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3540号 2023年11月3日

「強みがもたらす17の機能」とは? ー14日間の日記を分析した論文ー

(本日のお話 3965字/読了時間4分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は研修の企画、社内の事務作業、
また研修動画の撮影(撮り直し)でした。

自分で話をしているのを聞くと、
滑舌、言葉の選び方、雰囲気など
普段見えていないものが見えてきて、大いに気づきがあります。

「自分はボキャブラリーが圧倒的に足りない」
というのが一番の感想でしたので
(何度も同じことをいってる(汗))

言葉で表現できる幅を、
少しずつ拡げていきたいと思います。



さて、本日のお話です。

今日も引き続き「強み」に関する論文を
ご紹介させていただきます。

本日ご紹介の論文は、

”強みがもたらす「機能(function)」”

に注目したものです。

ということで、
早速どのような内容か見てまいりたいと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは

【「強みがもたらす17の機能」とは? ー14日間の日記を分析した論文ー】

それでは、どうぞ。

■「強みがもたらす”機能”」とは?

言い換えるならば、
「強みとは”何に役立つ”」のか?

幸福感が高まる?
自己効力感が高まる?

どれも正解です。

これまでの研究で
「強みの活用」は幸福感、ポジティブ感情、自己効力感などの指標に
影響を与えることは、明らかにされています。

しかし

「”どんな強み”が、
”どのような機能”を果たしているのか?」

という、より細かい部分には
探求がされていなかったようす。

■、、、ということで
今回ご紹介の論文、

『性格特性的強みは何に役立つか?:強みの発揮に関する日々の日記の研究』

原題:Gander, Fabian, Lisa Wagner, Lukas Amann, and Willibald Ruch.(2022).
”What Are Character Strengths Good for? A Daily Diary Study on Character Strengths Enactment.”
The Journal of Positive Psychology 17 (5): 718–28.

では、まさに上記の

”どんな強みが、どんな機能を果たしているのか?”

に切り込んでいます。

■ざっくり内容を説明するのであれば、
こんなお話です。

”VIAで語られている
人間的美徳を表した24の性格的強みと、
定性調査で特定した「強みがもたらす機能」を統合して
2週間の日記調査を行うことにより
どの「性格特性的強み(VIA)」が
強みがもたらす「どんな機能」に影響するのか?を研究した”

という内容です。

■うーん、どういうことだ?

という声が聞こえてきそうなので
もう少し全体像を見るために、
本論文の概要を以下、まとめてみます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【論文まとめ:『性格特性的強みは何に役立つか?:強みの発揮に関する日々の日記の研究』】

<研究の目的>
・性格特性的強みは「良い人生」に貢献すると期待される。

・しかし、それは同時に「特定の目的」を果たすこともある。
(例えば、「好奇心の強み」は、知識の獲得と活用をサポートする、など)

・本研究では、性格特性的強みがもたらす”潜在的な機能”について、
個人内の観点から検討することを目的とした

**

<研究の要約>

1)「強みがもたらす機能」を決定するために文献調査と、質的調査、量的調査を行った
結果として、「強みがもたらす17の機能」が得られた。
(例:「自由で自立していると感じる」)

2)次に、196名の参加者を対象に「14日間連続の日記調査」を実施した。

「性格特性的強みの発揮」と、
「強みがもたらす機能の経験」を報告させた

3)その結果、「性格特性的強みの発揮」は
いくつかの「強みがもたらす機能の経験」と正の相関があることがわかった

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのことです。

■なるほど。

キーワードはやはり
「強みがもたらす機能」です。

”機能=何に役立つのか?”

ですが、これまた、
言うは易く行うは難しで

この「機能」なる抽象的な言葉を
どのような言葉を使って、どのように表現するかが、
なかなか手強そうなところです。

そこで本研究では
その「強みがもたらす機能」を特定するプロセスとして

1)「強みがもたらす機能」を決定するために
文献調査と、質的調査、量的調査を行った

のでした。

■では、具体的にどんな調査を行ったかと言うと、
以下の流れとなります。



・参加者63名にVIAの24の強みを説明し、
自分自身の中で顕著だと思う5つの強みについて
以下3つの質問に答えてもらった。

{強みの機能を特定する質問}
Q、その性格特性的強みを何に使いますか?
Q、この性格の強さによって可能になること、あるいは容易になることは何ですか?
Q、あなたの生活の中で、この性格特性的強みを、具体的にどのように活かしているか、具体的な例や状況を挙げてください。

・これらの回答から集まった定性データについて、
研究者3名で分析し「強みがもたらす機能」を概念的に類似したものを集約し、
統合する反復アプローチを行っていった。



とのこと。

■そしてその結果、以下
「強みがもたらす17の機能」が得られました。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<「強みがもたらす17の機能」>

・知恵(Wisdom):今日、私は既存の知識を適用したり、新しい知識を得たりしました。
・勇気(Courage):今日、私は内部や外部の抵抗を意志の力で乗り越え、目標を達成しました。
・人間性(Humanity):今日、私は他者との交流を通じて共感や慈しみを示しました。
・正義(Justice):今日、私はコミュニティの福祉に貢献しました。
・節度(Temperance):今日、私は過度な行動を抑制しました。
・超越(Transcendence):今日、私は何か大きなものや意味深いものにつながって感じました。
・意味(Meaning):今日、私はより高い目的のために自分の潜在能力を使いました。
・エンゲージメント(Engagement):今日、私は活動に夢中になり、完全に没頭しました。
・喜び(Pleasure):今日、私は楽しみ、幸福、または喜びを感じました。
・健康(Health):今日、私は元気で健康だと感じました。
・楽観(Optimism):今日、私はこれからのことに楽観的でポジティブだと感じました。
・達成(Accomplishment):今日、私は個人的に何かを進歩させることができました。
・習得(Mastery):今日、私は日常の課題に対処するための手段を見つけました。
・ポジティブ思考(Positive Thinking):今日、私は自分自身、他者、または世界に対するポジティブな視点を影響させました。
・独立(Independence):今日、私は自由で独立していると感じました。
・理解(Understanding):今日、私は自分自身、他者、そして世界を理解することができました。
・自己効力感(Self-Efficacy):今日、私は自分の行動で違いをもたらすことができたと感じました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

とのこと。

VIAの内容とも重複するところがありますが、
数も内容も少しずつ違っているところがポイントです。

■次に、これらの結果を元に、

2)196名の参加者を対象に「14日間連続の日記調査」を実施

したのでした。

内容は、参加者に対して毎日アンケートを送ります。
参加者は、

・「性格特性的強み」と「強みがもたらす機能の経験」について
ランダムに設問がされていき、それに答えていく

事を行っていきました。

そして、
個人内で両者(「強みの実施」と「強みのもたらす機能の経験」)の相関が
どれくらいあるか?を調査するということを行いました。

■それらの結果、

「性格特性的強み(VIA)」の各項目と「強みがもたらす機能」には、
相関が見られることがわかりました。

以下が、特に相関が高かった項目となります。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<「性格特性的強み(VIA)」の各項目と、「強みがもたらす機能」の相関が高かったもの>

{知恵と知識の美徳}
・創造性(Creativity):熱中、喜び、達成、習得
・好奇心(Curiosity):知恵、熱中、楽観
・知的柔軟性(Judgement):知恵、理解、自己効力感
・向学心(Love of Learning):知恵、達成、熱中、理解、自己効力感、人間性
・大局観(Perspective):勇気、ポジティブ思考、達成、自己効力感

{勇気の美徳}
・勇敢さ(Bravery):勇気、ポジティブ思考
・忍耐力(Perseverance):達成、勇気、知恵、熱中
・誠実さ(Honesty):人間性、理解、自己効力感
・熱意(Zest):健康、熱中、喜び、楽観

{人間性の美徳}
・愛情(Love):人間性、喜び、楽観
・親切心(Kindness):人間性、喜び、理解
・社会的知性(Social Intelligence):人間性、喜び、理解

{正義の美徳}
・チームワーク(Teamwork):正義、人間性、理解
・公平さ(Fairness):正義、人間性、理解
・リーダーシップ(Leadership):正義、自己効力感、意味

{節度の美徳}
・寛容さ(Forgiveness):正義、理解、自己効力感
・慎み深さ(Humility):正義、人間性、ポジティブ思考、自己効力感
・思慮深さ(Prudence):節度、ポジティブ思考
・自律心(Self-Regulation):勇気、達成、知恵

{超越性の美徳}
・審美眼(Appreciation of Beauty & Excellence):喜び、独立、楽観
・感謝(Gratitude):喜び、人間性、楽観
・希望(Hope):楽観、喜び、習得
・ユーモア(Humor):喜び、独立、楽観
・スピリチュアリティ(Spirituality):超越、熱中、自己効力感

(※論文には相関係数が記載されています)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■ふむふむ、なるほど。

「性格特性強み」と「強みがもたらす機能」は、

そもそも似た表現になるところもあります。

ゆえに、
トートロジー(同じことの繰り返し)の
ようにも見えなくはありません。

しかし、本調査で「強みがもたらす機能」を、
「性格特性的強み」と分類をして考えて、
そして両者の相関を見ていったというアプローチは

”「自己効力感」「ポジティブ思考」「達成」など
それぞれ質の違う成果を得るためには、
特にどの性格特性的強みを発現させると効果的なのか?”

を考察するヒントにもなりそうです。

■論文をまとめつつ、

定性アプローチの内容をまとめているため
英語と日本語の言葉の壁も感じた論文でもありましたが、
(DeepLでもよくわからん)

興味深く、学びになるアプローチでした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

自分は自分である。何億の人間がいても自分は自分である。
そこに自分の自信があり、誇りがある。

松下幸之助
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