強みとジョブ・クラフティングとの関連を調べました ―中国の看護師を対象とした研究ー
（本日のお話 2396字／読了時間3分）
■おはようございます。紀藤です。
昨日金曜日は、昼まで子供と公園へ。
昼過ぎから、
久しぶりのトレイルランニングへの参加のため、大阪に移動。
大阪～奈良～和歌山へと
合計3県、５つの山にわたって33km走るコース。
関西方面では有名なコースとのことで
とても楽しみです。
＊
さて、本日のお話です。
今日も「強み」に関する
論文のご紹介をさせていただきます。
内容は
”中国の病院における
看護師を対象とした強みの研究”
でございます。
個人的にも
「強み」に関して中国の研究を読むのは初めてというのもあり、
楽しみでもあります。
ということで、早速まいりましょう！
タイトルは、
【強みとジョブ・クラフティングとの関連を調べました ―中国の看護師を対象とした研究ー】
それでは、どうぞ。
■今回の論文の舞台は
中国の三次病院。
（高度な医療を提供する病院。大学病院などに相当します）
４つの病院に勤務する合計1006名の看護師を対象に、
「性格特性的強みと
ジョブ・クラフティングの関連を調べる」
というテーマで研究が行われました。
論文のタイトルは、
『三次病院の看護師における性格的強みとジョブ・クラフティングの関連性：横断的調査』
原題：
Li, Minli, Huimin Sun, and Junhui Zhou.(2023).
"The Association between Character Strengths and Job Crafting among Nurses in Tertiary Hospitals: A Cross-Sectional Survey.” Nursing Open 10 (8): 5720–27.
であります。
■今回のキーワードの一つが
「ジョブ・クラフティング」
なるものです。
ジョブ・クラフティングとは、
”仕事の設計を変え、仕事の感覚を深めることで、
従業員が仕事の目的を再構築し、
職場で異なる経験を得る事を可能にし（Dvorak, 2014)、
個人が仕事の意味を変化させ、職業アイデンティティを変化させることを支援する”
と説明されます。
具体的には、
１）タスク・クラフティング（仕事そのものを創意工夫する）
２）関係的クラフティング（人との関係を築く）
３）認知的クラフティング（仕事の捉え方を変え、意味や意義を見出す）
という３つの領域で個人が工夫をすることです。
※参考バックナンバー：
『「ジョブ・クラフティング」の３つの次元』
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/10545/
■このジョブ・クラフティングの主な目的は、
”パーソン・ジョブ・フィット
（＝機能個人と職務の適合度合い）を高めること”
（Wrzensniewski ea al)
であり、その結果の職務上の成果として
・心理的ウェルビーイング
・ワークエンゲージメント
・ワークパフォマンス
にプラスの影響を及ぼすことを
示しています（Bakker, 2018)。
＊
また、看護師の仕事にも
大きな影響があるとされる
・バーンアウト
・心理的ストレス
・感情的疲労
などに効果的な影響を与える（Rudolph ea al)
こともわかっており、
今回の論文の対象者を考えたときにも、
重要な概念であることが推察されます。
■そのような
”ジョブ・クラフティングと、
性格特性的強みがどのように関連しているのか”
について調べた研究、実に気になるところ。
さて、どのような内容なのでしょうか？
以下ポイントを、まとめてみたいと思います。
（ここから）
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【論文まとめ「三次病院の看護師における性格的強みとジョブ・クラフティングの関連性：横断的調査」】
＜研究の背景＞
・看護師は医療システムの屋台骨であり、
感情的労働を伴う仕事であり、
仕事のストレス、バーンアウト、不安などに対して脆弱である仕事とされる。
・看護師に対して、ジョブ・クラフティングと
パーソン・ジョブ・フィットを高める効果的な介入を開発することが必要である。
・また、性格特性的な強みが高い人は、
対人関係が良好で、チームワークにおいてより重要な役割を果たすとされる。
・一方、ジョブ・クラフティングと性格特性的強みの間の相関関係は、
中国人看護師を対象とした調査では、ほとんど研究されていない。
・上記理由から、本研究ではそれらを探索することした。
＜研究の進め方＞
◯対象者：1006名の看護師
（中国の武漢・南昌にある４つの三次病院に勤務）
◯方法：大規模サンプリングによるアンケート調査
◯測定項目：
１，社会人口統計学的変数（年齢、性別、配偶者有無、学歴、役職、勤続年数）
２，ジョブ・クラフティング尺度（21項目）
２，性格特性的強み（15項目）
※性格特性的強みは、中国の文化的背景で実施したDuan＆Bu(2017)の研究にもとづいて、
「思いやり（Caring）」、「好奇心（Inquisitiveness）」、「自制心（Self-control)」の
の３つの下位尺度を採用した。
◯データ分析方法
・性格特性的強みとジョブ・クラフティングの関係を定量化するため
構造方程式モデリング（SEM)を利用した
＜研究の結果＞
◯ジョブ・クラフティングについて
・ジョブ・クラフティングの総合得点は中間レベル（平均3.27）であった。 ※1～5点で測定
・関係性（3.58)→認知性(3.50)→タスク(3.19)のクラフティングの順に高かった
◯性格特性的強みについて
・性格特性的強みの総合得点は中間レベル（平均3.33）であった。
・思いやり（3.85）→自制心（3.07)→好奇心（3.05）の順で高かった
◯ジョブ・クラフティングと性格特性的強みの関連
・ジョブ・クラフティングが性格特性的強みは
合計スコアと下位尺度全てにおいて、正の相関があった
・構造方程式モデリングによれば、
性格特性的強みは、ジョブ・クラフティングの分散の81％に寄与していた。
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（ここまで）
とのことでした。
■本論文の考察では、
”ジョブ・クラフティングと
性格特性的強みは正の相関がある。
よって、ジョブ・クラフティングを高める上で
性格特性的強みを高める介入が必要ではないか”
としています。
■言われてみれば、
思いやり、好奇心、自制心などが高いほうが、
ジョブ・クラフティングにも影響があるだろうことは、
なんとなく想像はできます。
ただ、このように明確に数字として関連を示されると
その必要性も明確になります。
・看護師の課題は心理的ストレスやバーンアウトなど
↓
・ジョブ・クラフティングは有用な概念の一つ
↓
・性格特性的強みがその分散を説明している（81％）
↓
・性格特性的強みを考慮した介入も検討が必要かもしれない
こうしたシンプルなロジックが
勉強になった論文でもありました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい１日となりますように。
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＜本日の名言＞
たとえあなたが何をしていようとも、
それをしている自分を愛せ
タデウス・ゴラス
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