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3521号 2023年10月15日

今週の一冊 『血の轍』

(本日のお話 3253字/読了時間2分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日土曜日は、宮崎にて
祖父の49日の法要でした。

その他、13kmのランニング。
大淀川という大きな川が宮崎には流れているのですが
その川沿いが良い感じで、気持ちよく走れました。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。

今週の一冊は

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『血の轍』(全17巻)

押見修造 (著)


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です。

■「血の轍、寝る前読んだんだけど、
重くて、眠れなかった・・・」

妻が、この作品の新刊が出るたびに
翌朝毎回口にしていたのが印象残っています。

今週ご紹介させていただく
本作品は、ビックコミックスペリオールで
連載されていた漫画です。

少し前に17巻をもって完結しました。

■その内容は、

表面的な物語としては

「いわゆる毒親とその息子のお話」

です。

しかしその実、読み進める中で
本作品が本当に描いているものは

「主人公である息子の
生涯に亘る内省の物語」

である事に気づきます。

■エピソードとしては、
かなり衝撃的です。

冒頭は美しい母、
そして平和な家庭(のように見える)
何気ない日常から始まる物語。

しかし、ある事件が起こることから
急激に物語は展開し始めます。

ネタバレになってしまうので詳しく語れないのですが、
ざっくり物語の概要をお伝えすると

・母の異常性が明らかになり、
やや狂気じみたストーリーの展開になる

・主人公の息子の中にある
”母に受け入れてもらいたい”という気持ちが
生々しく描かれていく

・母に受け入れてもらうことが
自らのアイデンティティの大部分になっていること。
そして、その葛藤が描かれる

・幼少期、思春期の母子関係の課題を
主人公の息子が向き合い、目を背けて
そして統合していこうとする

という物語です。

■作品をネットで調べると
関連検索ワードで

「おそろしい」
「こわい」

と出てくるのですが、
それは一貫して、

”なまなましい心理描写”

があるからだと思います。

読者の慮るわけでもなく、
内面に渦巻く強烈な苦しみや恐れや混乱などを

作者の画力を伴った絵と、
そして力のある言葉にするから、

リアリティが伴ったエンタメとなり、
目を背けられなくなる、、、

そんな感覚を持ちました。

■この本の著者が、
その作品について説明している
インタビュー記事がありましたが、

こんなことが書かれていました。

以下、引用です。

***

――『血の轍』の構想を得たきっかけは何ですか?

僕の漫画は、ファンタジーも含め、すべて私小説のような味わいがあります。
特に前作『惡の華』(講談社)は、僕の思春期の苦しみや孤独をもとにした自伝のような存在です。
『惡の華』で自分の描きたい内面世界はすべて出し尽くしたつもりでした。

ただその後、自分のテーマの一つである親子関係が
まだ描き切れていないという思いが湧いてきたんです。

思春期は母との関係にも悩んでいて。ぜんぶ出す覚悟で始めたのが『血の轍』です。

静一は僕の思春期がかなり投影された人物なんですよ。

――描くにあたって影響を受けた漫画家さんや作品は?

思春期の煮詰まった自意識は安達哲さんの『さくらの唄』、
内省の部分は、つげ義春さんの作品の影響を受けています。

自然と自分のことを考えさせられたり、
忘れたことを思い出させてくれたりするエンターテインメント作品が好きなんです。

だから自分が漫画を制作するときも、
まだ世の中にないテーマの内省できる作品を描いて、
まず自分自身がそれを読みたいって思うことが多いです。

※好書好日 「血の轍」押見修造さんインタビュー 思春期の母子関係の悩み、ぜんぶ出す覚悟で

***

とのこと。

「作者のあとがき」も
かなりインパクトがあるのですが、

この迫力は、
著者自身の悩み、苦しみや孤独を
ぶつけて描かれているのだな、と合点がいきました。

■少し前に、サビカスの

『キャリア構成理論』

という本で、

幼少期、思春期に母子関係で
適切な愛着が得られず、

自ら主体的に人生を選ぶことが難しく
内面の葛藤と不安を抱えながら

「漂う人」

というキャリアになった
事例がありました。

本作品『血の轍』を読んで
私の中ではつながるものを感じました。

「キャリア=轍」とも言います。

キャリアには生まれも影響します。

「生まれ=血」

ゆえに、この作品は

”生まれや育ちの中で
母子関係に注目して描いたキャリアの作品”

と考えることもできなくもない、
とも思えます。

■色々真面目に書きましたが

「究極の内省エンタメ」

とあるように、
目が離せなくなる作品です。

人によっては、
重たく感じる方もいると思うので
その辺りはご留意くださいませ。

以下、作品の紹介です。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」など、
傑作を次々と世に送り出してきた鬼才・押見修造氏が、ついに辿り着いたテーマ「毒親」!

母・静子からたっぷりの愛情を注がれ、
平穏な日常を送る中学二年生の長部静一。

しかし、ある夏の日、その穏やかな家庭は激変する。
母・静子によって。狂瀾の奈落へと!

読む者の目を釘付けにせずにはおけない、渾身の最新作。

※Amazon本の紹介より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

たいへん、面白い作品でした。

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<今週の一冊>

『血の轍』(全17巻)

押見修造 (著)


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