートの趣味に興味を持ち、励ましました。

ベストを尽くそうとする父、
社交的で様々な経験をさせようとする母。

加えて、年齢が15歳ほども離れている
親に匹敵する影響力の兄と姉の存在。

そんな家庭環境で
彼の「アイデンティティとキャリア」が
形作られていきます。

■本書では、

幼少期の「キャリア発達」

として

父親の影響による
「他者を尊敬すること」

母親の影響による
「他者に親切にすること」

またそれぞれによる
「ベストを尽くし、懸命に頑張ること」

を獲得していきます。



そして高校時代からの

「キャリア探索」

としては

教師からの緩い監視の元、
友達と楽しく過ごし、スポーツに明け暮れ、
また一方下がる成績の中で、
成績を残して奨学金を手に入れる必要があったこと

同時期の兄夫婦の離婚による兄への幻滅などから、

「自分の力で生きていかなければならない」
「成功とは不利な状況から抜け出して勝利を収めることだ」

という信念を獲得していくストーリーが描かれます。

■そして仕事に就いてからの

「キャリア確立」

の時期のエピソードとして、

給与計算の仕事に就いたものの、
年上で仕事をしていない人が給与を多くもらう事実、

その中で25歳のときには会計士の勉強を始めて、
会計主任として給与を高めていきます。

一生懸命働いて

「将来の安心のために計画、行動すること」
「明日のために十分に準備をすること」
「冷静に対処すること」

など、幼少期からの彼の競争的な性格を
昇華させる形で成果に繋げていきます。

加えて、35歳のときには
会計事務所の副社長として成功し、

「人に対して助けようとする。
ヒッチハイカーでも、パンクした人でも
誰かの役に立つことを純粋に喜んでいる」

ことをエピソードで語りました。

そして

「キャリア・マネジメント」

として、59歳になった彼は

「人生の質を決めるのは
いかに気品を保って自分の人生をいきるか
そして以下に人々と関係を築くかである」

と信じ、それに基づいて
自らの行動をマネジメントしていきます。

彼の顧客、従業員と温かい関係を築き、
他者の幸福に気を配ります。

彼の性格的な持ち味である競争的で
負けず嫌い、一番を目指す性格も、
高校から変わっていませんが、
「誰より頑張る」という徳性として機能しているようでした。

そして、それらは
高校時代から何も変わっていないようでした。

■、、、というように
エピソードが語られていきます。

そして、これらのエピソードを
「サビカスのキャリア構成理論」を元に、
後半では紐解いていきます

たとえば

『自己構成プロセス』

としてロバート自身が、
自分が望む自己を構成するに当たって、

・「養育」の影響

(両親の養育的でありながら
適度に支配力を発揮した)

・「気質」の影響

(社会規範や文化的価値を受け入れる、
目標思考で生産的で、野心を持つ、
「アルファ型」の気質が見える)

ことが
「愛着(アクター)」の影響として
語られます。



そして自らを「調整(エージェント)」するに当たって

・母親の昇進戦略と父親の予防戦略の
双方の影響

(自己成長と、リスクに対する予防という
ハイブリットな調整力を身につける)

・自分で決めた目標を実現させる
適応レディネスの獲得

などの戦略を、彼が生まれ育った環境から
獲得していったことを紐解きます。



そして、これらの物語を
「自ら著述する(オーサー)」にあたって

・目標設定の調整力を持つ、
・自分の力で変化や選択に対応する、
・前もって計画を立てるなどのアイデンティティの獲得

を得ていった、、、

と紐解いていきます。

■一人の人の物語を、

・社会的アクター(愛着)
・動機づけされたエージェント(調整)
・自伝著者としてのオーサー(著述)

というキャリア構成理論の視点から
どのように見えるのかを分析するのが
実に面白いところです。

これは社会構成主義に立脚した考えであるため
解釈に影響を受けるものの、

”「道を拓く人」としてのロバートは、
作られるべくして作られた”

とも見えるところが興味深いところです。

誰しものキャリアもアイデンティティも、
その人だけ、で作られるわけではありません。

■そして、このお話は

「第4~6章」にて
別の人物の「物語」として描かれていきます。

(以下再掲)

◯ケース1,道を拓く人(Pathmaker)_ロバート

:安定した愛着と外交的な性格で、
自己実現に向かうニーズに焦点を当てた

◯ケース2,守る人(Guardian)_ウィリアム

:人間関係に内向的なので慣習を受容する傾向。
安全・安心ニーズに焦点をあてた

◯ケース3,道を探す人(Searcher)_ポール

:外交的で規範に懐疑的になる傾向があるため、
昇進すること、冒険することに焦点を当てた

◯ケース4,漂う人(Differ)_フレッド

:人間関係と規範に対する恐怖、内向的で規範を受け入れる志向により
やる気を失い意気消沈した状態であり、動機や適応性が欠如した

、、、ということで、

また後日、続きの物語も
ご紹介してまいりたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

僕らはみんな幼少期の産物なんだ。

マイケル・ジャクソン
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